62.クラン設立(事後報告)
「そうだ、大事なことを伝え忘れていた」
大型アプデ時に予定されていたハウジングエリア実装が前倒しされた。というのも、開発サーバーに拠点を移す準備が思ったより早く整ったのと、先に移動できるようにしてあったほうが安全だろうという配慮からだ。
当初の予定では、大型メンテ中に拠点付近の改修も行い、他のユーザー向けのハウジングエリアを新設。景観はそのままで、出入り口を設けてハウジング用サーバーに移動出来るようにする。俺達の拠点は開発サーバーに置かれるので、そこへ繋がるように手を加える…といったものだった。
その予定が前倒しされ、現在ハジーメの一部エリアはメンテ中になっている。掲示板やSNSでもマイハウスを持つ事を夢見ていたユーザーが、いまか今かと待ちわびているようだ。
「…で、ボク達の拠点もこのメンテで別サーバーに置かれる事になったんだ。それで、クランの設立してたんだよね。他メンバーの承認が必要なんだけど、緊急って事で。話しておこうと思ってたんだけど、すっかり忘れてたよ」
「へぇ、そうだったのね。いつの間にそんな話になってたの?」
「んー、いつだったかな?
「GMから連絡って心臓に悪いにゃ。クランマスターじゃなくて良かったにゃー」
「そうですね、トラブルがあった時にしか会いませんから…」
「警察をみたいなモンか?」
「悪い事してないのに身構えちゃうやつッスね」
「カゲは何かやってそうな顔してるもんな」
「ちょ!オレは無実ッスー!!」
そんなやり取りを尻目に、俺はせっせと作業をしている。と言っても難しいことはしていないんだけどね。
「よし、土台は完成っと」
カゲが俺の手元を覗き込んできた。
「パイセン、さっきから何作ってたんスか?」
「あぁ、ほら拠点が別サーバーに置かれるだろ?その為のクラン証だよ。コレがないと自分の拠点に入れないからなー」
そう。今回のメンテではクランに所属している証を持たないと拠点へ入れないという仕様に変更されている。これは、クラン外の人間がハウジングスペース…つまり、敷地内へ入れないようにする為の措置だ。知らん人間が庭に居たら嫌だもんな。
クラン証はクランマスターしか発行できず、カード型、バッヂ型、アクセサリ型から好きなデザインを選べる。俺が選んだのはピアス。ついでに色々と付与も付けておいた。
「なんか、ヤベー気配しかないッス」
「また器用なことを…」
「まぁ、これは基本型だから個人用に調整していくぞ」
カゲは忍者だから、気配遮断とスピード。カリンはモンクなので、スピードと打撃力アップ。ネクターは盾役だが、被ダメ依存スキル持ちなので体力と耐久。サクラは回復魔法も使うので詠唱速度と魔法効果アップ。部長は
前に渡していた魔道具を回収して、クラン証に干渉しないように作り変える。
クラン証はシンプルなピアスだから、飾りも追加していく。カンを付けて雫型に切り出した魔石がユラユラと揺れる仕様にした。
クラン証には拠点への転移機能が付けられている。コレは元々の仕様なので、魔道具の転移機能は必要なくなるのだ。俺達の拠点は開発サーバーにあるし、直接飛べちゃうと困ったことになりかねない。
魔道具の方は、シルバーで透かし彫りのしてあるイヤーカフで統一した。あとは、ピアスとチェーンで繋いだら完成だ。
「へぇ~、良いじゃない!」
「シンプルだけど、よく見ると凝ってますね」
「皆でお揃いなのにゃ〜!」
「おぉ、コレくらいなら俺等でも付けられるな」
揃いのピアスを付けると、何となく気恥ずかしさもあってくすぐったい。しかし、『仲間』って感じが強まってコレはコレで良いかも…なんて、思ったりもした。
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