2.いざ!ファンタジーの世界へ

「うわ…すご…」


ゲームの世界に降り立った俺の第一声がコレだ。周りでも「おー」とか「うわぁ」という声が聞こえる。やっぱ皆そういう反応するよな!思わずニヤニヤしてしまう。

そりゃそうだろう。目の前には大きな街の入り口。少し離れた所には森や山が見える。頬を撫でる風や草木の匂い。太陽の暖かさや眩しさ。足の裏に感じる地面のすべてが、この世界に居るという実感を与えてくれる。


街の入口はログインしてきたプレイヤーでごった返している。なので、先に街の周りをくるっと回ってみることにした。目に入るもの触れるもの、全てが新鮮に感じる。

石壁に沿って歩いていると、門が見えてきた。こっちは空いてるな…皆んな気付いてないのか?そんな事を思いながら門に近付くと、衛兵らしき人が声を掛けてきた。


「やぁ、この街に入るのかい?通行証は持っているかな」

「通行証?」

「そう。魔道具が反応しているから持っていると思うんだが、カバンの中身はみたかい?」

「あっ、まだです!えーっと…」


慌ててカバンを確認する。カバンに触れれば中身がわかるようになっているようだ。イベントリの確認画面が出てきた。なんか意外と色々入ってるな?まぁ、それは後にして…一覧の中に《ハジーメの通行証》の文字を見つけた。指で触るとカードが手のひらに現れる。


「お、それそれ。んじゃ、通行証をこの魔道具に差し込んで…この玉に手を当ててくれるかな?」

「えっと、これは?」

「おや、知らないのかい?これは街に入る人に犯罪歴が無いかやどんな人なのかを調べる魔道具さ。通行証が無ければお金を払って入ることになっているが…うん、問題ないね。通っていいよ。…そういえば、君は冒険者になるんだろ?」

「えっ、なんでわかるんですか?」

「ははっ、ここは冒険者を目指す者が最初に訪れる街だからね。冒険者ギルドはこの道を真っ直ぐ行けばわかるはずさ。詳しいこともそこで聞くと良い。それじゃ、ようこそハジーメへ!」


衛兵さんが道を開けてくれる。

石レンガの街並みがヨーロッパみたいだ。キョロキョロしながら歩いていたら、露店のおっちゃんに「お、冒険者になりに来たのかい?がんばれよ!」と店で売っている肉串を貰った。

お礼を言って串を頬張る。肉厚だが驚くほど柔らかい。濃いめのタレがよく合ってすごく美味しい!


「おっちゃん、これめっちゃ美味しいよ!こんな美味しい肉初めて食べた!」

「わっはっは!ボウズ、野ウサギ肉は初めてなのか?そんなに喜んで貰えるとおっちゃんも嬉しいぜ!…そうだ、ボウズはこれから冒険者になるんだろ?ギルドに登録したあとで来てくれねぇかな。頼みたいことがあるんだよ」

「むぐっ…わかりました!登録したらここに戻りますね」

「おぅ、頼んだぜ!」


礼を言って冒険者ギルドを目指す。同じような建物ばかりだから迷うかと思ったが、プレイヤーで賑わっているからすぐわかった。


「冒険者登録はこちらでーす!」


案内人の声が響き渡る。いくつかの列が出来ていたので、俺も適当な場所に並んだ。手続きは割りと早く終わるらしく、流れもスムーズだった。


「お待たせしました、冒険者登録ですね。それでは、通行証をここに差し込んでこちらの玉に手を乗せてください。…はい、良いですよ。通行証はコチラで回収します。そして、コレがギルドカードになります。今後はこのカードが通行証になりますから、無くさないで下さいね。それと、こちらの冒険者の心得をお渡しします。必ず目を通して下さい。では、次の方どうぞー」


流れ作業のようにギルドカードを受け取って受付を離れる。ギルドカードはイベントリに仕舞って、少し離れた所で冒険者の心得を読むとしよう。


なんか、いよいよって感じだなぁ!

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