83.火竜の試練・海の神殿
「ひゃっほぉぉぉぉ!!!海だぁぁぁぁぁ!」
エリアボスを倒した俺達は、現在アクローザ海国の海洋都市アクアンザへ来ている。
と、言うのもヤスナガからここへ来て欲しいと連絡を貰ったからだ。どうやら海の神殿へ向かう算段がついたらしい。
エリアボス討伐時にヒャッホイし過ぎたせいで、他のメンバーから質問攻めにあってからすぐに拠点へ戻ってしまったからな。やっと海を堪能できてる所なのだ。
「シオンさん!こっちです」
「おー、おつかれー」
待ち合わせたのは海沿いの公園。心地よい潮風が吹き、街の人の憩いの場となっているようだ。親子連れや老夫婦がベンチに座って楽しそうに海を眺める姿を良く見かけた。ネクター達女性陣はロケーション確認とか言って、別行動をしている。カゲと部長は釣りをしに行ってしまった。
ちなみに、屋台もいくつか出ていたので食べ物は確保済み。いやー、海鮮系が充実したぞぉ!
「雪華さん、こんにちは」
「こんにちは、シオンさん。今日はよろしくお願いします」
ヤスナガのお姉さんが丁寧に挨拶をしてくれる。いやー、美人だな。
「あれ、他の皆さんは?」
「あぁ、それぞれ別行動中だ。皆初めて来るからなー」
「なるほど、それじゃ先に海底神殿の場所を確認しに行きましょうか」
「お、場所は見つけたのか?」
「えぇ、一応」
ヤスナガに連れられて行ったのは、街から離れた場所にある海岸沿いの岩場だった。まさか、ここから泳ぐのか?と思ったら岩場を進んだ先に洞窟があるらしい。
「ここなんですけど、どうやらダンジョンになっているようでして」
「ダンジョンかぁ。それって何かクエストを受けていなくても入れるのか?」
「はい、ダンジョン自体は入れるみたいです。この場所を見つけた時に、姉と入れたので」
「そういや、雪華さんはクエストは受けてないのか」
「私は種族が違うので…」
場所の確認を終えたら、一旦解散して準備を整えた後に集合ということになった。ヤスナガ達は先にリアルの用事を済ませに行ったので、ネクター達にも連絡を入れてから海岸をブラブラと歩いてみた。
すると、岩場の間に何かが挟まっているのが見えた。なんだあれ…?
「うーん???アザラシ???」
真っ白で手や尻尾の先にむかって青くグラデーションになっているアザラシのようなものが倒れている。…死んでるのか?
そう思って、そのへんにあった棒でつつくと微かに「キュー」という鳴き声が聞こえた。慌てて持ち上げると、倒れていたのはなんとアザラシのキグルミを着た幼女だった。サイズは90センチくらいだろうか?
思わず拾ってしまったが…このまま放ってはおけないし、とりあえず回復魔法をかけてみた。目に見える怪我は無さそうだが…
グキュルルルルルルル
アザラシ幼女の腹から盛大な音が聞こえてきた。もしかして、空腹で倒れていたのか??とりあえずイベントリから食べ物を出していく。買ったものには反応しなかったんだが、拠点で作ったクッキーを出したとたん、カッと目を見開いてものすごい勢いで食べだした。クッキー以外にもジュースやケーキ、料理類も出していく。
暇なときにコツコツ料理を作っていたんだが、ここで役に立つとは思わなかったな…
アップルパイを食べ終えたアザラシ幼女はようやく満足したらしく、まんまるになったお腹をさすっていた。
「腹いっぱいになったか?痛いところはないか?」
そう話しかけると、目をパチクリとしたあと満面の笑みで片手を挙げた。どうやら大丈夫らしい。
「ところで、こんなところで何してたんだ?」
「うんと、お参りにきたら、お腹空いてヘロヘロになったっちゃ!」
おぅ、話せるんかい。しかも空腹で行き倒れか…何処へお参りしにいくんだ?
「海底神殿っちゃ!アチシらセルキーは海底神殿へお参りするのが習わしっちゃ!」
海底神殿だと?奇遇だな、俺たちも海底神殿へ行くつもりなんだ。海には潜れないから、あそこの岩場から入るんだけどなー
「それなら、アチシと一緒にいくっちゃ!お兄ちゃんもお参りしに行くっちゃ?」
「いや、俺はトモダチが水を出す宝玉取りに行くんでその付き添いだ」
「水を生む宝玉…?『水生石』のことっちゃ?それならアチシがいっぱい持ってるっちゃ。お礼にあげるっちゃ」
「え?いや、火竜の里の試練だから本人が手に入れないとダメなんじゃないかなぁ?」
「しれん?…お兄ちゃん竜人っちゃ?」
「いや、俺はハイエルフ。トモダチが竜人なんだ」
「はぇ〜、そうなんちゃね。竜人のシレンの事なら知ってるっちゃ!アチシが案内してあげるっちゃ!」
「おっ、そうなのか!助かるよ」
「美味しいゴハンのお礼っちゃ!任せるっちゃー!」
そんなわけで、セルキーの案内人をゲットしてしまったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます