103.いろいろ飛ばしたっぽい

「あー、この集落にセルキー以外のヒトはいるか?」


光る羽根を片手に持ったまま、セルキー達に尋ねる。彼等も光る羽根に興味津々だ。


「はぇぇ、確か集落のハズレに住んどるのぇ」

「ずっと小屋に閉じ籠もってるっぺな」

「ときどき、ドカーンって音がしてるだよ」

「お姉ちゃんの病気を治したいって言ってたっちゃね」


これは…見つけてしまったっぽいな?


「これからメシ届けに行くから一緒に行くっぺよ」


うぺぺなセルキーのペペヨンは世話好きで、彼へ毎日食事を届けているらしい。


「時々外へ出かけては荷物を抱えてくるっぺよ。2〜3日空ける事があるけど、今日は居るはずっぺよ」


おぉ、そうなのか。こういうクエストってもっと時間かけて探すものだと思ってたけど…こんな簡単で良いのだろうか?


「おぉ〜い!メシ持ってきたっぺよ〜」


森…というか、ジャングルの中を進んだ先にある一軒の小屋。他の家は簡易的な造りだったのにここはちゃんとした木の小屋だ。


小屋のドアをドンドンと叩きながら、ペペヨンが声を掛けると、中から人の気配がした。


「あぁ、いつもすまないな…」


ドアを開けたのはくすんだ金髪にヨレヨレの白衣姿の男性だった。ヒゲもボーボーで顔はよくわからない。疲れているのか、ボンヤリした様子でペペヨンから食事を受け取った男は、ようやく、後ろにいる俺に気付いたようだった。


「…アンタは…まさか」


相変わらず顔は見えないが、驚いているのがわかった。


「こんヒトは、ウチの若いのを海神様の神殿で助けてくだすったシオンっぺよ」

「はじめまして、冒険者のシオンです」

「冒険者…?しかしアンタは…」


戸惑ったように俺のことを見つめる彼。


「アンタは…ハイエルフだろう…?」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「…それで、オレに何か用なのか?」


俺の種族に驚いていた彼だったが、ペペヨンの「立ち話もウペペだし、中でお茶でも飲みながら話すと良いっぺよ〜」という一声で、小屋の中へと招き入れてもらった。


見渡せば、様々な薬草が所狭しと干されていて戸棚の中には薬瓶が沢山置いてあった。本や書類が積み上げられていて、随分と熱心に研究をしていたのが伺えた。


「…エリュニエル、だよな?」

「…」


お茶を飲む彼の手が止まる。


「…その名はどこで?」


そう聞かれたので素直に天空の島での話をする。すると―


「なぁ、アンタに頼みがある」


ボサボサの髪から覗く瞳はとても真剣だ。見た目とはそぐわない力強さに息を呑むと、エリュニエルは一冊の革のノートを差し出してきた。


「これがアンタが探してる師匠の手記だ」


えっ、貰っていいのか?


「これを渡す代わりに『世界樹の樹液』を入手してくれないか?」

「世界樹の…それは天空の島の世界樹じゃなくてもいいのか?」

「えっ?…あぁ、世界樹ならばどこに生えてても効能は一緒だと聞くが」


その言葉を聞いてニヤリとする。イベントリからを取り出して机の上においた。


「こ、これは…」


そう。俺が取り出したのは『世界樹の樹液』こんな事もあろうかと、拠点からアクローザへ向かう前にアケイアの森の世界樹から採取させてもらっておいたのだ!ふはははは!!シナリオに勝ったぞー!!

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