49.竜の飛来地、観光地
色々とアイデアを練りつつ、秘湯の湯を竜の所まで持っていく。転移しても良かったんだが、ラウジャジーンが一緒なのでシルバに乗せてもらった。
「お待たせー」
「パイセン、早いッスね」
「とんでもないスピードで飛んでいくからビックリしたわよ…って後ろの人は?」
「おぉ、この人は…」
「なんか、白目剥いてないか?」
「気絶してますね?」
「泡吹いてるにゃー」
しまった。全速力だったからな、仕方ない。
俺とロープで結んでおいたから落ちはしなかったが、飛び始めた瞬間気絶したらしい。正直スマンかった。
気絶エルフは置いといて、総出で温泉水を傷に掛ける。身体が大きい分、必要な量も多いんだな。
「はっ!ここはあの世か?!」
「ちげーよ、ホラ手伝え!エロジジイ!」
気絶エルフが起きたので、すぐさま手伝わせる。少々乱暴なのは気にしないでもらいたい。あれは湯を汲んでいる時だった…
冒険の話を聞きながら、ようやく空ビンが無くなった頃。どうやって行くか?という話になった。俺は転移出来るが、ラウジャジーンは歩いて向うと言うのでそれならば…とシルバの背に乗ることにしたのだ。安全のためにお互いをロープで結び、後ろへ跨ってもらう。
フワリとシルバが浮くと、ラウジャジーンが俺の腰にしがみついた。そして
「ふーむ、これがオナゴなら良かったのぅ…」
「は?」
「どこもかしこも淋しい身体をしよって…お主、今すぐオナゴにならんか?ワシ、オナゴの後ろに乗りたいぞー」
「エロジジイかよ!シルバ、遠慮はいらん。全速力だ」
『承知!』
…と、そんな理由で俺の中では雑に扱って良い人物認定したのだ。ほーら、女性陣もドン引きだぞ!そして、カゲは無言で殺気を放っている。
さー、エロジジイは置いといてドラゴンを何とかするぞー。
しばらくお湯をかけ続けると、だんだん傷が癒えていくのがわかった。もう少しで治せそうだな!
『むぅ…良い湯じゃ〜』
ドラゴンからそんな声が聞こえる頃には、すっかり傷は癒えていた。ラウジャジーンは、なにやらニコニコとしながらドラゴンの鼻先を撫でている。そういや友人だと言ってたからな。エロジジイなりに心配はしてたんだろうな。エロジジイだけど。
『ふむ、小さき者達よ。礼を言うぞ』
「おー、それは構わないんだが…」
ドラゴンにも、街道を通る人達が困っているのだと伝えた。
『ふむ、それは悪いことをしたな』
「分かってくれれば良いんだ。それで、あの湯に浸かりたいと思うか?」
『そうさな。出来れば我もゆっくり湯に浸かってみたい』
「そうか。おいエロジジイ、ちょっと考えがあるんだが協力してくれ」
「お前さん、年長者を敬う気持ちは無いのか?」
「エロジジイにはこれくらいで十分だ」
『はっはっは!ラウよ、そなたまたやりおったな?』
「なんじゃ、お前まで!ワシはなにもしとらんぞ!」
余所でもヤラカシたのかよ!
さて、まずは御者の里へ行って解決の目処がたった事を報告に行かないとな。…っと、あれ?あそこに見えるのはもしかして
「おぉーい!お前さん達大丈夫かー?」
御者のおっちゃんだ!行く手間が省けたな。
「ちょうど報告に行くところだったんだ。ドラゴンはあそこの湯が目当てで、もうすぐ退いてくれそうだぞ」
「おぉ!そうなのか、あの湯はドラゴンにも好まれるとは…」
「それで、ちょっと相談なんだが…」
考えていたことを伝えると、おっちゃんも賛成してくれた。温泉地の代表にも話を通してくれるらしい。早速、代表と会うべく温泉宿へ向う。ドラゴンはまだその場に留まってもらっているので、ファンスキーで向う。
道中、俺のアイデアを皆と共有して、代表との話し合いは俺と部長でする事になった。カゲ達は現地調査組だ。この為に
温泉地は、ほんとに温泉地だった。草津と別府と有馬と下呂と…なんかその辺の温泉地が合体したような雰囲気だ。温泉宿も色々あるみたいだなー。あー、温泉に入りたい…
さて、温泉地の代表はヒサギという人らしい。温泉地の一番奥の屋敷にいるという事だが、ここが正念場だな。
「シオン様ですね。御者の里より知らせが届いています。ヒサギ様がお待ちですので、とうぞこちらへ」
いつの間にか連絡がいっていたらしい。スムーズに面会することが出来た。
「よくぞ参った。私がこの温泉地の統括をしているヒサギだ」
「冒険者のシオンです。こっちは仲間の…」
「ミヤジマです。本日はお時間を取って頂き、有難うございます」
お、部長が仕事モードだ。たのむぞ!部長!
「して、話とは?」
「はい、すでにお聞き及びとは存じますが温泉地と中継地を繋ぐ街道にドラゴンが飛来していまして…現在街道を塞いでいます」
「うむ、その話は聞き及んでおる。アレの対処をどうするか我らの方では話がついておらんのだ」
「そうなんですね。ご安心下さい。すでにドラゴンを退ける準備は整っており、今すぐにでも街道を通すことが出来ます」
「なんと!まことか?」
「えぇ。実はあのドラゴンは…」
ドラゴンが飛来した理由を告げると、ヒサギさんは驚いた顔をしていた。まぁ、そうなるよね〜
「なるほど…しかし、今後も同じような事が起きるのは確実なのだろう?」
「そうですね…そこでご相談なのですが」
「ふむ」
「先程の話に出てきたドラゴンを癒やす湯。そこにドラゴンの飛来地を作ってはどうかと思いまして」
「飛来地じゃと?」
「えぇ。場所はここより離れていますし、利用客の安全は確保されます。なんせドラゴンが気に入った場所ですし、彼らは話が通じます。それと、彼らの友人であるハイエルフをご紹介しますので、何かあればその者に対処してもらえます」
「ほぅ、ドラゴンすら癒やす湯…こう銘打っておけば客寄せにもなるの」
「そうです。今、仲間が現地調査をしていますが…おっと、丁度連絡が来ましたね」
『パイセン、バッチリOKッス!』
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