68.手段は選んでいられません
キメラから檻の中の生物を守りつつ戦う。
これが意外と難しい。というのも、キメラの攻撃が檻に当たると、檻が壊れてしまう。そうすると、中の生物が飛び出して守りきれなくなるのだ。
現在、キメラの腕は全部揃った状態になっている。…そう、檻が壊れて更に一匹食われましたとも!いやー、まいったね。
「いやー、なかなか嫌な敵だね!」
「一撃は強くないけど、耐久と防御がすごく高いのよね…こっちのゲージも溜まりにくいし、やりづらい!!」
「いやー、何叩き込んでも決定打にならないな」
「回復には余裕あるけど、これは精神的に消耗してまうわー」
「分厚いゴム殴ってるみたいにゃー」
「あと、顔がすごいキモい」
「「「「それなー」」」」
なかなか攻めあぐねているようだなぁ。
とりあえず、あの檻を何とかしてしまおうか。檻の中の生物に睡眠魔法をかけてから、檻自体に隠匿魔法をかける。これで敵からは認識できなくなったので自由に動きやすくなるだろう。
次に、檻自体をコチラへ引き寄せてみる。自分の足元から蔦を伸ばして、檻の一つに向かわせる。蔦で檻を覆ったら一気にこっちまで引っ張ってみる。…よし、成功。
すべての檻を引き寄せてから、もう一度鎌鼬の矢をつがえる。風魔法が使えれば良いんだろうがここは屋内。四方を壁に囲まれた場所では風魔法の威力が半減してしまうのだ。んもぉぉ、開発陣のこだわりぃぃぃ!!!!
そして、おそらくアイツの弱点属性は風なんだよなぁ。
魔法として風を起こすと威力は落ちるが、武器や防具に付与された属性効果は環境に左右されない。ちなみに、他の属性も威力の落ちたり魔法自体が無効になる場所というものが存在している。
俺がワザワザ矢に魔法を付与しているのは、この辺の事情もあっての事だ。作ってるうちに楽しくなっちゃって、あれもこれもと付与しまくってるんじゃないぞ?ほんとだぞ?
さて、まずはあの腕をなんとかしてしまいたい。鎌鼬の矢をつがえて一気に放つと、矢はそれぞれの腕に着弾した。…が。
「うわっ、防御力上がってる?!」
先程は一撃で切り落とせたのだが、今回は傷を負わせただけになってしまった。慌てて次の矢を放つ。傷はそれほど深くは無いがもう何発か当てれば切れそうだった。
しかし、ここで尻尾の蛇が怪しい動きをし始める。やたらと動いたかと思うと、目を光らせてコチラを見据えたのだ。尻尾の蛇は全部で三匹。本体と顔たちはネクターの方を向いているが…
カッッ
蛇の目から光線が放たれる。慌てて避けたが服の一部に掠ってしまった。みれば掠ったところが石化している。
やべー、石化光線だすのかよ!慌ててドワーフの里で買っていた抗石化薬を飲む。
「部長!あの蛇狙える?」
「おー、とりあえず目を潰せば良いか?」
「それでヨロシク!」
部長に蛇の対処を頼んで、腕の切り落としを再開する。うげ、なんかちょっと再生してない?これは時間空けると元通りになるやつだな。一本ずつ確実にやっていくか。
方針を変えて、複数の矢を一箇所に撃ち込む事にした。その作戦が良かったのか、一本腕を切り落とすことが出来た。続いて二本目、三本目も切り落としていくと、本体の動きが徐々に悪くなっていった。
「いいね!だいぶ動きが悪くなってるよ!」
「ムラサキさん!そこから尻尾の蛇狙えますか?!」
「わかった!こっちは任せてくれ!」
「とりあえず、目は潰せたぞ!再生に気をつけてくれ!」
「石化したら治せます!安心して下さい!」
ムラサキさんが雷撃を纏わせた剣で蛇を斬りつける。腕がなくなった分余裕が出たのか、バナナとルドガーも蛇の方に回ったようだ。首を一つ切り落して、二匹目に取り掛かっている。
「そろそろ大技いけるわよ!」
「オッケー!それじゃ、こっちも仕掛けるよ!」
サクラとコノハがそれぞれ強化魔法をかけていく。二人が使ったのは効果時間が短く何度も使うと効力が落ちるが、ココぞという時に使えば効果が絶大というモノらしい。以前見かけた時に教えてもらったのだ。
ネクターの持つ大斧が鬼の金棒型に変化していく。渾身の大技が発動する合図だ。
「いっくわよーー!!!!『
名前はさておき、ネクターが全力で金棒を叩き込むとキメラは真っ黒な霧になって霧散した。いやー、強敵だったな!
キメラのいた場所には宝箱が3つ出現していた。
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