16.合コンしてドラゴンして

お互いの名前を名乗ったところで、八聖のスキルの話になった。


「へぇ〜、便利なスキルなんだねぇ」

「まぁね。まだそこまで使いこなせては無いけどな」

「モモ…じゃなくて、ネクターちゃんはどんなスキルなんスか?」

「私は《超常筋力》・《憤怒》・《屠る者》よ。超常筋力はとにかく筋力がすごくてSTRとAGIにボーナスが付くの。憤怒は自分の被ダメに比例して全部のステータスが上がってくスキルで、屠る者はトドメをさすとSTRとVITが上がるのよ〜」

「完全に脳筋なんスね…サクラモチさんは?見るからに後衛ッスよね」

「私は《探究心》・《叡智》・《不動なる者》ですね。探究心は鑑定スキルの上位版でしょうか…敵の弱点なども視えます。叡智はあらゆる魔法に精通し、ほぼすべての魔法が使用可且つ威力が増します。不動なる者は、魔法詠唱時にその場から動かなければ、魔力消費が4分の1になるスキルです。」

「なるほど、二人とも強いスキル持ちなんだね〜」

「話を聞く限り、パイセンが飛び抜けてチートな気もするッス」

「そうなのよね〜。私は鬼族っていう種族だし、サッちゃんは聖魔族だけど、シオンちゃんには敵わないわ」

「そんなコトないぞ?腕力ではネクターに負けるし、普通の魔法ならサクラの方が威力も上だし得意だろ?それに、一般プレイヤーと比べたら素の状態でも強いんだし、八聖の誰が強いとか比べても意味ないだろー」

「それもそっかぁ。適材適所ってやつだね!」


聞けば彼女達はこれから予定があるらしく、フレンド登録して別れる事になった…が、俺はメニューが出せないので代わりに通信用ピアスを創り出して渡した。触れながら魔力を通せばどれだけ離れても会話ができる代物だ。ついでにカゲにも渡しておいたので、やり取りも楽になるだろう。


カゲもそろそろログアウトの時間だと言うので拠点へ戻っていった。彼女達の登場ですっかり忘れていた、森の若木の採取へ戻る。


シルバがムートを背に乗せて若木を探している。暇になった俺は、木の上で新しい魔法を創造しながら二人が飛び回るのを眺めていた。


しばらくすると、またもや爆音が聞こえて獣達が走ってきた。またかよ!と思いつつ処理しているとネクターとサクラが駆け込んできた。


「お前らまたかよ!」

「ごめぇぇぇん!!ちょっと手伝ってぇぇぇ!!」


そう言って、来た道を振り返ると大きなドラゴンがコチラに向かってくるのが見えた。ちょっとまって?!ドラゴンじゃん!!!


「おま!!!なんて奴連れてきたんだよ!!!」

「だから、ごめんってー!!!」

「すいません、違う敵を討伐する予定だったんですが…」

「話はあとだ!とりあえず、アレ何とかするぞ。シルバ!!!こい!!!」


ムートを背に乗せたシルバが戻ってきた。すぐさま攻撃態勢に入る。ムートもシルバから飛び降りると俺の横で構える。


「サクラはこっちへ!ネクター!シルバをサポートにつける!」

「ありがと!助かる!」

「ムート、サクラの周りに土壁を。俺が結界張るからサクラはアイツに集中してて」

「わかりました!」


俺は創造魔法で防御結界を張る。即席だが何とかなるだろ。まずはアイツの弱点を視ないとなんだが…くそっ、相手のレベルが高すぎる!魔眼スキルが弾かれて相手の鑑定が出来ない。それはサクラもらしく、ネクターのサポートしか出来ないでいる。


森の中にいるし、たぶん火属性では無いんだよなぁ。森にいたし火に弱そうだけど、普通に魔法撃ってもダメだよな。あ、そうだ!ドラゴンならアレがあるじゃん!


通信用ピアスを起動させてネクターに話しかける。


「ネクター、ドラゴンの身体に一枚だけ色の違うウロコがないか探してみてくれ。喉元・首の後ろだと思う。見つけたら教えてくれ」

「わかったよぉ!ごめんだけど、回復のサポートお願い!被ダメ稼ぐからぁ!」


「サクラ、回復を頼む。魔力は俺が分けるから心配するな。シルバ!ネクターに合わせろ!」

「わかったわ!『天使の吐息リジェネレーション』!」

『委細承知した!』


創造魔法でサクラに魔力を供給しつつ、ドラゴンを注視する。アレが…アレがあるはず…!


『ご主人様、ボクがあの娘をアレまで案内するよ!』

「えっ、ナヴィそんな事も出来るの?!」

『もちろん!ボクはナビゲーター。目的地までの案内ならボクにお任せだよ!』

「よし!ナヴィ、任せたぞ!」

『いってきまーす!』


ナヴィがネクターの元へ飛んでいく。その間にネクターへ指示を出し、サクラのサポートをする。うん?ネクターの雰囲気が変わったな。


「シオンちゃん!みつけたよ!」

「よし、今から隙を作るからそこを全力で攻撃してくれ。かなり堅いはずだが頼むぞ!」

「まかせて!捨て身でいくよ!」

「サクラ!ありったけのバフをネクターへ!次でキメるぞ!」

「わかったわ!」

「シルバ!頼んだぞ!」


シルバが遠吠えをする。二人を相手にしていたドラゴンがシルバの方を完全に見た。シルバが高く飛び上がる。すると、ドラゴンも釣られて真上を見上げた。


「今だ!!!いけ!!!」


俺も用意していた弓であの場所を…竜の逆鱗を狙い撃った。

俺の矢が届くと同時にネクターの渾身の一撃が入る。逆鱗は竜族の弱点として有名だが、だからこそ特別硬くなっている…というのが通説。やはりというか、お約束どおりというか、コイツも逆鱗が弱点だったようだ。

甲高い音を響かせて逆鱗が割れた。

ドラゴンが意識を失って倒れ込む。そして、その姿が消えると同時に二つの宝箱が出現した。


《始まりの森のドラゴンが討伐されました!ワールドファースト報酬として1,000,000イェン・SP 50P・称号【ドラゴンスレイヤー(緑)】が付与されます。》

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