66.地下牢って事は…?
先頭はシーフのバナナ。彼女も初ダンジョンらしく、ムラサキさんからあれこれ教わりながら進んでいく。あちこちにある牢は大半が入れなくなっていて、時折ネズミや蜘蛛が出てくる程度だった。
「なんか、案外静かなんですね」
「そうだねぇ」
そう、思いの外敵が出てこない。左右の牢も特に何もない。正直なところ…
「ヒマにゃー」
そう、若干暇になっている。もちろん敵は出るがこの人数だからすぐに終わるし、手応えもない。少しだけ気も緩んだその時だった。
『グルォアアアアア!!!!!』
突然、奥から獣の咆哮が聴こえてきた。その途端、左右の牢が激しく揺れて扉が開く。
何も居なかった筈の牢の床から、無数のゾンビが這い出てきたのだ。
「うぉっ!ビビった!!」
「うわっ、臭い!くさいよ?!」
「臭いまで表現しなくても良いと思います!!!」
「くさーーー!!!」
「あっ、やば!コレ毒含んでる!」
「毒消しどくけし!!あっ、麻痺もあるー!?」
「にゃぁぁぁ!!!グチャってするぅぅ!!」
阿鼻叫喚その2。流石にムラサキパーティも出てくるゾンビに苦戦している。なにせ相手は
「あって良かった範囲化スキル…ってね!」
弓を構えると、光の矢が形成される。そのまま狙いを定めて放つと、矢が複数に分かれてゾンビ達を撃ち抜いていく。
元の魔法は『
「シオン君ナイス!こっちでヘイト稼ぐからトドメはお願いね」
「はいよー」
出てくるゾンビに次々と光の矢を当てていく。魔法なので外すことは無いけどね。普通の矢と違って味方に当たる心配もないから、遠慮なく撃てるのが気持ちいい。調子に乗ってバンバン撃ってたら、ゾンビも湧いてこなくなっていた。
「いやー、油断したね!」
「聞きたくないけど、ワザとかしら?」
「まさかー!アタシらもここは初なんだよ」
「あれ?そうなの?」
「前回は一階を軽く見て回っただけなんだ〜」
おいおい…まさかの全員初見じゃねーか!まったく。さっきの声の主も気になるし、ちょっと気合い入れていくぞ?
「やー、ネクターの配信の時も思ったけど、シオン君って攻略組に入ったら凄そうだね?」
「そうなのよ。何ていうか…司令塔としての資質がありそうよね」
「なんだそれ、別に大した事はしてないぞ?」
「パイセンはピンチの時の対応力がヤベー事で有名ッスから」
「えっ、そうなの?」
「上層部からの評価も高いんだぞー?トラブルがあったらアイツ呼べっていうのがトップの認識」
「どーりでトラブル現場にしょっちゅう呼ばれるワケだ…」
評価は嬉しいが、トラブル現場の対応は大変なんだぞー?ハゲたら恨むからなー?
「さーて、どうやらフロアボスのお出ましだよー?」
さっきまで左右には牢屋があったのに、いつの間にかやたらと広い部屋に立っていた。周囲には拷問器具があったり、おびただしい血痕があったりと…まぁ地下牢だもんな、ココ。ふと上を見ると、やたらと大きな丸いモノがユラユラと揺れている。…なんだアレ?
ガキィィンッッ
金属が破裂するような音と共に、丸い円盤が落ちてきた!凄まじい轟音と煙を立てて落下してきた何かは、大きな檻だった。そして、その中に居たのは…
「キメラ…」
そう
そこはライオンとヤギの顔じゃないの?とか思ったが、周りの拷問器具を見る限りだとおそらく罪人を使って人体実験が行われていたんだろう。よく見れば、両腕に拘束する為の鉄の鎖が巻き付いていた。
目の前の獣は、憎しみ・哀しみ・痛み・妬み…そういったあらゆる負の感情を滲ませた瞳でこちらを睨んでいた。
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