21.いざ、絶景巡り

「さて、早速だけど目を付けてた場所があるの。まずはそこへ向かうわよ!」


そんなわけで、街の外へ。

トッププレイヤーはすでに他国へ渡る準備に入っていると聞いた。いやー進むの早いなぁ。


そうそう、このトリONというゲームは個人で進めるストーリーモードと、大勢で進めるレイドモードというのが存在する。そして、個人ストーリーを進めていくと他国へ行けるようになるらしい。そして、レイドモードは突発的に起こるクエストで、複数人で行う。レイドにはその場で敵を倒せば完了するものと、一定期間続くものに分かれる。

すでに何度か発生していて、その度にワールドアナウンスが流れるが、今まで参加はしてなかったんだよな。そろそろストーリーモードを進めても良いかもしれないなぁ。


そんな事を考えてたら、いつの間にか目的地まで来ていたようだ。着いた場所は森の奥にある泉。あれれー?なんか見覚えがあるぞぉー?


「ここ、少し前に見つけたんだけど結構良いスポットだと思うのよね。夜にはホタルが出るし空気も澄んでて良いと思うのよねー」

「ははは、ソウダナー」

「さて、暗くなってきたら撮影するわよー」

「んじゃ、俺らは野ウサギでも狩ってくるわ」

「えっ、パイセン見ていかないんスか?」

「うん?そのつもりだが…」

「モモチャンネルの撮影ッスよ?!見ていきましょうよ〜」

「うーん…まぁ、野ウサギはいつでも狩れるからな。ちょっと見学していくかー」

「…っしゃ!」


ガッツポーズするほどだったのか。野ウサギ狩ろうなんて提案して悪かったな。ネクターの邪魔にならないよう、少し離れた場所に座る。辺りがだんだん暗くなってくると、泉から小さな光がフワフワと出てきた。なるほど、ホタルみたいだなぁ。


「へぇ、これはきれいなだなぁ」

「ここはデートスポットに持ってこいッスね〜」


神聖力で満ちているからか、泉もほんのり光っていてなんとも幻想的な景色になっている。ここは人気スポットになりそうだなぁ。そんな事を考えてたら、だんだん夜が明けてきた。暗い時間も良いが、夜明けもキレイだな。小さな光が徐々に空へ消えていく。シルバによると、あれは生まれたての妖精達で、夜明けとともに大気に溶けて世界中に散らばっていくのだとか。


「うん、良い感じ。次に行くわよ!」

「へっ?まだあるのか?」

「当たり前じゃない。何箇所も回るわよ!」

「へぇ…次はどこへ行くんだ?」

「ふふーん。まぁ、そんな遠くないから安心して!」


次の場所は確かに離れてはいなかった。

いなかったが…


「またドラゴンと戦うとは…」

「そういや、パイセン達は2回目なんスね…」

「カゲ君って結構強かったのね…」

「前回より楽でしたね。カゲさんがドラゴンの体力をしっかり削ってくれたので余裕がありました」

「いや、二人のレベルが上がったからじゃないッスか?オレめっちゃ必死だったッスよ〜」


まさかのドラゴンおかわり。前の事故配信で攻略法が確立されてから、ドラゴン素材を狙う冒険者に定期的に狩られてるらしく、なかなか出会えないらしい。そして、絶景とはドラゴンの住処を通り抜けた先にあった。


「ドラゴンが居ない時を狙えば、そんなに大変な場所では無いんだけど案外穴場なのよね〜」


ドラゴンの住処はちょっとした岩場になっていて、その先は森を見渡せるほど高くなっていた。街も一望できて気持ちがいい。夜は星空も見れるし、夜景も見れそうだな。ピクニックにも良さそうな場所だった。ネクターの撮影が一通り終わってから、お茶を飲みながら周囲を見渡していると、気になるモノを見つけた。


「なぁ、あそこって城か?ずいぶん古そうだけど…」

「えっ?ホントだ!」

「あら、この間来た時には気付かなかったですね」

「うーん、ネットに情報も出てないッス」

「へぇ…あれもネタになりそうだなー」


うっかり呟いてから気付いた。そっとネクターを見ると…あ、行く気満々ですね。まぁ、オレも気になるし、行ってみるかぁ。

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