やっぱり、同性は好きになれない
キスをした。してしまった……いや、されてしまった。……それも、同性に。
正直、あまり実感が湧かない。いや、唇にはまだ感触が残ってるし、確実にキスをされたんだけど、どうしても、同性相手だからか、実感が湧かない。
「ど、どうだった? 美月」
そう考えていると、結愛さんは顔を赤らめながら、嬉しそうな雰囲気を漂わせながら、そう聞いてきた。こうして見ると、普通の女の子みたいだ。時間を巻き戻して、あんなことを言ってくる人とは思えない。
ただ、結愛さんには申し訳ないけど、やっぱり、私は同性は好きになれない。
キスをされて、ドキドキはしてる。でも、これは結愛さんを好きって言う感情じゃない。
「やっぱり、同性は好きになれない」
だから、結愛さんに諦めてもらうために、私はそう言った。
「な、んで? ……嘘、だよ」
「嘘じゃない。同性は好きになれない」
結愛さんの目を見ながら、私はハッキリと、そう言った。
「だから、もう、私の事なんて諦めて、普通に時間を進めてよ」
「……今日だけ、今日は、進ませる。……でも、私はもう美月を諦めない。次は、私と付き合って、結婚してくれるって言ってくれるまで、絶対、進めないから」
結愛さんは泣きそうな顔になりながら、私にそう言ってきた。
なんで、そこまで私なんかが好きなの? ……分からない。
分からないけど、少なくとも、私は絶対に結愛さんの気持ちに答えることがないことは分かる。だから、諦めて貰うために、何かを言おうとした。
その瞬間、結愛さんの唇で、私の唇を塞がれた。
咄嗟の事で、私は結愛さんの体を押し返したんだけど、この前みたいに、押し返すことが出来ずに、そのままキスをされた。
「一回だけ、なんて言ってなかったよね? 美月、好きだよ。……私と結婚して」
「……ごめんなさい。……帰って」
無理やりキスをされて、怒ろうと思ったけど、確かに、一回だけとは言ってないし、言われてもなかった。
かなり無理やりだとは思うけど、ここで怒って、せっかくキスまでしたのに、明日に時間を進めて貰えないなんてことになったら、私の努力が水の泡になっちゃうから、結愛さんの告白を断って、帰ってほしいと言った。
「…………分かった。今日は、帰る。私も、美月とのキスにドキドキしてるし。……あ、一応言っておくけど、私も美月がファーストキスだよ」
「……女の子同士なんだから、ノーカウントって話だった」
「今の美月からしたらそうかもだけど、私にとっては紛れもない好きな人とのファーストキスだよ」
本当に、分からない。なんで、こんなに私の事が好きなのか。
……どこかで会ったことがある? いや、ありえない。……性格はどう考えてもやばいけど、見た目はこんなに可愛いんだから、忘れるなんてありえない。
私は思い切って結愛さんに私を好きになった理由を聞いてみようと思ったけど、そんなことをして私が結愛さんに興味を持ったと思われたら、結愛さんが私を更に諦めてくれなくなるから、やめた。
「早く帰って」
そう考えながら、まだ目の前にいる結愛さんにそう言った。
すると、結愛さんは一瞬、ショックを受けたような顔をしたけど、私に笑みを浮かべてきて「またね」と言って帰って行った。
……なんか、あんな表情されたら私が悪いみたいになるけど、あの人、普通に不法侵入で、犯罪者だからね。
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