22.滅んだ村とアンデッド

城はドラゴンの住処より更に北へ進んだ所にあった。

随分と古くに棄てられたようで、城壁は蔦で覆われている。城の周りをグルっと回ると城門を見つけた。


「うーん、流石に入れないな」

「そうね、中に入るのは諦めるわ」


門を壊してまで入るつもりは無かったので、城の周辺を散策してみた。

敵のレベルはドラゴンの住処周辺より高かったが、それほど苦戦することはなかった。

出てくる敵は、フォレストベア・フォレストスネーク・フォレストボア・スパイダー・牙ネズミ。それぞれレベルは20〜30ほど。


ちなみに、森の入口はレベル5〜でドラゴンの住処周辺は15〜。なので、たぶんここが最奥なんだとは思う。そんな森の中で、レベル30以上と思われるドラゴンを叩き起こしてしまったネクター。どれくらいの事をやらかしたのか、お分かりいただけるだろうか。


さて、そんな感じで獣を狩りつつ歩いていると目の前が急に明るくなった。朽ちた石垣や壊れた家屋が見える。どうやら集落跡のようだ。


「へぇ、こんなとこに集落跡があったなんて。ずいぶんと放置されていたみたいね」

「使えそうな家屋もあるッスね。日も暮れてきたしここでキャンプでもしないスか?オレ流石に疲れたッス」

「私も休みたいですね。MPも回復させたいですし」

「よーし、それじゃココをキャンプ地とする!」


使えそうな家屋を拝借して、休息を取る事にした。食器や家具もそのままだったので、洗浄して再利用する。それにしても、部屋の中を見ると、経年劣化や埃はあるものの住んでた人が突然居なくなったような感じだ。


「この集落って、何かあったんスかね?纏めて逃げ出した感ないし…あの城と関係してるんスかね」

「そうだな。もしかしたらクエスト関係の場所なのかもしれないなぁ」

「あぁ、その可能性は高そうね。そういえば、私達はまだ個人ストーリー進めて無いのだけど、二人はどう?」

「オレ達もッス。正直それどころじゃなかったし」

「そうなんだ?…ねぇ、良かったら個人ストーリー、一緒に進めない?」

「えっ?!マジで!全然オッケーだし、むしろこっちからお願いしたいッス!!!あっ、モモチャンネルのファンに刺されないッスかね?!いやー、マジうれしー」

「コラ、勝手に話を進めるんじゃない」

「シオンちゃんはどう?迷惑かな…」

「そうだなぁ…まぁ、拠点もシェアしてるし行ける場所を増やしたいってのもあるんだよな。というか、二人は俺達と一緒で良いのか?他にも行きたい奴ら居るんじゃないの?」

「チャンネルの中で募集するのはちょっと控えたいのよね。シオンちゃんは八聖だし、パーティ組んでも問題ないかなって」


その後はいつ進めるか?等の話で盛り上がりつつ、夕食の支度にとりかかった。

夕食はボア肉を使ったシチューと野菜のスープ。ポトト芋とスピナッツのキッシュに街で買い込んでたパン。デザートは桃のタルトだ。しっかり煮込まれたボア肉は柔らかくて旨味が強い。ボアって言うくらいだし豚肉かと思ったけど牛肉っぽいな。とにかく美味い。スープもキッシュも完璧な仕上がりで料理スキル様々だ。


「ふー、美味しかった!」

「ごちそうさまでした。料理スキル便利ですね」

「パイセン、リアルも料理スキル持ちだから」

「まぁ、一人暮らし長いからなー」


そんな話をしつつ、使った食器を片付けていると外から物音が聞こえた。獣か?


「うっっっわ!パイセンやべー!!!外めっちゃアンデッドいる!!!」

「なんだって?!」


慌てて窓から覗くと、多数のアンデッドが集落の中を徘徊していた。一気に緊張が走る。アンデッドって何に反応するんだっけ…?


「そういや、家の中はどんな扱いなんだ?」

「えぇと、キャンプ用のランタンを使うと灯りの範囲内はセーフゾーンになるわね。家屋の中で使えば家屋全体がセーフゾーンになるから、アンデッドも中には入ってこないわ」

「なるほど、なら安心だが…」

「安心とわかってても、これじゃ気が休まらないッスね〜」

「アンデッドって、魔石落としますよね…」

「そうね。今のところ不足してるから高値で売れるのよね」

「あのレベルなら余裕で狩れそうッス」

「聖属性の攻撃なら瞬殺なのよね」

「ドア開けて、ここから狙えば安全に狩れそうだな?」

「私、聖属性の範囲魔法使えますよ」

「奇遇だな。俺も聖属性の範囲攻撃があるんだ」


無言で頷くと家のドアを開ける。

まずはサクラが聖属性範囲魔法を唱えて放つ。


『聖なる光よ!降り注げ!』


天から無数の光が降り注ぐ。光に当たったアンデッドがサラサラと灰になって消えた。しかし、その後ろから続々とアンデッドが現れる。次は俺の番だな!


聖なる矢の雨ホーリー・アロー・レイン


弓スキルの技で聖属性の矢を雨のように降らす。家の正面にいたアンデッドはある程度片付いた。そして、その隙をついてネクターとカゲが飛び出していく。


聖なる加護エンチャント・ホーリー!』


サクラが一時的に攻撃が聖属性になる魔法をかけていく。そのおかげか、2人がどんどんとアンデッドを倒していく。俺も外へ出て落ちた魔石を回収しつつ2人の討ち漏らしを処理していった。

アンデッド達がいなくなって、ホッと息をつく。しかし


「あー、ボス登場ってやつ?」

「アレ、リッチとかそんな感じッスね」


アンデッドの周囲に漂っていた紫の煙が一箇所に集まると、他のアンデッドより一回りおおきなアンデッドが現れた。顔はドクロで頭に王冠を被っている。身体には古びた宝飾品がジャラジャラと飾られて、裾が擦り切れたローブを纏っている。袖からのびる手は骨だ。


「こういうパターン多くない?」

「大丈夫。たぶん今後もこの展開」

「それは大丈夫って言えるのか?」

「大丈夫ッス。問題ないッス」

「問題大アリだよ!!!」


一旦家の扉まで下がって、相手の様子を窺う。魔眼で相手を見ると【リッチ(アルダール王)】と見えた。レベルは見れないから格上なんだろう。つーか、王って!


「とりあえず…聖属性の回復魔法ぶち込んでみましょうか?」

「えっ、回復魔法?」

「えぇ。相手は死者なので…アンデッドに回復魔法でダメージを与えるのは有名な攻略法ですよ!」

「あー、魔法反射を味方にかけて蘇生魔法を跳ね返させて敵に当てるとかあったッスね」


んじゃ、いっちょやったりますか!

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