50.氷竜シェレグと竜癒泉

その日のうちに、温泉地の有力者が集められて話し合いが行われた。


こちら…というかドラゴン側の要望は「たまに温泉に来たい」「うっかり討伐しないよう周知して欲しい」の2点。

有力者達は最初こそ渋っていたが、氷竜は意思疎通が出来るのとエロジジイ…ハイエルフが付き添うので温泉地に迷惑がかかるような振る舞いはしないしさせないと約束し、ドラゴンすら癒やす湯として売り出せば、さらなる集客が見込める事を伝える頃にはすっかり乗り気になっていた。


ドラゴンが求めていた湯は『竜癒泉りゅうゆせん』と名付けられ、カゲ達によって竜が入れるほどの広さに拡張されている。アクアが水脈を動かして湯の量を調整し、ムートとカゲ達が秘湯を拡張。秘湯から湯をひいて温泉地まで流れるようにしたぞ!


実は、温泉地の湯にも傷を癒やす効果はある。しかし、湯の温度を調整するために水を足しているので効果が薄まっているのだ。

竜癒泉の湯は祠を建てて石桶に流れ込むようにしてある。これはどうするかと言うと…


「このお湯を飲む…?」

「そうです。『飲泉いんせん』という治療法で、温泉を飲むことで身体の内側から温泉の効果を感じられる湯治療法の一つなんです。竜癒泉を温泉地全体に巡らせるのは難しいですが、これなら温泉地に訪れた人全員に利用して貰えますから」

「なるほど…」


説明役は部長に丸投げだ。俺は平社員だからな!こういったプレゼンはプロに任せるのが安心だ。…けっして面倒だからではないぞ!


ちなみに、竜癒泉からここまでパイプで繋げて龍の口からお湯が流れるようになっている。パイプを通る間に飲めるくらいの温かさになるし、ゴミが入らないように対策もしてるから安心安全だ。


交渉の結果、飛来する前に連絡をする事を約束してくれるなら…と話がまとまった。これからは、温泉地の護り竜として周知していくらしい。

さて、ラウジャジーン達に伝えないとなー。


「ほぉ、これは見事じゃの!」

『ははは!見よ!我も湯に浸かれるぞ!!これは良い!!』


うんうん、喜んでいるようでなによりだ。

…そういえば


「なぁ、氷竜と言っていたが湯は平気なのか?」

「ん?あぁ、あやつの持つ属性が氷なだけでこの程度の熱さではどうこうならんよ」

『暑き地は苦手ではあるが、だからといって命の危険を感じる事は無いぞ』

「へぇ~、ウロコが氷のように見えたからちょっと心配したんだ」

『はっはっは!なるほどなるほど、心優しき子よ、我のウロコを持っていくが良い』

「えっ?いいの?」

『構わぬよ。我にとっては勝手に抜けて勝手に生えるモノに過ぎん』


ドラゴンが後ろ足で器用に身体を掻くと、キラキラとしたウロコが何枚も落ちてきた!うひょぉ〜!アイテムゲットだぜ!


「ふむ、氷竜のウロコは良い魔道具になる。大切にしなさい」

「おぅ、大事に使わせてもらうよ」

「そういえば、お前さんは自分の種族についてどれほど知っておるのじゃ?」

「え?正直、全然わからん」

「むむっ、それはイカンな。この先の事も考えて少し勉強すると良いじゃろう」

「えぇ〜、別に知らなくても良くないか?」

「ならんぞ!その様子だと、ハイエルフの成人がいつなのかも知らんじゃろう!身体にも関わる事だからちゃんと知っておきなさい」

「へーへー」

「精霊泉の宿という場所がある。ワシはそこに滞在するから、お前さんもそこへ来ると良い」

「わーったよ。ほら、そろそろ移動しないと御者のおっちゃんがヤキモキしてるぞ」


宿へは後で向うとして、まずはドラゴンに異動してもらわないとな!


『我の名はシェレグだ。竜癒泉へ留まるつもり故、また会いに来るがよい』

「わかったよ、シェレグ」


シェレグは大きな翼を拡げると、フワリと浮かび上がって竜癒泉の方へ飛んでいった。


さて、これで温泉宿へ行けるぞー!


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ここまで作品を読んでいただきありがとうございます!


ようやく温泉に入れそうですね!

シオン君の、クスッと笑える冒険はまだまだ続きます。


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