78.ギルド長からの呼び出し

ギルド長に呼ばれて、ギルドの応接室に通された俺。

目の前には何故かGMロサリアさんが座っていた。


「ギルド長、シオンさんをお連れしました」

「ありがとう、下がっていいわ」

「はい、失礼します」


受付嬢が部屋から出て、二人きりになった。えーと、これはどういう状況なんだ?


「あの…ロサリアさ」

「ようこそ、冒険者シオン。私が冒険者ギルドのギルド長グランデール・アストリアだ。私の姿は千差万別。明日はこの姿ではないかもしれないし、明後日はこの姿かもしれない。しかし、ギルド長グランデール・アストリアである事に変わりはない。つまり、そういう事だ。いいね?」

「あっ、ハイ」


えーと、ギルド長はGMさん達が交代でやってるって事かな。たぶん。そして、今はギルド長のロールプレイ中なんだな。GMってこんな仕事まであるのかー。大変だなぁー。


「さて、先日は廃城の調査ご苦労だった。君は依頼を受けていなかったようだが、ギルドから報奨が出ているので、後ほど受け取りたまえ」

「あ、ありがとうございます」

「して、君は『魔王の欠片』という黒い石を見なかったかい?」

「えっ」

「廃城には王の居室があるはずなんだが、どうも隠されていてね。ギルドから冒険者を派遣したんだが未だ見つかっていないのだよ」

「へ、へぇ…」

「そして、とある筋から君が所持しているのではないかと情報提供があってね。こうして呼び出させてもらったと言うわけだ」

「…で、持ってるよね?」

「…持ってますね」


ロサリアさんが深い溜め息をついた。


「えーと、シオン君だから話すけど『魔王の欠片』って今回のワールドクエストのキーアイテムなのよ。本来なら冒険者ギルドから出た調査員が持ち帰る品物なんだけど…」

「あー…俺が先に持って帰っちゃったってコトですか」

「あの隠し扉、プレイヤーは探せないはずだったのよ〜。なんで開けちゃうの〜」

「えぇ?!そんな事言われても…」

「うん、ごめん。こちらのミスだわ」

「まぁ、なんであそこに置いてたのか気になるトコロですけど…」


ロサリアさんによれば、ワールドクエストとして廃城をフルオープンにして、宝探しイベントを行う予定だったんだとか。そのお宝がこの『魔王の欠片』で、これは一つしか存在していないそうだ。


「廃城の宝探しイベントは始まってるし、他の宝箱はリポップする設定になってるから良いけど…ちょっと仕様を変えて開催することにするわ」

「なんかスイマセン」

「いえ、良いのよ。ところで、ワールドクエスト受注してないわよね?」

「そういやそうですね。知人のクエストの手伝いもあるし、エリア開放されたら行けばいいやって」

「申し訳ないんだけど、強制参加でお願いします」

「えぇー」

「すでに『魔王の欠片』の所有権はシオン君なのよ。それがないと先に進めないし、新エリア開放出来なくなっちゃうわ!今から仕様変更もできないし…申し訳ないんだけど、こちらで参加にさせてもらったからよろしくね」

「しれっと偽装出来ませんかね?ベッドの下に置きなおすとか」

「常に冒険者が出入りしてるし、人の目が多すぎて難しいわね」


なんてこった。こんな事なら触らずに置いておけばよかった!!そもそも、俺も一般プレイヤーなんですけど?!うっかり巻き込まれるなんて、開発の落ち度じゃないの?!


「ぐっ…それに関してはほんとに申し訳ありません…」

「あっ、いや頭を下げさせたかったわけじゃないんで…すいません」

「シオン君の特殊性は、開発側も全くの想定外で対処が追いつかないのが現状なの。それでも、シオン君が快適に遊べる環境はしっかり作っていくし、ログアウト問題もヘッドセットの開発者と連絡取って何とかすべく動いているから安心しててほしいわ」


うーむ、ヤスナガの問題を先に終わらせたいんだがなぁ…


「あら、火竜の里の試練ね?エリアボスの討伐は次のワールドクエストで必須になるから丁度良かったわ!廃城のイベントはまだ続くし、先に進めて大丈夫よ」


それ丁度いいって表現して良いのかなぁ?!

まぁ、時間の余裕はあるらしいしヤスナガの方を進めるか…

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