58.レフィの恋の物語
重苦しい空気が漂う中、カゲ達が帰ってきた。待ってたよぉぉぉぉ!!!
来客と重い空気に目を丸くしている一行を外に連れ出して事情を説明する。
「なるほどねぇ〜。その、レフィちゃん?の事はとりあえず私達に任せてよ!これでも相談枠とかやってるし!」
「んじゃ、ドフィ親方はオレらッスね〜」
「恋バナと言えばスイーツにゃ!」
「三層が飲食店街でしたっけ?レフィさん連れて行きましょう!」
そう言うやいなや、女性陣は嵐のように三層へ去っていった。
残されたのは俺とカゲと親方。工房へ行こうとする親方を押し留めて、話を聞き出す。
レフィさんの親とドフィ親方の親は親友同士だったそうだ。親同士が仲良くしてるので、必然的に親方とレフィさんも仲良く遊ぶ仲だったらしい。その内、レフィさんの父親が病に倒れてしまった。どうやらその時に親同士の間で決まったらしい。
親方としては、レフィは兄弟のように育った仲だし、恋愛というのもよくわからない。
更に言えば、親が勝手に言ってるだけで今はモノ造りにしか興味がない。アイツはここに来るとずっと纏わりついて困るから、拠点で過ごしていたいんだそう。
『アイツは人の話を聞かねーんだよ』
と、ため息を付きながら話していた。
なるほど、レフィちゃんは構われたい一心なんだろうが逆効果だったって事か。
とりあえず、今の話をサクラ宛にメールする。スマホを取り出して操作してると、カゲが不思議そうな顔をして覗いてきた。
「あれ?そのスマホどうしたんスか?」
「え?これは…あぁ、そういえば大事な事話してなかった!!とりあえず、全員揃った時に話すから待っててくれ」
「りょーかいッス」
「俺が忘れてそうだったら教えてくれ」
「できれば忘れないで欲しいッス」
おっと、サクラから返信だ。
『わかりました。レフィさんの話と総合して良いように誘導しておきます』
おぉ、助かるぅ〜。何だか恋愛話で盛り上がってて、このまま近くの宿屋でお泊り女子会する流れになってるらしい。
こっちはとうするか…と思っていたら、部長からもうすぐドワーフの里の入り口に着くと連絡があった。話も一通り終わってるし、俺達もアチコチ見て回りたかったから、第一層の冒険者用出入り口に集合する事にした。
最初に入った通路はドワーフ専用だったからな。何が売ってるのかワクワクするぞ!
来たときとは違うエレベーターで第一層に登る。エレベーターもこちらの方が広くてキレイだな。
なるほど、外から来た人間用なのか。防犯カメラが搭載されていて、問題を起こした冒険者が来たら自警団に通報されるシステムが完備されていると。
へぇ。出入り口で一人ひとりの顔を登録するんだな。それが警備ネットワークに登録されて、その人がどのような行動してるか監視していると。やり過ぎ感もあるが、防犯システムが凄いな?宝飾品や様々な国の国宝修繕もやってるから?へぇぇ、ドワーフって凄いな。
さて、第一層は驚くほど賑わっていた。しかも、見たこと無い種族がいるぞー?!
何だろう、長い耳を垂らしたトカゲ?みたいな種族に、いかにもなリザードマン。ヘビのようなのもいるが、アレもヒトなのか?
『アイツ等は火竜の眷属だな。ワシ達と同じように地下に住む種族なんだが、こうやってドワーフの里で商売をして外貨を稼いでおる。奴等は亜人が極端に少ない種族でな。外の世界に出ると魔物として討伐されかねん。だからここで商売をしておるのよ』
なるほど、確かにあの巨大なヘビがその辺の森に居たら討伐しちゃうよね。ここはいい武器を手に入れたい冒険者が大勢やってくるから、一つの種族として扱ってもらう機会も兼ねてるってワケだ。ドワーフの里は場所を提供することで地下世界でも安全に暮らせるしWin-Winなんだな。
お、何だか美味そうな匂いが…ドラゴン肉の串焼き?!しかも、売ってるのは火竜の眷属なヘビ!?その肉はいったいどうやって仕入れたんだ…?
「シュルル、コの肉は、草竜ダカラ、柔らカくテ、ジューシー!オレ達、火竜サマの眷属だカラ、火竜ハ仲間。ソレ以外は食材!シュルルッ」
なるほど?つまり、火竜の眷属達は同じ仲間という感覚だが、それ以外の竜は俺たちから見た竜と変わらないって事か。それでいいのか?とドフィ親方を見ると『細けぇ事は良いんだよ!』とドラゴン肉に齧り付いていた。
うん。細かいことは気にしない方が良いな。手に持った串はズッシリとして、いい匂いだ。ガブッと齧りつくと、すぐに噛み切れるほど柔らかい。そして、口の中にジュワ〜っと肉汁が溢れてくる!なんだこれ!美味いぞ!
味は鶏に近い気もするが、食感はすごく柔らかな牛肉だ。いやー、ドラゴン肉って固そうなイメージあったけど、これは美味い。草竜とか言ってたし、種類によって違うのかな。火竜は…あ、いやスマン。なんでも無い。食べようなんて思ってないぞ?うん。串5本追加で。あ、やっぱ10本!
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