19.この木、なんの木、精霊の木

「そういえば、二人は女神って名乗る変なヤツに会ったことあるか?」

「えぇ?ナニソレ…プレイヤー?」

「さぁ…私達は出会ってませんね」


この二人には接触してなかったか…。八聖が狙いではないのか?うぅむ、わからん。


「まぁ、そんなトコだ。ちょっとおかしなヤツだったからさ。誰か他にも見たことある人居ないかなって思っただけ」

「ふぅん?」


まぁ、わからない事を考えてても仕方ない。俺は俺のやれることをやるだけだ。


『ご主人様、庭に若木を植えたいんだすが…』

「若木…?あれ、森で拾ったやつは全部植えたんじゃないの?」

『そっちは植えただす。あとはご主人様が持っている若木だけだす。植える場所はご主人様が決めて欲しいんだす』

「あ、あー!ドラゴンのヤツか!よし、それじゃ庭へ行こうか」

「あっ、私もご一緒します」

「ワタシはシルバちゃんと遊んでる〜〜」


そんなワケで、俺とムートとサクラの3人で庭へ出る。そういえば、この家を譲られてからちゃんと庭を見るのは初めてだな。

畑がやってみたかった俺だが、如何せん知識がない。なので庭や畑いじりが得意そうな土妖精ノームに庭師として働いてもらおう…とムートを創ったのだ。


庭は色とりどりの花が咲いていて、ちょっとした庭園風になっている。森で拾った若木は家の正面に植えてある。あれ?なんか成長してない?


『ノームの魔法だす。良い土に植えればあっという間に成長するだす』


と、言うことらしい。

サクラが熱心に土を触ったりノームに質問している。聞けば、ゲーム内でガーデニングがしたかったらしい。それなら、二人に任せても良いかもな。庭の端にある小屋はドフィ親方が仕事をするための場所らしい。設備もしっかり整えてあるから、鍛冶仕事も出来るとたまたま顔を出したドフィ親方が誇らしげに紹介してくれた。うん、好きなようにしててくれー。

そして、家の裏手には立派な畑が出来ていた。…ちょっと立派すぎない?こんな広い畑素人が持って良いのかな…。すると、ムートがこの土地にいる土妖精に頼めば良いと言い出した。


「そうか、精霊魔法!」

『そうだす。オラも手伝うだすが、ご主人様が精霊魔法で土妖精なかま達に手伝うように言ってくれたら大丈夫だす』


それならばと、後で種を買いに行く約束をして、いよいよ精霊の若木を植える。

ムート曰く、精霊の若木は畑の真ん中が良いらしく、すでに木が植えられるよう準備されていた。


『精霊の若木は、精霊魔法で植えるんだす。魔力を込めて、《世界樹より別れし精霊の木よ。この地に恵みをもたらし、妖精の楽園となれ》と唱えながら土の上に置くんだす。成功すればあとは勝手に根付くだす』

「お、おぅ…それじゃ、やってみるぞ」


イベントリから精霊の若木を取り出して、植樹予定の地面へ近付ける。


「コホン…《世界樹より分かれし精霊の木よ。この地に恵みをもたらし、妖精の楽園となれ》」


唱えながらそっと地面へ若木をおろす。すると、若木が金色に光って根っこがドスッといういい音をさせながら地面へ突き刺さった!ひぇぇ、思ったより荒々しいんですけど?!


若木は金色に光ったままどんどん大きくなっていく。慌ててその場から離れると、グングン伸びてあっという間に二階建てのビルくらいの大きさになった。結構大きいな?!


『無事に根付いただす!おめでとうだすー!』

『おぉ!素晴らしい、さすが我が主!』

『わぁぁい!お友達増えるの!』

『この辺り一帯が神聖力で満ちていますね』

『よっし、宴会するか!』

「木が一気に成長する姿を見ることが出来るなんて…素晴らしいです!」

「うわぁ!大きな木だね〜!木登りとか、枝にブランコ付けたりしたい!」


精霊の木は、太い幹と枝が広がって傘のようになっている。思わずこの木なんの木〜と歌いたくなるな。

そういや、最近じゃこの歌は通じないのか。懐かしいな〜。ちなみに、ネクターとサクラは知識としては知ってるが、あのCMは知らないそうだ。これがジェネレーションギャップというヤツか。


その後、ログインしてきたカゲを交えて精霊の木の下で宴会をしたのは言うまでもない。

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