20.他人の恋路と便利道具
精霊の木を植えて数日後。
露天のオッチャンに野ウサギ肉を納品した帰りにふと気がついた。
家の周囲に二人組のプレイヤーがやたらと居る事を。なんだ?最近はペアで組むのが主流なのか?そんな事を思いつつ家へ戻る。
「あー、なんか最近デートスポットになってるらしいッス」
カゲ曰く、精霊の木は夜になると集まった妖精達の光でイルミネーション状態なんだそうだ。幻影の魔道具で人を認識出来ないようにはなっているが、風景はそのまま見れるのでいつの間にかデートスポットになってしまったらしい。
「なんつーか…人の家をデートスポットにされてもなぁ」
敷地内からは見えないとは言え、そんな事を知ってしまったら何とも言えない気分になってしまうな。…羨ましいわけじゃないぞ?
「他にもデートスポットがあれば分散するだろうけどなぁ」
皆でお茶をしてるときにポツリとそう溢すと、ネクターが食いついてきた。
「いいねそれ!次の動画はデートスポット探しにしようっと。そうと決まれば早速行くわよ!」
「えっ、今から?」
「当たり前じゃない。こういうのは即断即決よ!」
「類似動画は無さそうよ」
「サッちゃんナイス!それじゃ、行くわよー!」
ネクターはそう言うと、何故か俺の腕を掴んで立ち上がる。これはアレですか。俺も付き合わされるんですね。わかります。
さて、そうなると家からとうやって出るか…なんだが。
「ちゃんと対策はしてあるわよ〜。ね、サッちゃん!」
「転移が使えるようになったので、ここの部屋と宿の部屋を繫がるようにしてるんです」
なんと、部屋同士が繋がるとな?詳しく話を聞くと、部屋不足対応で冒険者ギルド裏に冒険者専用宿が新設されたらしい。冒険者ギルドへ登録して、ギルドクエストを受ければ誰でも無償利用でき、部屋の数は無制限。そして、ギルドランクに応じて部屋のグレードが変わる。ちなみに、今までイェンを払って借りてたプレイヤーはその分が補填され、部屋も借りてた時と同じグレード同じ家具で引き継がれたらしい。
「そんなワケで、部屋が一つ割り当てられてるのよ。て、その部屋にここから転移して偽装してるの」
なるほどな〜。確かにそれならバレないな。
「俺も転移覚えようかな…あぁ、いちいち魔法にしなくてもドアtoドアになれば良いのか」
それならば…とドフィ親方の工房兼倉庫へ向かう。ネクター達には、気にしないで行っててくれと伝えたが「面白そうだから残るわ!」と言われてしまった。まぁ、彼女たちの分も作る予定だったから問題ないか。
まずは素材探しだ。創造魔法で作っても良いんだが、実は耐久性に問題があることがわかったのだ。そして、素材を創造魔法で加工したモノの方が耐久性や品質が優れている。
創造魔法もそこまで万能ではないってコト。そして、そういった加工に必要なスキルを持っていたほうが更に良い物を作れるのだ。
俺が知らない間にドフィ親方はアレコレ素材を集めている。種族特性なのか?どうやって収集してきたのか知りたいところだが、それは追々だ。今は素材探し!
『おー、それならコイツだな!魔力伝導は良いし加工もしやすい。コイツにコレをこーしてだな…』
「いいねそれ!その案採用!」
ドフィ親方の提案で、作るものが決まった。あとは作るだけだ!よーし、本気だしちゃうぞ〜!
「それで、何作るんスか?」
「あぁ、どこで…げふん。簡単に言えば、すぐに部屋へ戻れる魔道具だ。これなら転移魔法をわざわざ使わなくて良いし、フィールドでも使えるぞ!」
「うん?それなら普通に買えるわよ?リターンキーってやつ」
「それは部屋に帰るだけだろ?これは転移先を選べるようにしてあるんだ。選べる先は自分が行ったことのある場所だけだけどなー」
「えっ!そんなの作れるの?!」
「そのうち出回りそうだけどなー。今の段階だと入手は出来ないだろうね」
「ひぇぇ…そんなアイテム持っちゃって良いのかしら」
そう。リターンキーという自分の拠点へ戻るアイテムはすでに存在している。一回使い切りで街の道具屋で帰るアイテムだ。一つ1000イェンほどだが、野ウサギ肉の売値が10イェン。クエスト報酬が50イェン〜100イェンなので、そこそこ高価な品になる。
転移の魔道具を創造魔法で作れるという事は、そういったアイテムが存在してる筈だ。しかし、使う素材が現段階では入手不可なのである。
さて、早速作成に取り掛かる。まずは道具のカタチだ。腕輪なのかネックレスなのか。ピアスでもいいな。
まずは女性陣の分だ。ネクターには桃の花、サクラには桜の花モチーフのピアスを作ろと思う。材料は妖精銀、魔法を込める宝石、装飾用のシルバー。現在入手方法が解明されていないのは、この『妖精銀』つまりミスリルである。
魔法を込める宝石はドラゴン退治の報酬で貰った『ドラゴン・アイ』だ。真紅の宝石でそこそこの大きさがあるが、これを削り出してパール状にしていく。宝石を妖精銀で包むようにして、桜色と桃色に着色したシルバーで装飾していく。装着すると花がユラユラと揺れるようにしてみた。結構な自信作だ。
次に俺とカゲの分を作っていく。こっちはイヤーカフ型で透かし彫りで雫型に削った宝石がユラユラ揺れるタイプにしてみた。
女性陣には大変好評だったが、カゲ…なんか赤くなって固まってるけど大丈夫か?えっ、嬉しい?お、おう。喜んでるなら作った甲斐が有るってモンだが…いつもと違う反応されると困るな。うん。
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ここまで作品を読んでいただきありがとうございます!
気がつけば20話に到達しました。
ハートでの応援もありがとうございます。自分の作品が読まれているのを実感できて、とても嬉しく思っています。
今後もシオン君のクスッと笑える冒険は続きます。引き続き応援の程よろしくお願いします。
そして、「もっと読みたい!」「面白い!」と感じて頂けたなら、評価ボタン(星)の方も押して頂けると励みになりますので、どうぞよろしくお願いします。
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