第61話 付き合うともっと好きになる 2
――脱衣場からしゅるしゅると衣擦れの音が聞こえてくる。
「
「分かってるよ!」
お互いに必要以上に大きな声が出てしまっている。
湯船につかること数分、俺は白雪が入ってくるのを待つことになった。
だって、断る理由がないよっ!
俺だって男だから彼女の裸にはすっごく興味あるわっ!
「ふぅ……」
リレー前の緊張なんて忘れてしまうくらい、胸がドキドキしている。
小さい時にお風呂に一緒に入ったことってあったっけ……? よく覚えてないや。
「私が良いって言うまで絶対に目を開けちゃダメだからね!」
「だから分かってるって!」
不思議だなぁ、目を閉じると耳がすごく良くなる気がする。白雪の服を脱ぐ音がしっかりくっきり聞こえてくる。
目に毒とは言うけれど、これでは耳にも毒だよ……
あいつは口から毒も吐くけど。
お風呂の折れ戸の向こうには、裸になっている白雪がいると思うと、とても不思議な感覚がする。
海に家出したとき以来かな……。
こんなに白雪を――。
「は、入るね……」
「う、うん」
折れ戸が開く音がした。白雪の声がぐっと近づく。
「ま、まだ目を開けちゃダメだからね……」
「うん」
ピタピタと白雪が裸足で歩く音がする。
「
「あ、当たり前だろ……」
「ま、まぁ私もなんだけど……」
白雪の声が震えている。かなり緊張しているようだ。
「あっ、体洗ってからじゃないと湯船に――」
「いいから入ったら?」
「う、うん……」
音だけで変な気分になってしまっている。
前にも白雪に言われたことがあったが、俺って変態なのかも……。
「そ、それではお邪魔しまーす」
「ど、どうぞ~」
白雪が片足を湯船に入れた。
白雪の足と俺の足が触れ合った。
「ひゃん」
「変な声出さないでっ!」
「だ、だってぇ……」
初めての肌の直接的な感触にびっくりしてしまった。
「
「う、うん……!」
白雪が湯船に入ってきた!
白雪が身を沈めると気配と同時に、湯船からはゆっくりお湯が溢れていく。
「わ、私、頭が真っ白になりそう」
「俺はとっくになってるから!」
うちのお風呂なんて特別広いわけではないので、
白雪は多分、向かい合う形で入ったのかな?
つま先のあたりに多分、お尻の感触が――。
「……」
「……」
「えっ、目開けちゃダメなやつ!?」
「見たいの?」
「見たい!」
「じゃあ見ていいよ……」
「うん」
ようやく許可が下りたので、ゆっくりと目を開いた。
「……」
「……」
「……」
「……なんか言え」
思いっきりフリーズしてしまった。
前はタオルで隠しているが、裸の白雪が目の前にいる。
なまめかしい白い鎖骨や、胸のラインがはっきり見えてしまっている。
のぼせたように頬は真っ赤になっていて、上目遣いで俺のことを見ていた。
「エロい」
「そ、そこは綺麗とかじゃない!?」
「ご、ごめん! 思ったことが口から出ちゃった」
「もぉ……」
白くて丸い肩も、柔らかそうな二の腕も子供の頃と全然違う。
そんなことは白雪が中学になってから分かっていたはずなんだけど……。
「
「そう?」
「うん、ごつごつしてる」
「白雪はぷにぷにしてそう」
「ぷにぷに言うな」
お互いにそんな恥ずかしい感想を言い合ってしまった。
「……
「ちょっとだけ」
「じゃあ足伸ばしていいよ」
「白雪に当たっちゃうよ」
「別にいいよ」
緊張が少しほどけたのか、白雪がニコっと俺に微笑んだ。前髪が濡れていて、益々煽情的に見えてしまう。
「じゃあ、ちょっとだけ」
白雪の言葉に甘えて足を伸ばした。
白雪の太ももが俺の足と触れ合う。つま先からはさっきよりもはっきりとお尻の柔らかさが伝わってきてしまった。
「えへへ」
「こ、この状況で笑っているだと!?」
「私たち、やっと恋人同士っぽいことできたね」
「この前、指輪買ったじゃんか」
「それはそうだけど、これはちょっと違うでしょ!」
分かってるよ! 白雪の言いたいことは全部分かってる!
……男女が付き合うってことは、どうしても性のこととは切っても切り離せない。
白雪の心の声はずっと前からそのことを意識してくれていた。
「今日の
「あ、ありがと」
「私、そのままの
「白雪……」
「えへへ、付き合うともっともっと好きになっちゃうね。私、付き合う前より
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