95.廃墟と手土産
「ここがエリュニエルの住んでいた場所ですね」
ハイエルフの庭師ネステルの手記を探すため、まずはザドキエルさんから見せてもらった記録簿に載っていた、エリュニエルが住んでいた場所を訪れることにした。
「…うわぁ」
目の前にあるのは、手入れのされていない庭と家だった残骸。腰の高さほどの雑草が地面を覆い尽くしていて、蔦で覆われた家も一部が崩れている。何年放置されたらこうなるんだ???
「許可は得ていますから、中へ入ってみましょうか」
前に進むにしても雑草が邪魔だったので、魔法で少しずつ道を作りながら家の方へと進んだ。ドアにはカギがかけられていたが壁が崩れているのでそこから中へ入る。
家の中は持ち主が残したらしい荷物が散乱していた。この中にあると楽なんだけどなぁ…
「植物関連の本が大量に残されていますね。不真面目だったとはいえ、勉強はしっかりしていたんでしょうか?」
うーん、確かに植物に関する本が散らばってるんだよな。一冊手にとって読んでみると、地上の草木について詳しく書かれている本のようだった。…この本欲しいなぁ。
「ここの荷物は持ち出して頂いても大丈夫ですよ。この調査が終わり次第完全に取り壊しますから」
「えっ、そうなのか?」
「主人がいなくなった家をいつまでも放置するわけにもいきませんからね。天の国の法律では空き家になってから一定期間が経てば、取り壊して良いことになっているのですよ。放置しておいても倒壊に巻き込まれたりして危険ですしね」
「へぇ、ちゃんと空き家対策されてるんだなぁ」
そういや田舎のじーちゃん家の周辺でも、倒壊寸前のボロアパートが所有者不明で問題になってたっけ。家の解体って結構なお金が必要だから、いざ所有しても持て余して放置してしまう例が後を絶たないとも聞くし…家を持つのは憧れるけど、後のことを考えると躊躇してしまうな。
「それにしても…」
机の上には使ったままの食器が置かれ、キッチン・寝室・居間のアチコチに生活の跡が残されたままになっている。なんというか…
「夜逃げしたみたいだな」
「あー…」
あまりの酷さにナサニエルも苦笑いだ。
「目ぼしいものは無さそうですね」
「そうだなぁ」
俺としては植物の本は良い戦利品になったが、肝心のエリュニエルの行方やネステルの手記は見つからなかった。さて、どうしたもんか…
「あら、アナタ達ここで何してるの?」
後ろから不意に声が掛かる。振り向くと恰幅の良いおばちゃんが扉から中を覗いていた。
「国による取り壊しが決定したので内部調査をしていたんですよ。それと、ここの住人に聞きたいことがあったので、どこへ行ったか手掛かりがないかと思ったのですが…無駄足だったようですね」
「住人…あぁ!エリュニエルのこと?」
「そうです。彼のことをご存知で?」
「もちろんさ、よーく知ってるよ」
「どこへ行ったか知らないか?」
「そうねぇ、話しても良いけど…」
あっ、嫌なヨカン!!
「これから少し用事があるの。その後に家に来てもらえるかしら?」
よかったー!お使いじゃなかったー!!
「なるほど、お宅へお邪魔させて頂くなら何か手土産がいりますね」
おぃぃぃ!!!ナサニエルぅぅぅぅ!!!
「そうだ、先ほど言っていたお茶とクッキーもついでに買いに行きましょうか。店はここから近いですし、この国でしか手に入らないものもありますよ」
ほぅ?…うん、手土産は大事だ。早速買いに行こうか。
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ここまで読んで頂き、ありがとうございます。
何やかんやと95話まで進みました。火竜の試練とかワールドクエストもあるのですが…天空の島のお使いクエストはいつ終わるんでしょうね?(笑)
この作品が「面白かった」「楽しかった」と感じていただけたら、☆などで評価して頂けると嬉しいです。
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