第66話 デレデレ彼女は俺に言う

てる君、どうしたの?」


「白雪!?」


「?」


 白雪に声をかけられて異常に反応をしてしまった!


 こ、こんなことが知られたら、また毒吐き白雪姫が地獄の底から復活してしまう!


「……っ」


てる君?」


「白雪、放課後ちょっと相談したいことがあるんだけどいい?」


「急にどうしたの?」


 こんなことを知られたらじゃない……よな。


 ここに物理的? に隠し事できないやつがいるのに、それは違うだろう。


 俺は白雪に隠し事をしたくない。白雪を悲しませたくない。


 心の声が聞こえたからとは言えないけど、なんとかボヤかして白雪に相談しよう。


 これは俺たちの問題なのかもしれないのだから!


 ……本当は、いつか白雪にも心の声が聞こえているって言わなきゃいけないのかも。


「まぁ、いっか。どうせうちに来るもんね」


「うん」


 白雪が何気なくそう言った。


 だが、その言葉をクラスメイトたちは聞き逃していなかった。


「えぇえええ! 遠藤、もう白雪の家に行ってるの!?」


「う、うん?」


「お前ら、二人きりでなにしてんだよ!」


 男子三人組が興味しんしんになっている!


「なにって勉強だけど……」


「なんの勉強だよ!?」


「期末」


「なわけないだろう!」


「いやいや」


 あっ、絶対にシモ方向の話を期待されている。


 仮にそうだとしても絶対に言わないけどな。


 白雪のああいう姿は絶対に誰にも見せたくない。白雪のそういう話をするのなんて死んでも嫌だ。


「だとしたら?」


 アホバカアンポンタン白雪が、何故かみんなのことを挑発し始めた。


「恋人同士だもん、そういうことするに決まってるじゃん。ね、てる君?」


「白雪、今すぐ黙れ」


 こ、こいつめ……!


 隣に、爆弾持ちがいることを知らずにそんなこと言いやがって!



(もやもやもやもや)



 ほら見ろ! 朝陽が頭から煙が出そうなくらいもやもやしている。


 できることなら、朝陽のことは傷つけたくないんだけど、俺!


「はぁ、朝からご馳走さまって感じだな」


「本当だなぁ、まさか白雪がこんなにアホになるとは思わなかったよ」


 ついには、他のみんなにもアホだと言われるようになってしまった。


「アホは言い過ぎでは!?」


「あっ、遠藤がかばった」


「ぐっ」


 自分で言うのはいいんだけど、人に言われるとかなりモヤっとするな。


 俺は俺で、かなり独占欲が強いのかもしれない。


「私たち仲良しだもんね! ねっ、てる君!」


「あぁあああ! クラスで引っ付くな!」


 やっぱりアホだ! 白雪が俺の腕に組みついてきた! 


 隣の女子の爆弾が今にも爆発しそうになっているのがひしひしと伝わってきてしまった。




※※※




「で、相談ってなーに?」


 放課後になり、白雪の家にやってきた。


 白雪はかなり気になっていたらしく、家につくとすぐさま俺にその話題に触れてきた。


「笑わないで聞いて欲しいんだけどさ……」


「うん、笑わない」


「俺、告白されるかもしれない」


「殺す」


「確かに笑ってはいないけど殺意がひどい」


 白雪の目つきが厳しいものに変わってしまった。


「だから、白雪にはちゃんと言っておこうと思って」


「どうせ朝陽でしょ? 私もそんな感じしてたもん」


「えぇええ!? そうなの!?」


「女の勘だけどね」


 女の勘恐るべし。白雪もなにかを察してくれていたようだ。


「私、てる君のことは信じているからそれ以上は聞かないよ」


「え?」


「それにしても、てる君は馬鹿正直だなぁ。そういうことって彼女には言いづらいでしょう」


「俺、白雪に嘘つきたくないもん」


「んふふ~」


 俺がそう言うと、白雪が満足そうに微笑んだ。


てる君が私のこと好きな気持ちは伝わってきてるから大丈夫だよ」


「ありがたや~」


「私があのテロリストを振ったみたいに、けちょんけちょんに振ってきてね」


「相変わらずテロリスト扱いされる先輩が可哀想……」


 良かったぁ、下手をすれば激昂されると思っていたけど、白雪は普通に俺の話を聞いてくれた。


「……頑張ってね、てる君」


「うん」


「嫌いじゃない人を振るのは本当に大変だと思うから」


「そういう白雪は今までどうだったの?」


「うーん、私は大好きな人の前で告白されている方がキツかったかも」


「……」


「なーんか、運悪く、誰かさんに見つかっちゃうからさ。あっ、それは今日もか」


 そういえば、よくチャリ置き場で白雪が告白されているのを目撃していたな……。


 それにしても大変かぁ……。


 白雪の言う通り、好意を持ってくれた相手を振るのって確かにしんどいかも。


 ……でも、もし朝陽が俺にそうしてくれたら、ちゃんと俺がことを伝えよう。


 それが朝陽へのお礼になることを祈って。


「本当は泣きわめきたいけど、素直に言ってくれたから許してあげる」


「や、やっぱり!? 通りで聞き分けがいいなと思ったよ!」


「私もてる君の彼女として成長しないとね。怒ってばかりだと嫌われちゃうから」


 あっ、分かった。


 これは朝、朝陽に言われたことを気にしているな。


「俺、ヤキモチ焼いてくれた方が嬉しいよ!」


「ホント?」


「うん、だから自然体の白雪でいて欲しいな」


「よし、じゃあ朝陽のことぶっ殺してくるね」


「前言撤回。致死量の毒をぶっこむな」

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