14.雨の日

その日は朝から雨だった。

そりゃ、ゲーム内でも雨くらい降るよな。降るけど濡れないのがゲーム。傘はお洒落アイテムだ。しかし、何故か俺は濡れる。濡れるんだよ、ゲームなのに。

涼しい顔して雨の中を歩くカゲと、ずぶ濡れの俺。こんなの、目立たないわけがない。


そんなワケで、部屋に籠もって窓の外をボンヤリ眺めていた。今日は庭いじりもお休みで、ノームのムートはドワーフのドフィ親方と庭に建てた小屋で何やら作っている。


フェンリルのシルバは床で寝そべっていて、そのシルバの背中ではナビゲーターのナヴィが気持ちよさそうに寝ている。屋敷妖精のスレアは部屋の掃除をしていた。


彼らは、俺が創造魔法で作り出し名前を付けた精霊達だ。ちなみに、シルバは神獣に分類される。

俺の魔法はちょっと変わってて、頭で想像したものを生み出せる。そうして、生み出した魔法生物に固有名を与えると、召喚獣として召喚魔法で呼べるようになるのだ。

創造魔法は使い捨て、召喚魔法は繰り返し使えると言えばわかりやすいだろうか?

そして、精霊魔法はこの世界に存在している精霊達を使役する魔法だ。彼らはそこかしこに居て、その場限りで力を貸してくれる。その中で名前を持つことを願う精霊に名前をつければ、次からは名前を喚べばその精霊が来てくれる…という仕組みだ。

そして、召喚獣となった者たちは思考し成長することが出来るようになる。単なるシステムの一部だった者が人工知能を得るのだ。


ちなみにデメリットもある。召喚する為の消費魔力が大きいのだ。そして、顕現させている間も魔力は削られる。なので、一般プレイヤーは顕現させ続けることは出来ないし、消費魔力の多さも相まって死にスキルとなる。


俺の場合は、魔力が無限にあるので難なく喚べるし顕現させ続けても問題ない。まさにチートである。俺だけこんなチートで良いのか?と思うけど、そう言えば他の当選者…つまり八聖はチート能力一つ持ってるんだよな。まだ出会ってないけど、どんな人達なんだろう。


さて、目の前の問題をどうするか考えよう。雨をどう対処するか。雨に濡れるのを誤魔化したいんだよな。ゲームの中でまで濡れたくないってのもあるけど…雨合羽でもつくるか?いや、それじゃ意味ないんだよなー。なんか雨を弾くような…あ、そうか。雨を身体に当たる直前で弾けば良いのか。


早速試してみる。えーと、身体に薄く膜を張る感じで…うっ、空気まで弾いたらダメダメ!雨を弾く…ついでに泥水とかジュースとかスープとか…身体に掛かる水分は弾いて…あっ、これだと水も飲めないな?

えーと、俺を濡らそうとするものから身を護る…これだな!


『レインガード』


結果は上々。こうして雨の日でも自由に歩ける権利を得たのだ!発想の勝利!ふははははー!


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