69.廃城の秘密と託された願い
キメラ戦の後、出現した宝箱は3つ。一つは茶色くて普通の宝箱で、残りの2つは金色の豪華な宝箱だ。金色の箱はパーティ毎の報酬のようだ。中身は纏めて回収して後でじっくり分配することにした。
「さて、この箱は何が入ってるのかな?」
ムラサキさんが箱を開けると、そこには一冊の本が入っていた。
「『グリナルデの手記』って書いてあるね。ふーむ、どうやらこの城の宰相の日記みたいだよ」
「日記?なんでそんなモノが箱から…」
「そうだなぁ。おそらく城の秘密とか、攻略のヒントになるようなモノが書かれてるはずさ。とりあえず読んでみようか」
『◯の月◯日。城に旅の呪い師がやってきた。嫌な目つきの呪い師だったが、面白がった王が謁見を許してしまった。呪い師は、王の好みそうな話をし、王は喜んで滞在まで許した。このまま何事も無ければ良いのだが。
◯の月◯日。呪い師が滞在するようになってからしばらく経った。王が呪い師を自身の専属呪い師にすると言い出した。周りの者は反対したが、王命とあれば従わないわけにはいかなかった。呪い師の嫌な笑いが耳に残る。
◯の月◯日。王が呪い師から怪しい宝玉を献上された。その日から王は宝玉を片時も手放せなくなった。「真なる王の宝玉」と呼ばれたその石は、私の目には禍々しい輝きを放つように見えた。
◯の月◯日。王は呪い師の用意した兵団を率いて近隣の小国を滅ぼしはじめた。我らの声は届かず、呪い師だけをそばに置くようになってしまった。我々が出来る事は、民の安全を守ることだけだった。
◯の月◯日。しばらく姿を見せなかった王が久し振りに我らの前へ姿を表した。しかし、その姿はすっかり様変わりしていて、ふくよかで優しげだった王の面影はなく、痩せ細った身体はおよそ正常には見えなかった。目玉だけが異様ににギョロギョロとしていた。
◯の月◯日。呪い師が本性を表した。リッチと呼ばれる魔物だったのだ!奴は城の地下におぞましい実験場を作り、攫ってきた人や魔物を掛け合わせて不気味な生物を作り出していた。もはや一刻の猶予もない。人を攫いに出掛けた隙をついて我らは近くの村に奴を封じ込めることに成功した。力を手に入れなければならぬ。悪を討ち滅ぼす正義の力を。
◯の月◯日。呪い師を失った王はもはや正気では無かった。城の者たちを次々と手にかけ、もはや異形の存在となってしまった。おそらく、呪い師の手によって魔物と化したのだろう。しかし、我々には王を討つことは叶わない。故に、残った者全ての命と引き換えに王を封印することにした。
いつの日か、哀れな王を滅ぼす者が現れることを願って…』
なるほどなぁ。あの廃村にいたリッチが呪い師だったんだのか。そして、ここにいたキメラはあのリッチによる実験動物というわけだ。アレの正体が攫われた人達ってのは、気分の良いものではないな。
とにかく、手記によればこの城のボスは王様のようだし、目指す場所は決まったな。
目指すは王の間。倒す敵は王様だ!
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