59.竜人ヤスナガ

匂いにつられて寄り道してしまったが、本来の目的は部長の出迎えだ。通りを真っ直ぐ歩くと、大きなトンネルが見えてきた。ここが冒険者向けの出入り口なのか。


よく見ると魔道具が設置してあるな。アームのような先に目玉が付いてて、アチコチせわしなく動いている。あれが監視システムっぽい。さっきから目玉の一つが俺をじっと見つめてるんだよね。手を振ってみたら、ビクッとして一礼した後、他の場所をチェックしていた。


さて、部長は…と。キョロキョロと探すがヒトが多くて見つけにくい。何故なら身長が低いからな!カゲは背が高いから探すのは任せよう。くそぅ、早く成人したいぜ。あれ?プレイヤーってゲーム内では年取らんよね?え?俺このまま?…ショック。


「あ、部長みーっけ!…ってパイセンどうしたんスか?なんか凹んでません?」

「い、いや、ちょっと事実に気づいて凹んでるだけだ」

「はぁ…」

「で、部長はどのへんだ?」

「あそこッス…ん?」

「どうした?」

「なんか、知らない人も一緒ッス」

「え?」


人混みを掻き分けて部長の所へ行くと、なるほど確かに知らないヒトが立っている。NPCか?何かのクエストでも受けたのかな。


「部長、二日酔いはもう良いのか?」

「おー、バッチリだぜ〜」

「部長、チワッス。ところで隣の人は?」

「お?おぉ。お前たちに紹介したくてな、丁度近くに居るって言うから来てもらったんだ。ほら、取引先の村田康永むらたやすなが君。サバゲー仲間の。彼だよ」


部長が連れてきたのは、取引先の社員で部長のサバゲー仲間でもある康長さん。ちなみに二十代前半の優しげな若者だ。


「ご無沙汰してます。コチラではヤスナガで活動しています」

「あー!ご無沙汰してます!村…ヤスナガさんもトリONプレイしてたんですね!」

「はは、姉に勧められてプレイし始めたんですよ」

「へぇ〜、そうなんですね。そういえば、見慣れない種族ですね?」

「あぁ、限定セットに当たって。竜人族という種族らしいです」

「えっ、ヤスナガさんも当たってたんですか?俺もなんです!」


なんと、こんな身近に八聖が居たとは。思わぬ邂逅である。

ヤスナガさんはお姉さんと二人で活動していて、種族限定クエストをやっている最中にこの近くを訪れていたらしい。


先日の飲み会で、ヤスナガさんと飲んでる時にトリONの話が出たらしく俺とカゲがプレイしてるから、タイミングが合えば会いましょうという話になってたそうだ。


「そういえば、ウチのクランにはあと三人八聖が居ますよ」

「えぇ!?ホントですか!会ってみたいです!」

「オレと部長だけノーマルなんスよね〜」

「そう考えると凄いクランだな?」


そう。俺を含めて既に四人が所属しているのだ。つまり、八聖のうち半数が所属するクランという事になる。なんというか、人の繋がりって不思議だな。

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