64.廃城ダンジョンへGO

30分後、俺達は廃城前に居た。

相変わらずお化け屋敷のような雰囲気が漂っているな。部長とカリンは初めて来るんだっけ?


「ひぃん…お化け屋敷ぃ…」

「オバケは…でるかな?」

「でるのぉぉぉぉぉ?!?!?!」

「事前情報だと、ゴーストが出るらしいですね」

「まぁ、廃城だもんな」


カリンはお化け屋敷が苦手なのかー。というか、カリンもお化け屋敷に登場する部類じゃないのか?


「…言われてみれば確かにそうにゃ」

「狐火とか、お化け屋敷の定番だろ?」

「あれ、そう言われたら何となく怖くなくなってきたにゃー」


そんな感じで和やかに話してると、全身を紫で統一したあの人とその仲間がやってきた。いやほんと、見事な紫だな。


「やっほ〜、はやかったね?」

「まぁね、前に一度来てるから」

「あー、そういえば骨村のリッチのワールドファーストだったもんね」

「早期攻略組は悔しがってたよね、まさか初心者用の森にドラゴンとかリッチとか配置されてるとは思わないじゃん?」

「ほんまやね〜。あれからしっかり探索するようになったもん」

「おっと、まずはお互いに紹介しておこか」


紫の人…ことムラサキさんが連れてきたのは三人。緑の髪のマッチョな男性は戦士のルドガー。黄色の髪の小柄な女性はシーフのバナナ。茶髪で関西弁な女性は治癒士ヒーラーのコノハ。


「それじゃ、入る前に確認ね」


作戦はこうだ。

まず、ムラサキチームが先行する。その後ろに俺達が続く形だ。内部の様子をみつつ、二手に別れてマッピングを行う。その後、合流して一階毎の地図を完成させつつ上を目指すことになる。


「そういえば、この廃城ってどうやって入るんだ?」

「あ、そういえば説明してなかったね」


ここの廃城に入るためには、例のリッチを倒すと貰える称号が必要らしい。…そんなものあったか?と思ったら最近実装されたんだとか。実装前に倒していたプレイヤーにも付与されているらしく、確認したら確かに新しい称号が複数表示された。…なんで?ま、いいか。


カリンと部長もブートキャンプで称号を獲得済みなので問題なし。


「それじゃ、入るよ?ここに触れれば良いからね」


ムラサキさんが蔦で覆われた鉄の門扉にふれた瞬間、姿が消えた。なるほど、触ると中へ転移するんだなー。他のメンバーも次々と中へ入っていく。


門扉に触れると、不思議な声が聴こえてきた。


『《憐れなスケルロゥを解放せし者》、門を開き中へ進むが良い』


◇◇◇◇◇◇◇


目を開けると、城の玄関ホールらしき場所に立っていた。先に入っていたメンバーは周囲を見て回っている。


ホールの正面には大きな階段があり、踊り場から左右に階段が分かれている。踊り場の壁には誰かの肖像画が飾られていて、両脇にはガーゴイルの彫像が置かれていた。あれって、近付くと襲ってくるヤツじゃね?


左右の壁にはいくつかの扉がある。所々に置かれた調度品は蜘蛛の巣が張っていたりホコリでくすんでいるが、高級そうだ。


「なるほど、中もちゃんとお城っぽいんだな。それじゃ、左右の扉を一つずつ確認していこうか。我々は右へ、ネクター達は左で」


ここではムラサキが指示役なので、俺達はその通りに行動する。まずは罠感知のあるカゲが扉を開けていく。


「罠は無さそうッス。開けるッスよー」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る