第49話 心の声バトル!
次の日の朝。
今日の天気は曇り、俺の気分も曇り。
学校に行くのが憂鬱だ。朝陽に会うのがとても憂鬱だ。
……が! そんな気持ちは表に出さない!
今日もいつも通り朝陽に挨拶をして、いつも通り過ごそう!
「おはよ! 朝陽!」
「げっ、遠藤」
「“げっ”はないだろう! “げっ”は!」
教室に着くと同時に朝陽に挨拶をする。
勇気を出して良かった。思ったよりも普通の反応が返ってきた。
「朝陽、昨日は
「白雪!?」
「
まさかや、まさか、白雪から援護射撃が飛んできた。
「ごめん、私も謝ろうと思ってたんだ」
(むぅ、白雪からそれ言われるのはちょっとしゃくだなぁ)
「ほんと?」
(
「私もいきなり大きな声をだしてごめんね」
(大体、なんで白雪がしゃしゃり出てきているわけ!?)
「ううん、そんなことないよ。朝陽も思ったことあったら吐き出してね」
(
女子の心の声、とても怖い。
思っていることと全く別のことが口から出ていやがる。
それでいて、表面上はとても和やかなものだから尚更恐怖でしかない。
「こ、近藤、昨日はごめん」
謝らないほうがいいと言われていたのに、結局流れで謝ることになってしまった。
「うん、私もいきなりごめんね輝明」
(はぁ? なんでいきなり名字呼びになっているわけ!?)
「これからも朝陽とは仲良くしたいと思っているのは本当だから」
「うん、私もそう思っているよ遠藤」
寄せると離れるし、離れると寄ってくる……。
まだ、相当怒っているなこれ。
「
(なんで白雪にそれを言われなきゃいけないのよ! 別に怒ってないし!)
「わ、分かってるって」
(だから怒ってねーし!)
朝陽にしては珍しく強い言葉が出ている。
(なによ、私、昨日は寝れなかったのに二人とも普通にして……)
こ、こういう心の声が聞こえてきちゃうから放っておけないんだよなぁ。
「も、もう少しで体育祭だね」
「遠藤って、そういうの楽しみにするキャラじゃないじゃん」
「うっ」
話題に困ってそんなことを言ったら、鋭すぎるツッコミが飛んできてしまった。
※※※
午後、ホームルームの時間がやってきた。
「みんな~、体育祭はなに出たい?」
教壇の前には、委員長の亮一君と
「朝陽は走る系ね」
「なんでよ!」
「足早いから」
へぇ~、朝陽って足が速いんだ。
わいわいと話をしながら、クラスみんなの種目が順調に決まっていく。
俺はどうしようかなぁ……。
「遠藤はなにでたい?」
そんなことを考えていたら亮一君に声をかけられた。
「あんまり目立たないやつで」
「じゃあリレーな」
「人の話、聞いてた!?」
「少し嫌がらせをしたくなって!」
亮一君が悪戯小僧みたいに笑っている。どこか憎めない顔をしている。
嫌がらせって間違いなく白雪のことだよな。
……。
……。
――あれ?
ある違和感に気がついてしまった。
そういえば白雪の競技がまだ決まっていない。
いつもなら白雪を中心に決まっていくのに。
「……」
(早く帰りたいなぁ)
この違和感に白雪自身は全く気がついていない。ただ窓の外を見ながら、時が過ぎるのを待っている。
いつもは大体、
多分、俺のせいだ。
俺なんかと付き合ったから、白雪がみんなから距離を取られるようになってしまった……?
「……リレー出るよ」
「おっ」
「亮一君! 俺、リレー出るから!」
みんなが意外そうな顔で俺のことを見ている。
くそぅ、見直させてやる。これでもそんなに足遅くないんだぞ俺。
「あっ、まだ白雪の競技が決まっていなかった!」
亮一君が白雪に声をかけた。
亮一君の声に、
多分、亮一君は普通にしているだけ……だよな?
だとすると、白雪の取り巻きをやっていた女子連中がおかしな感じになっているのか……。
「私、余ったやつでいいよ」
「うーん、でも白雪は戦力になるからなぁ。今回の体育祭はクラス対抗らしいし」
え? そうなの? 全然、体育祭の要項読んでいなかった。
もしかしてリレーって責任重大なやつ選んじゃった!?
「じゃあ、うちのクラスは近藤と白雪で障害物競争を取りに行くか」
……はい?
その二人で障害物競争出るの!?
「私は別にいいよ~」
(朝陽とー!? 絶対に負けられないじゃん!)
早速白雪が対抗意識を出している!
「私も別にオッケー! けど、あんまり期待しないでね!」
(白雪とか……! なんだか燃えてきた!)
お前もかーい!
隣にいる朝陽からもメラメラとしたものを感じた。
これクラス対抗だって言ってたじゃん! 同じクラス同士で争ってどうする!?
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