怖いとかを通り越して

 ファミレスを結愛さんに奢ってもらった後、私は結愛さんに連れられて、ゲームセンターにやってきた。

 まぁ、連れられてって言っても、ゲーセンは私も好きだし、そもそも、結愛さんのことを知るって決めてるんだから、抵抗する気なんてなかったんだけど。


「で、何するの」


 私的には、UFOキャッチャーとかをしたいけど、何かを取ったとしても、どうせ戻るんだし、なんでもいい。

 そう思って、そう聞いた。


「UFOキャッチャーじゃないの?」


 すると、結愛さんは何を当たり前のことを、と言った感じで、そう聞いてきた。

 ……私が好きだから、って訳じゃないよね。……結愛さんが、好きなんだよね。


「……どうせ取っても、時間を戻すんでしょ?」

「美月が私と付き合ってくれて、結婚してくれるって約束してくれたら、戻さないよ?」


 じゃあもう戻ること確定じゃん。

 ……いや、結愛さんの欲しいものを取ってあげれば、それが欲しくて、時間を進めたりするんじゃないかな。


「何か、欲しいものとか、ある?」


 だから、私はそう聞いた。


「美月」

「私はものじゃない」


 真顔でふざけたことを言う結愛さんに対して、私はそう言った。

 普通に考えれば、分かると思うけど、結愛さんは普通じゃないんだし、もっと具体的に言っておくべきだった。


「えー、じゃあ、美月の下着とかかな」

「…………UFOキャッチャーで取れるもので言って」


 なんか、もう怖いとかを通り越して、頭が痛くなってくるな。

 欲しいものある? って聞かれて、普通、人の下着とか答える? 答えないでしょ。


「えー……あっ、あれ、かな」


 ? 直前まで、特に無いって感じだったのに、結愛さんは急に、一つのUFOキャッチャーを指さして、そう言ってきた。

 私は結愛さんが指を指した方を見ると、ハンカチのUFOキャッチャーがあった。

 特に何か可愛い柄な訳でもなく、本当にシンプルなハンカチ、だよね。……え、ほんとにあれなの? もしかして、適当に言った、とか? 


「美月、だめ?」

「……別にいいけど、取っても、どうせ、無くなるよ」

「……取ってくれたら、今日は進めるからさ」


 ……そんなに、あのハンカチが欲しいのかな。……まぁ、いいや。時間を進めてくれるなら、取ってあげるか。

 一日だけとはいえ、塵も積もればって言うし。

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