94.足跡を辿って
エリュニエルの足跡を辿るために、天空の島の住民管理局へとやってきた。ナサニエルが受付へ行くと職員らしき人達が驚いたような顔をして慌てだした。部外者の俺が居るからかな?
「これはナサニエル様。本日は如何様なご要件で…?」
受付の一人が奥へ引っ込んで少し待つと、別の場所から上品な女性が出てきた。着ている服装から察するに、ここの偉い人なんだろうな。通りすがる人達が皆一礼して足早に去っていく。
「急に訪問してすまないね。実は世界樹の管理者を探しているのだ」
「おや…左様でございましたか。して、そちらの御方は?」
「彼はハイエルフのシオン様だよ。シオン様、彼女は住民管理局局長のザドキエル。すべての記録は彼女のもとに集まります」
「あ、こ、こんにちは」
「まぁ…至高の御方が『
パラ…なんて?
「パラディソスとは、天空の島々一帯を治めている国の名です。地上の方にはピルラータ島の方が馴染みがあるようですが…」
なるほど、横浜や名古屋みたいな感じか。都市名は出てくるけど県名があやふやっていうアレ。
「シオン様、お目にかかれて光栄ですわ。世界樹の管理者をお探しでしたわね。すぐに探してまいりますから、こちらの部屋で少々お待ち下さい」
「うん、よろしく頼むよ」
さっきから気になってたんだが、ナサニエルって実は偉い人なのか…?
「いえ、私はそれほどでもありませんよ。ささ、お茶が冷める前にどうぞ。『天空茶』といって国の名産品なんですよ」
「おぉ、いい香りだ…」
口に含むと花のような香りが広がって、少し甘みのあるお茶だ。一緒に出されたクッキーは少し塩味があってコレも美味しかった。どこかで買えないかな?
「茶葉とクッキーは市街地で買えますよ。後でご案内しますね」
「ありがとう。でも場所と店の名前さえ教えてもらえれば自分で行くよ?」
「他にもオススメがありますので、案内させて下さい」
そうか?まぁ、そこまで言われたら案内してもらおうかな。
「えぇ、お任せ下さい」
そう言ってニッコリ微笑むナサニエル。いやぁ…イケメンだなぁ。
「お待たせいたしました。記録簿をお持ちしましたわ」
ザドキエルさんが数冊の本を持って戻ってきた。
「こちらが最後の管理者エリュニエルの記録簿と、こちらが前任者ネステル様の記録簿です」
ほぅほぅ。住民票みたいな紙なのかと思ったがしっかり本になってるんだな。しかも分厚いぞ。ネステルの方は…あれ、こっちは薄いな?
「パラディソスでは生まれてからの記録はこの住民管理局にすべて集められます。住居はもちろんですが、家族構成や学歴に性格、趣味嗜好なども記載されますね」
「えっ、そんな細かくどうやって」
「うふふ、それはヒミツですわ」
ニッコリと微笑まれてしまったが…背中がゾクッとしたぞ。
「ネステル様は天族ではありませんので、この島へいらしてからの記録のみとなっております」
「えっ、そうなのか?」
「えぇ。ネステル様は…ハイエルフでした」
なんと!前任者はハイエルフの庭師だったのか…相手が世界樹だからかな?早速記録簿を読ませてもらう。
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氏名:ネステル・アーティ 女性
種族:ハイエルフ
経歴:陽暦587年、世界樹の庭師として来国。以降、王宮ユグドラシル内の庭園に居を構え世界樹の管理者として過ごす。
星暦157年、トファエヌエルの仔エリュニエルを弟子として育成する。
星暦329年星の月、エリュニエルを後継としハイエルフの里へ帰郷する
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
要約するとこんな事が書いてあった。なるほど、世界樹のある場所に住んでいたのか…その住まいを調べたら何か出てこないかな?
「ネステルが住んでた場所は今どうなってるんだ?」
「確か…休憩所として使われていたかと」
「休憩所かぁ…」
「ネステル様が帰郷された時には荷物はすべて片付けられておりました。残されたものはございません。元々、荷物はほとんどお持ちではありませんでしたから」
そうなのかぁ〜。ワンチャン残された荷物に的な展開を期待してたんだが…仕方ないな。
「やはり、エリュニエルを探すしかありませんね」
やっぱりねー!!ボス戦が無い代わりにアチコチと行かされる、「お使いクエスト」ってやつだ。さて、どこへ行かされるやら…
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