ありえないんだから
家に帰って、カップラーメンを食べた私は、お風呂にも入ったし、もう眠ろうとしたんだけど、よく考えたら、明日はお昼まで眠るつもりなんだし、まだ、寝なくてもいいかな。
「じゃあ、今日は夜までゲームでもしてようかな」
そんな独り言を言って、私は寝るために立ち上がっていたけど、ゲーム機の電源を入れてから、ソファに座り直した。
そしてそのまま、コントローラーを持って、ゲームを始めた。
そうしていると、直ぐに時間が経って、私は眠気が抑えられなくなってきた。
「……もう、こんな時間だし、寝よ」
瞼が重くて、もうゲームはこれ以上出来ないと思った私は、そう呟いて、ゲーム機の電源を切ってから、歯を磨きに洗面所に向かった。
そして、歯を磨き終わった私は、直ぐに自分の部屋に向かって、ベッドに寝転がった。
……また、結愛さんから電話が掛かってくるかもしれないから、スマホの電源を切っておこう。
よし、これでいい。……じゃあ、おやすみなさい。
「……ん?」
そう心の中で思いながら、眠りについた私は、何か、物音がしたような気がして、目を覚ました。
「美月、起きた?」
……夢、か。
夢の中にまで結愛さんが現れるなんて、私、どれだけ結愛さんのことを考えてたんだろう。
……まぁ、考えてたとしても、恐怖の感情だと思うけど。
「美月?」
夢、うん。妙にリアリティがあるけど、夢に決まってる。
だって、昨日、ちゃんと合鍵を渡してもらって、時間を勧めてもらったんだから、結愛さんがここにいるなんて、ありえないんだから。
「えっ、み、みふき?」
私は夢だと思って、夢なら怖くもなんともないし、日頃の鬱憤を晴らすためにほっぺたを思いっきり引っ張ってやった。
こう見ると、やっぱり顔は普通に可愛いんだよね。……時間を進めないで、私を閉じ込めたりする性格は普通に怖いけど。
「みふき、いひゃいよ」
そうして、結愛さんのほっぺたを引っ張り続けていると、結愛さんは嬉しそうに、そう言ってきた。
本当は、少しだけ、本当に少しだけだけど、これは夢なんじゃないんじゃないかと思っていたんだけど、これで私は今のこと状況を夢だと確信した。
だって、普通に考えたら、ほっぺたをこんな風に思いっきり引っ張られたら痛いし、こんなに嬉しそうになんてできないと思う。
だから、今のこの状況は全部夢で、夢の中だから、この結愛さんは痛みを感じてないんだと思う。
……私、こんな可愛い女の子と、キス、したん、だよね。
結愛さんのほっぺたを引っ張っていると、急に、そんな考えが頭の中に浮かんだ。
無理やり、仕方の無い状況、だから、ノーカウント、だったとはいえ、したことには変わりは無い、と思う。
……別に、結愛さんのことを好きな訳ではないし、そもそも、私は同性は好きになれない。
……でも、年頃な女の子なわけで、あの時の結愛さんの唇の感触は、鮮明に残ってるんだ。
したい訳じゃない。なんなら、普通に嫌だと思う。
でも、夢の中だし、現実では、一度、しちゃってるんだから……
そう、思ってしまった私は、夢の中とはいえ、結愛さんに、もう一度、キスをした。
学校一の美少女から告白された私は、同性を好きになることは出来ないと言って家に帰って眠った……はずなのに、何故か告白される日に時間が巻き戻っていた シャルねる @neru3656
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