決意したんだ
「もう、着いたから、離れて」
ファミレスの前まで、結愛さんに腕を取られながら連れてこられた私は、ファミレスの前に着いた瞬間、そう言った。
ここまで本当に人目に晒されたから、早く、離れて欲しい。
ただ、手を繋いでいるだけならともかく、見た目だけならかなりの美少女に腕に抱きつかれながら歩いてるんだから、目立たないわけがなかった。
「なんで?」
「いや、だから、もう、着いたから」
「うん。着いたよ? それで? なんで離れなきゃダメなの?」
……忘れてた。結愛さんが話の通じない人間だということを。
なんて言ったら、離れてくれるだろう。……いくら話の通じない人とはいえ、何か、あるはずだ。
「何も言えないの? じゃあ、行こっか」
そう考えていると、結愛さんに腕を引っ張られてファミレスに入らされた。
そして、店員さんに案内されて、私たちは席に座った。
一瞬、結愛さんは私の隣に座ってくるのかと思ったけど、そんなことはなく、私の腕を離してくれて、私の前に座っていた。
「ナポリタンでいいよね?」
「え、う、うん」
思わず頷いちゃったけど、なんで、私の頼もうとしたやつが分かったの?
……私、友達いないし、一人でファミレスなんかに行くタイプでもない。
だから、仮に結愛さんが私のストーカーをしてようと、私が頼もうとしたものが分かるはずがない。
なのに、なんで、分かったの?
そう聞きたかったけど、私はなんだか怖くて、それを聞くことは出来なかった。
そうしていると、平日で人も少ないからか、すぐに頼んだナポリタンが二人分運ばれてきた。
「じゃあ、食べよっか」
「……う、ん。……いただきます」
今日は結愛さんを知るって決めたんだ。
改めてその事を思い出して、私はフォークでナポリタンを食べ始めた。
「美月、美味しい?」
「……まぁ、美味しいけど」
普通に、ファミレスに出てるやつだし、庶民の私からしたら、美味しくないわけが無い。
「知ってる」
そう思って、そう言うと、結愛さんは笑顔で、そう言ってきた。
……だから怖いって。……なんで、知ってるの。……さっきは怖いと思って、聞かずに逃げたけど、よく考えたら、私は結愛さんのことを知るって決意したんだ。
これを聞かないわけにはいかない。
「なんで、知ってるの」
だから、私は勇気をだして、そう聞いた。
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