67.キメラ戦と囚われた魂

『グルォアアアアア!!!!』


キメラから生える複数の人間の腕から、火の玉が投げられる。サクラが素早く防壁を張って回避する。玉の一つはそこまでの威力ではないが、次から次へと繰り出されるとこちらは防戦一方になってしまうな。


「さて、どうしようか?」

「ワタシが正面で受けて、左右から挟撃かな?」

「ネクターさん一人じゃ危ないだろ。俺も正面に立つから交代で受けよう」

「ほな、ウチはルドガーの回復メインやね。敵への弱体魔法デバフはムラサキちゃんに任せるわ」

「まずは正面まで行かないとだけど…」

「それなら、俺とシオンで止められるだろ」

「んー、まぁ配置につくまでの時間なら稼げるかな?」

「よし、シオン君達に任せた。それじゃ強化かけていきましょうか」


サクラは防壁を張っているので、代わりに強化魔法をかけていく。防御上げて、耐火も付けて、素早さと攻撃力アップもつけとくかー。ちなみに、今日はシルバとナヴィは留守番組だ。ムラサキさん達が居るからね。


準備が整ったら、いよいよ作戦決行だ。

まずは、俺と部長で火の玉を出される前にすべての腕に攻撃を当てていく。魔力を錬るタイミングに合わせて攻撃を当てると魔法がキャンセルすることができるのだが、タイミングはシビアだ。なので、大半の人は使わない手でもある。的が動かないからタイミングさえ合わせられれば…


「よっし!今のうちだ!」

「ナイス!!」

「えっ、全部キャンセルさせた…?」

「ちょっと、あの人等ほんとに攻略組じゃないの?ナニカの間違いじゃない?」

「いいね!ウチにスカウトしたいよ!」


ふふーん、ウチの狙撃手は良い腕だろう?だがスカウトはお断りだぞ!


魔法をキャンセルした隙に、配置へつく。

ネクターが『咆哮』でヘイトを稼ぎ、他のメンバーが左右から攻撃をしていく。


キメラも負けじと、両側の腕を振って近付けさせまいとしているな。うーん、顔が何個かあるから、もしかしたら左右で別の命令系統なのかもしれない。


「部長、暗闇付与の弾あるんであの横についてる顔に当ててもらえる?」

「おー、まかせとけ!」


イベントリに入ってた試作品の「暗闇弾」を部長に渡す。上手く使えたらラッキーなんだが…はてさて。


シュパッ


お、そのライフル消音機能サイレンサー付きなんだな?うん、いい感じで暗闇が付与されてるぞ。当たった敵の目元が黒いモヤで覆われている。狙い通り、視界を奪ったことで左右の腕の動きが悪くなっていた。


弓をつがえて狙いを定める。腕の付け根に向けて矢を射った。矢には風の魔法を付与していてカマイタチの効果がある。傷が付けば良いかなーと思ってたんだが、スッパリと腕が根本から切り離された。


「うぉー、めっちゃ切れたぁぁ」


味方には当たらないが、心臓に悪いなコレ。落ちた腕はモゾモゾと動いたあと黒い煙となって消えた。よかった、そのまま動くタイプじゃなくて!


「シオン君!今の感じで腕狙えるかい?」

「やってみますー」


ムラサキさんがレイピアに魔法を纏わせながら腕を斬り付けている。しかし、なかなか落とすまではいかないようだ。


「『鎌鼬の矢』」


また腕が切り離された。ネクター達の攻撃もあって、腕を切り離されたキメラは大分消耗しているようにもみえる。しかし油断はできない。こういう時って大抵…


『ヴ…ヴ…ヴォォォォォォォォォォォン』


キメラが今までにない大きな雄叫びを上げた!辺りに地響きが起きるほどの衝撃に俺達の手も止まってしまう。

すると、上の方からいくつかの檻が落ちてきた。中には…人型の獣だ。しかし、こちらに敵意はなさそうな…


すると、キメラが残った腕で落ちてきた檻の中の生物を掴んだ。えっ、まさか…


バリンッ…ボリッボリッ…


喰ったーーーー!!!!!その途端、切られたはずの腕が生えてきた!!!くそ、そういうことかよ!


「檻の中の生物を守るんだ!回復されるぞ!!!」


落ちてきた檻は残り3個。切った腕の数を考えると、全部喰われたらパワーアップされる予感だぞ?!


慌てて、すべての檻に防御壁を張る。これは、守りながらだとキツイかもな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る