15.桃と桜と大暴走
その日は朝から森に出かけていた。
きっかけはムートの一言だった
『ご主人様…森で若木を探したいんだす』
「若木か?街の雑貨屋じゃダメなのか?」
『森にある若木がいいんだす。特別なんだす』
「特別なのかぁ。んじゃ森に行くか!そろそろ野ウサギ肉も欲しいからな」
そんなワケで、森の奥まで来ているのだ。
森の奥へ行くほど敵は強くなる。ログアウト出来ないのでケガや戦闘は慎重に行っている。コレがキッカケで…なんて怖すぎるからな。『戦闘不能にならない』を心がけているのだ。
ちなみに、カゲも一緒に来ているのでいつもより賑やかだ。
カゲは、バックラーという盾に短槍というちょっと珍しいスタイル。本人曰く「守り人スタイルなんス」だそうだ。あいつの思考は良くわからないが、敵の攻撃を器用に盾で弾いて、相手の腹に短槍を突き立てている。
ちなみに、今相手をしているのはオークだ。ブタの頭に太った人間のような身体をもち、棍棒を振り回している。ゴブリンと違って体高は3メートル程。分厚い皮膚は魔法も刃物も通しにくい、なかなか厄介な相手だ。
作戦はこうだ。集団行動が基本のオークは、一度に複数相手をすると非常に厄介だ。なので、ムートが一匹ずつ器用に集団から離し、それを俺が弓で攻撃する。注意が俺に向いて、こちらへ突進してくるのを、カゲが横から攻撃する。虚をつかれたオークの目を俺が狙いつつ、カゲとシルバがオークの体力を削っていく。ムートは他のオークを注意しつつ、土魔法で2人のサポートをしている。
なかなか良い感じで狩っていると、少し離れた方から大きな爆発音が聴こえてきた。何事かと思っていると、複数の気配がコチラへ向かってきた。
「パイセン、なんかヤバそうッス!」
『複数の獣の気配だ!ムート、主を守るのだ!』
『わかっただす!ご主人様、こっちだす!』
ムートが土魔法で壁を作り出す。俺はその壁の上に立って、気配のする方を注視した。なんか、土煙が見えるなぁ。
シルバはカゲを背に乗せて臨戦態勢だ。何だあれ、モノノケ王子みたいだな!羨ましいぞ!
そうこうしてる間に、木々の隙間から獣達が飛び出してきた。恐慌状態のようで、一心不乱に駆けてくる。このままスルーでもいいが、この先は初心者の狩り場だ。ここで止めないと、あっちは阿鼻叫喚の地獄絵図間違いなしだ。
「カゲ!シルバ!ここで食い止めるぞ!」
「りょ!」
『承知した!』
「ムート!土壁を左右に延ばせるか?」
『わかっただす!』
俺もシルバとカゲが撃ち漏らした獣を弓で倒していく。途中で面倒くさくなって複数の矢を纏めて放つという技を編み出した。味方には当たらない親切仕様だ!
一通り獣達を倒し終わると、流石に疲れたのか、カゲが地面に腰をおろした。
ムートとシルバは倒した獣達からの戦利品を回収している。流石に俺も疲れたな。いったい何だったんだ?あの集団は…
カゲに飲み物を渡しつつ休憩していると、獣の集団が来た方から2人のプレイヤーが現れた。
一人はピンクの派手髪に金の瞳。大きな斧を背負った小柄の女性。額からはツノが生えている。
もう一人は背の高い黒髪に金の瞳の女性で、長めのローブに高そうな杖を持っていた。
二人は俺達を見つけると駆け寄ってきた。
「すいません!こっちに獣の集団が来ませんでした?!」
「あぁ、アレなら処理しちゃったけど…」
「わぁぁぁ、ごめんなさい!!あれワタシ達のせいなんですぅ〜!!!」
「あ、そうなの?ごめん、倒さないほうが良かったかな」
「いえ、倒してもらって助かりました。このままだとМPKになるトコでしたから」
「そうなんだ、大変なことにならなくて良かったよ」
「大変なことにはならなかったッスけど、オレたちは大変だったッスよ…」
「うわぁぁ…ホントにごめんなさいっ!」
まぁ、ここで会ったのも何かの縁って事で、休憩がてら一緒にお茶でも…と言うので遠慮なく誘われることにした。気になることもあったからね。
街に戻って、彼女達のオススメするカフェへ入った。シルバも居るので中庭のテラスに座る。良い感じで人目もなく、落ち着いて飲食出来そうだった。
俺は肉がたっぷり挟んであるバゲットサンド。カゲはステーキプレートを注文。シルバには戦利品の生肉をあげた。
「あらためて、先程は失礼しました。そして倒してくれてありがとう。ワタシは八聖の《ネクター》こっちは同じ八聖の《サクラモチ》よ」
「えっ、八聖?!」
「えっ、もしかしてモモちゃん?!」
俺とカゲが同時に驚く。
って、モモちゃん?知り合いなのか?
「むしろ何で知らないんスか!Vアイドル界の有名人ッスよ!ゲーム配信者でもあるんス」
「へぇ…」
「わぁ、すごく興味のなさそうな反応」
「パイセンが失礼したッス。この人、女運無さすぎて枯れてるんス」
「おい、失礼な事を言うな」
「お二人はどういったご関係…?」
「会社の先輩後輩ッスよ。あ、ちなみにパイセンも八聖ッス」
「おい!…ったく。どーも、八聖のシオンです」
「オレはパイセンの後輩の
「そうなんだぁ、ヨロシクね!」
「ヨロシクお願いします」
「おぉ、ヨロシク…」
「よろしくッス!」
何だか合コンみたいだな…なんて思ったのは俺だけかな。
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ここまで作品を読んでいただきありがとうございます!
さて、新たな仲間が増えましたね!
これからますます賑やかな毎日になることでしょう。
シオン君のクスッと笑える冒険はまだまだ続きます。
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