8.不穏な気配

ドンドンドン!


激しくノックされるドア。夜更けまでのどんちゃん騒ぎに疲れていた俺は、すっかり寝過ごしていた。

ベッドから起きてドアを開けると、そこにはカゲが立っていた。いつもより真剣な顔をしている。どうしたんだ?


「あー、パイセン。この前の女の子に腕掴まれたやつ。アレの報告にGMさんが来てるッス。リビング来れますか?」

「お、おぅ…」


リビングへ行くと、真っ黒な甲冑に兜を外した状態のGMがお茶を飲んでいた。あの赤黒いエフェクトは出ていないようだ。てっきり男性だと思ってたんたが、金髪の女性だった。


「おはようございます…えーと?」

「あぁ、失礼しました。私はGMのロサリアと申します。この度はご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。」


GMロサリアが立ち上がって深く礼をする。慌てて止めると、椅子へ座ってもらった。その方が話しやすいからね。


「対象のプレイヤーは一ヶ月のアカウント停止処分としています。詳細は伏せさせて頂きますが今回の件以外にも違反事項がありましたので。復帰後もGMによる監視が入りますので、逆恨み等の心配はありません」

「そうなんですね、わざわざありがとうございます。…あの、ついでに聞きたいことがあるんですが良いですか?」

「はい、何でしょう?」

「ゲーム内設定で、他PCからの接触設定が出来たと思うんですが…俺のメニュー内にその項目が見当たらないんですよね」

「それは…申し訳ありません。すぐに精査致します。シオンさんは8名限定セット当選者ですね。しばらくお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

「はい、お願いします」

「接触設定以外では特に不具合はございませんか?」

「他…?今のところ無いかな…すいません、細かく見てないから気付いてないだけかもしれません」

「そうですか。では、また問題がありましたらご連絡下さい。お茶ごちそうさまでした。これにて失礼いたします」


そう言うと、GMはドアから外へ出ていった。まぁ、とりあえず返事待ちでいいのかな?ふーっと息を吐いて、椅子に腰掛ける。


『ご主人様、お茶をどうぞ』

「あぁ、ありがとうスレア」


はー、悪いことしたわけじゃないけどGMを目の前にすると緊張するな。街中で警察を見ると何故か緊張するのと同じか。しかし、カゲはなにやら難しい顔をしている。珍しいこともあるもんだ。


「あー、パイセン。ログアウトアラーム鳴りました?」

「いや、まだ鳴ってないな。そういや、結構時間経ってないか?あんまり気にしてなかったけど…」

「そうなんすねー。一旦ログアウト休憩したらどうッスか?俺もそろそろリア飯したいし」

「そうだなー。おれもログアウトして続きは明日にするわ。スレア達は自由にしててくれー」

『かしこまりました、ご主人様』


自室へ戻ってベッドに寝転がる。

ここで、眠るかログアウトするかの選択画面が出てくるシステム…だったハズだが。


「あれ?メニュー出ないな」


出るはずのメニューが出てこない。なんでだ?一度起き上がってから、もう一度ベッドに寝転ぶ。…でない。

数度繰り返すと、ようやくメニューが出てきた。焦ったぜ…あとで運営に不具合報告しておこう。


そうして、無事にログアウトした俺は、目にした時計を見て驚いた。ログアウト設定時間を大幅に越えてたからだ。なんだよー、設定ミスったかな?まぁいいや。とりあえず、風呂入ってメシにしよ。おっと、カゲからメッセージが来てるな。


『パイセン、ちゃんとログアウトしないとダメッスよー』


過保護だなー。俺のオカンか!適当に返事を打ってスマホを放り投げると、風呂に入った。はー、やっぱリアルが一番だな!そういや、風呂って付いてなかったっけ。明日は風呂でも作るか!どんな風呂にするか、楽しみだな〜。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る