まさか、ほんとに来たの?
ソファに寝転がって、スマホを弄っていると、急に、家のインターホンが鳴った。……いつもは、鳴らない家のインターホンが。
まさか、ほんとに、結愛さんが来たの?
ありえない。……ほんとはそう思いたい。でも、いつも起こってないことが起きてるってことは、時間が巻き戻る前の記憶があるってことだから、結愛さんが来たとしか考えられない。
そう理解した瞬間、私はソファの上で丸くなって、息を潜めた。
大丈夫。カーテンも閉めてあるし、外から、私が中にいることなんか、分かりっこない。……仮にまた、電話が掛かってきたとしても、音を切ってあるから、大丈夫。
そう思って、ソファで息を潜めていると、また、インターホンが鳴った。
そしてそのまま、案の定、さっきと同じ番号……結愛さんから電話が掛かってきた。
私は電話が掛かってきてるスマホを放置して、息を潜め続けた。
時計の音が無駄に大きく聞こえる。
そうして、時計の音を聞きながら、息を潜め続けていると、インターホンが鳴らなくなって、電話も切れていた。
「……帰った?」
私がそう呟いた瞬間、家の鍵が開く音がした。
え? なんっ、なんで!? なんで、鍵が開いたの? ど、どうしよう。入ってくる。逃げないと。……でも、どこに? とう、リビングから出れない。だって、リビングから出たら、家に侵入してきた結愛さんに見つかる。……でも、このままこうしてても、結愛さんに見つかる。
そう思って、足音を立てないようにして、近くにあったクローゼットの中に入って、小さくなった。
私がクローゼットの中に隠れるのとほぼ同時に、リビングの扉が開いた。
「あれ、ほんとに居ないのかな……あっ、美月、いるんでしょ? 出てきてよ」
な、なんで……さっきまで、そんな確信がある感じじゃなかったのに、急に、確信を込めて、そう言ってきたんだけど。……いや、そうやって、確信を込めて言えば、私が出てくると思って言ってるだけで、ほんとは私がこの家にいる確信なんてないはず。
「ねぇ、いるでしょ美月。……だって、ここにスマホが置いてあるんだもん。美月、ゲームとかするよね? スマホを置いて、出かけるわけないもんね? ほら、出てきてよ」
完全にはったりだと思って、息を潜め続けていると、結愛さんは隠れている私にも声が聞こえるように、大きい声でそう言ってきた。
あ、スマホ! ……急に鍵が開いて、結愛さんが入ってきたから、びっくりして、忘れてた……
でも、不法侵入をしてくるような人に出てきてなんて言われて、出ていくわけが無い。
「……ふーん。出てこないんだ」
そうしていると、私の返事がないことで、出ていく気がないことを結愛さんも察したのか、呟くようにそう言ってから、クローゼットを開けてきた。
「見つけた」
そして、クローゼットを開けてきた制服姿の結愛さんと目が合って、笑顔で見下ろされながらそう言われた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます