第70話 心の声を消そう!
「浮気の波動って……」
「
「ま、まぁね」
「私、自分の思いが叶ったら全然来なくなっちゃった。反省、反省」
「へ?」
白雪が俺の隣までやってきて手を合せる。
「
「そこっ! お願い事が聞こえてるから!」
「聞こえるように言ってるんだもん」
白雪はお参りが終わると、俺の腕に組みついてきた。
「
(帰ろ)
やっぱり普通に心の声が聞こえてきている……。
なんて使えない神様なんだ! 全然言うこと聞いてくれないじゃん!
……そんなこと言ったら、今度は呪われそうだけど。
それにしても、やっぱり今回の心の声の原因は俺と白雪だけじゃなさそうだ。
となると、心の声が聞こえてくるもう一人が原因なのかな?
でも、どうやったら心の声って消えるんだろう。
物理的にこの神社、破壊したら聞こえなくなるかな?
「……」
できるわけないけどさ!
そんなことをしたらマジで祟られてしまう。
「ふわぁ~」
(眠い……)
「あっ、ごめん付き合わせちゃって」
「んーん、私が気になっただけだから。でも、夜一人で出て行くのは怪しいよ」
(急にどうしたんだろ?)
「お、お願いごとがしたくなってさ」
「じゃあ今度から一緒にしよ」
「うん、そうする」
今日はそれ以上、白雪に追及されることはなかった。
……明日はちょっと朝陽にも聞いてみようかな。話かけられるいい話題になるかもしれないし。
※※※
次の日
「おはよう朝陽」
「おはよっ」
朝陽が朝から勉強している。どうやら朝活継続中のようだ。
「随分、必死ですなぁ」
「うるさい、絶対に焼肉奢らせてやるんだから」
「昼メシって言ったよな!?」
良かった! いつも通りの反応をしてくれた。
「おはよう朝陽」
「おはよ、白雪」
「元気出してね」
(朝陽、大丈夫かなぁ)
「あんたに言われるの一番ムカつくんですけど!」
(え、遠藤め……! 白雪に言いやがったなぁ!)
ぎろりと朝陽に睨まれた。
や、やっぱりどちらの心の声も聞こえてきている。
「
(私からちょっと歩み寄ろう…)
「そんな風に気を使われるのが一番気まずいから!」
(アホかっ! 好きだった男の彼女になんて相談できるか!)
「そんな風に言わないでさ。私たち、一応友達でしょう?」
(悔しいけど、同じ男の子を好きになっちゃったから……。そこだけは認めてあげる!)
「え?」
(わ、私と白雪が友達……?)
「ダメ?」
(絶対に! ぜっーたいに
な、なんか水面下でバチバチやってんな。
表向きの会話は女の子同士で良い話してるっぽいんだけどさ……。
「ふんっ、私が友達になってあげるって言っているのに!」
(それに
「あ、あんたはどこ目線の誰なのよ!」
(あ、あの白雪がこんなこと言ってくるなんて……)
「うーん……鈴木目線の白雪?」
(どういう意味?)
「あっ、その返し遠藤に似てるかも」
(この似た者、カップルめ!)
「そう? ありがとっ」
(やった! 褒めてもらえた!)
「褒めてない!」
(白雪って本当に変わったなぁ)
うぅ、やっぱり声×2同士の会話は頭がぐちゃぐちゃするよぉ……。
なんとか会話に混ざらないと。
「ね、ねぇ、朝陽って学校近くにある神社分かるよね?」
「うん?」
(なんだ、いきなり)
「前、夜に会ったさ……」
俺がそう言うと白雪が「はぁ!?」っと眉間にしわを寄せた。
し、しまったぁああ! これは白雪が知らない話だった!
ここで白雪に気を取られると全然進まなくなりそうなので、とりあえず聞きたいことを言ってしまおう!
「朝陽って、あそこでなにをお願いしてたのかなぁと……」
「忘れた。なによ、今更」
(あのときは遠藤に私の気持ちを知ってほしいなって思ってたんだっけ……)
……さすが、ネタバレ野郎の心の声。ちゃんと答えを教えてくれた。
「も、もしかして! 私に内緒の話!?」
「違うからっ! でも、ちょっとだけ白雪は大人しくしてて!」
後ろで白雪がぎゃーぎゃー言っているが、俺はそのまま話を続けた。
「……あのさ、もし今日時間あったら一緒にその神社にいかない?」
「は? なんで?」
言いづらいなぁ……。
けど、ここで本題に入らないといつまでも進展しない。
心の声を消してもらうために、ちゃんと言わなければ――。
「俺さ! ずっと朝陽の心の声が聞こえててさ!」
「馬鹿?」
(なに言ってんだこいつ)
すかさず朝陽にツッコまれた。
「
(なに言ってんだこいつ)
白雪が呆れた様子で俺のことを見つめてくる。
こういうときに心の声ダブるんじゃねーよ。
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