第47話 一方通行友情
いつもの帰り道をトボトボと歩く。
あの近藤朝陽を怒らせた男として、俺はクラスで更に有名人になってしまった。
白雪の件といい、俺は今、一世を風靡する男になってしまっている! もちろん良くない意味も含めて!
その後、朝陽と会話をすることなく一日が終了。険悪な空気は一日中消えることはなかった。
「くぅ……」
周りの反応もショックといえばショックだが、そんなことよりも朝陽にそこまで言わせてしまったことがショックだ。
誰かとぶつかってしまうのは白雪以外だと初めてかも。
頭が重い、足が重い、手が重い。
白雪で毒耐性はついていたはずだが、他の人の毒はまた別口のダメージを受けてしまう……。
「朝陽を怒らせるって相当だよね」
ぐさっ。
隣を歩く白雪が俺の心臓を一突きしてきた。
黒歴史を量産したといえど、白雪のときは“思ったこと”を言ってしまっても、うまくいくほうが多かったと思う。
でも、今回はそうはならなかった――。
よく考えたら心の声とか関係なしに、思ったことをすぐに口走るやつってクラスに一人はいたよな……空気が読めないみたいなやつが……。
……。
……。
って、傍から見たら、まさにそれが俺じゃねーか!
「理由聞かなくても、
「白雪ぃ……」
その言葉は今の俺に効くからやめてくれ!
自分の気持ちを伝えたからって、相手が好意的に受け取ってくれるとは限らない! そんなの当たり前だ!
心の声が聞こえていたから、朝陽の気持ちを分かったような気になっていた。
「求ム、近藤朝陽との仲直りの仕方」
「無理じゃない?」
ぐさっぐさっ。
痛いよぉ……心臓を必中の槍でぶっ刺されているよぉ……。
容赦なく白雪にそう言われてしまった。
「そんなこと言わずにさぁ……」
「だって
「俺だけの問題じゃない?」
「朝陽の内面の問題もあるでしょ。それに私としてはそのまま喧嘩していてほしい」
「性格悪っ!」
な、なんていうことを言ってくるんだこいつ!
白雪がなにかを察したみたいな空気を出している。
「そんな性格が悪い私のことを好きだって言ったのは
「その通りです」
ダメだ、白雪は相談相手としてポンコツすぎる。
……とりあえず明日はすぐに朝陽に謝ろう。
「とりあえず謝るのだけはやめたほうがいいと思う」
「俺の心を読んだ!?」
「顔にそう書いてあった」
白雪も白雪で会話はしてくれているが、さっきからずっと面白くなさそうな顔をしている。というか、普通に機嫌が良くない。
「もしかして白雪怒っている?」
「ちょっとだけ」
「そりゃそうだよな……彼氏が教室で揉めているところなんてみたら……」
「違ーうっ!」
俺の言葉を遮って、白雪が力いっぱい俺の頬をつまんできた!
「このハゲーッ! 鈍感! 朴念仁!」
(あれで気づいていないってどんだけアホなの!?)
痛い痛い! ダブルで罵倒やめて!
ただでさえ頭がぐちゃぐちゃになっているんだから!
「痛い! ハゲてない!」
「脳みそはつるつるでしょうが!」
(どこからどう考えて朝陽はあんたのこと好きだろうがー!)
「誰が上手いことを言えと! ……って、えっ?」
白雪からとんでもない心の声が聞こえてきてしまった。
「なによ、そんなにつるつるに反応して」
「い、いや……」
「ふんっ、この馬鹿ちんが! 彼女の前でそんな話をすること事態に反省しなさい」
「女の子がちんとか言わない!」
「うるさい!」
ようやく白雪が俺の頬を解放した。
……え? 朝陽が俺のことを?
ははっ、まさかそんなことは……。
「……」
そんなことは――。
「……」
「どうしたのよ、急に考え込んで」
「いや……」
ズキっと胸が痛くなる。
だって朝陽は俺のことを友達って――。
「片方だけが思っていても“恋”にはなっても“恋愛”にはならないじゃん。それと一緒じゃん、友達なんて」
白雪の火の球ストレートが俺のどてっ腹に直撃する。
こいつの正論は破壊力がありすぎる。
確かに、片方が友情でも、もう片方が違う感情を持っていたら、友達とは違う関係になってしまう気がする……。
白雪のおばさんのときは出ている言葉が全てではないと思っていたのに、どうして朝陽にはそう思わなかったのだろう――。
「鈴木さん、ちょっといい?」
道路の交差点に差し掛かったとき、見たことのある男性が白雪に声をかけてきた。
「はい?」
「今、二人だけで話せない?」
あ、あれは!?
前に白雪に告白していたバスケ部の先輩じゃんか!
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