98.託された羽根

「エリュニエルを探してほしいの」


ファスニエルの願いは予想通りのものだった。まぁ、元々探す予定だったからな。それに…クエストとは関係なく、ファスニエルの願いを叶えてあげたいって思ったんだ。


「しかし…アテはあるのですか?」


ナサニエルが訪ねる。まぁ、アテもなく彷徨うわけにもいかないしな。


「これをお使いください」


そう言って出してきたのは、1枚の綺麗な羽根だった。


「これは?」

「なるほど、エリュニエルの羽根ですね?」

「えっ」

「私達の羽根はエーテル…天族が持つ魔力で構成されています。羽根ですから抜け落ちる事もあるのですが、その場合はエーテルに還り大気へ溶けます。しかし、翼の持ち主が自ら抜いた羽根は形を保ち続けます。そして、羽根は持ち主の場所を指し示す羅針盤となるのです」


へぇ〜、つまり持っていれば相手の場所が分かるってことなんだな?


「エリュニエルはこの島から出ていってしまったから、私は追いかけられなかったの。…どうかお願い、彼を探して」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「へぇ~、羽根で人探しかぁ」


俺は今、拠点へと戻ってきている。何故かと言うと…


「次のワールドクエストは海の中なんだな」


そう、ワールドクエストのアナウンスがあったのだ。


『海神の巫女が神託をうけた。海中にある魔王の気配の元を絶つべし。さもなくば海の恵は失われ魔物はびこる死の海と化すだろう』


ファスニエルから羽根を受け取り、家を出た所でアナウンスが流れたんだよなぁ。


ナサニエルは国の書庫に手掛かりがないか探してみると言って、連絡用の通信魔道具を手渡して去っていった。俺はとりあえず地上へ戻って羽根の反応を見つつ待機することとなったのだ。


ネクターが一足先にログインしていたのもあって、一旦拠点へ戻り今に至る。


「それにしても天空の島かぁ〜。これはバズりそうな予感!」

「他に動画を出してる人は居ないのか?」

「居ないわね。そもそも、天空の島へ行く為の足が無いのよ。ペガサス便って交通手段があるのは確認されてるんだけど、現在は乗ることが出来ないって言われるらしくて」

「そうなのか。飛べる手段のある人でもダメなのか?」


早期攻略組の中には、飛行能力のある騎獣を手に入れている人も居るらしいので飛んで行けそうなものなんだけどな。


「どうも高度限界があるみたい。隠しクエストや特殊クエストで解放されるのかもしれないわね〜」

「まぁ、ボクのクエストついでに行けるかもしれないしその時はちゃんと誘うから安心してくれ」

「やった!楽しみにしてる!」


ネクターとそんな話をしていると、他のメンバーも続々とログインしてきた。部長は不在だが、たぶん飲み会か何かだろう。


「ワールドクエスト進んだんスね」

「次は海中になるんですね。私達は加護のおかげで海中も問題なく行けますけど…」

「海に潜るためのアイテムが高騰してるにゃー。コツコツと素材集めてたのを売ったらホックホクなのにゃ」

「あら、素材もやっぱり高騰してるの?」

「海方面の解放必須と聞いてから、目ざとい人達は素材を集めに走ってたのにゃ。今後、潜るためのアイテムが配布されるかどうかわからにゃいけど、今が放出のチャンスだと思うのにゃー」

「なるほどなぁ…意外と考えてるんだな」

「意外は余計にゃ!それに、ウチには必要ないから全部売っても問題ないのにゃ」


ふーむ、確かに素材を売りに出すのも良いかもなぁ。まぁ、他でも使えるかもしれないし取っておこうかな。そこまで金策が必要なわけでもないし。


「…いったいどうやって稼いでいるか気になるにゃ」


え?特に何もしてないけどな。

ワールドファーストやらの報奨金があるだけだし…


「なんだか納得いかないにゃ」

「そうね」

「まぁ、シオンさんですし」

「パイセンそーゆートコあるッスから」


えぇ〜、そんな事言われてもなぁ。

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