第44話 第二の心の声!
ど、どういうこと!?
なんで急にいきなり二人の声が――。
(
(はぁ、なんだか全然学校が楽しくないや)
(やっぱり朝陽って油断ならない気がするんだよねぇ……)
(今日は早く帰ろ。なにも考えたくない)
(今度の休み、デートに誘おうと思ってたのに!)
(白雪ってあんな顔するんだ……。前よりすごく楽しそう……)
がぁあああああ! わけ分からん!
聖徳太子スキルを上げないと、こんなの処理できないよ!
「遠藤! 今日、どこかに遊び行かない?」
これ以上、声を増やすなぁあああ!
こんなときに限って、誰かに声をかけられてしまった。
「なんだよ、顔色が良くないぞ」
「亮一君……?」
まさかのまさか! クラスナンバーワン陽キャの亮一君に声をかけられてしまった。
「だから亮一でいいって。今日、男子連中で遊びに行くんだけどどう?」
「えっ、急にどうしたの?」
「そりゃあ……」
亮一君がチラッと白雪のほうを見る。
「あの難攻不落の白雪姫をどうやって落としたのか聞きたくてさ!」
「難攻不落って……」
「男子の間では有名だっただろう! 難攻不落! 名前は白いのに心は
「あいつ、そんなスーパーロボットみたいなこと言われてたんだ」
めちゃくちゃ言われてるなあいつ。
確かに前の白雪はそんな感じはしなくもなかったけど。
「……?」
あれ? 心の声がしなくなった。
「まぁ、でも今日は調子悪そうだからやめとくわ」
「ご、ごめん」
「また近いうちにな! 逃がさないからな!」
「お手柔らかに……」
亮一君はそう言って自分の席に戻っていった。
こ、混乱するなぁ。
白雪の心の声は聞き慣れているから間違いないけど、さっきのは朝陽の声……?
その朝陽は、頬杖をついて、つまらなそうにホームルームが始まるのを待っている。
「……」
いよいよ、俺、頭おかしくなっちゃった……?
※※※
うーん。
朝陽のことがとても気になる。
これは決して異性的な意味ではない!
朝陽は初めて俺のことを、このクラスで友達って言ってくれた人!
あのときはその言葉でどれだけ前向きになれたか。
友達として助けになれることがあるなら、ぜひ力になりたい。
ハッピーエンド好きしては、自分だけが……というのはちょっとなぁと思っている。
俺は白雪姫の王子様みたいにヒーローにはなれないけど、せめて周りにいる誰かの力にはなりたいなぁ……。
「朝陽」
「ん? どうしたの?」
「悩み事があるなら相談にのるよ!」
「えっ!?」
午後の授業が始まる前、俺は朝陽にそう声をかけた。朝陽は俺に声をかけられて心底びっくりした顔をしている。
「私、悩んでいるように見えた?」
「ちょっと見える」
「うわっ、気をつけないと」
……。
……。
会話終了。
おかしいなぁ、前ならここで軽口を言い合えていたはずなのに。
「よく分かんないけどさ。俺、前みたいに朝陽と話がしたいよ」
「え?」
自分の素直な気持ちを吐露した。
「最近、元気ないみたいだから心配なんだ」
「うっ」
(やばい、泣きそう……)
あっ、声が聞こえてきた。
朝陽の顔を見ると、目元にじわっと涙が浮かんでしまっていた。
「わ、私のことは放っておいてよ!」
(あー! もう頭がぐちゃぐちゃ! 今日は話しかけないでほしい!)
「あ、朝陽!?」
朝陽が机に突っ伏してしまった。
心の声はここで途絶えた。
そんなこと思われたら今日は話しかけられないじゃん……。
「……ごめん、言いたくなったらいつでも言ってね!」
なるべく明るく、朝陽にそう声をかけた。
本当にどうしちゃったんだろう。
俺の言葉に朝陽がコクンと少しだけ頷いたのが分かった。
※※※
「白雪、今日はどうする?」
「行くよ。ご飯食べる」
「お風呂は?」
「んー、今日はうちで入っていこうかな」
「了解。母さんにそう言っておく」
放課後、白雪と一緒に帰路につく。
こんな感じで白雪と今日の予定を確認し合うのも日課になっていた。
白雪がお世話になるということで、うちはおばさんからお金をいくらかいただいているらしい。
電話越しでお金の話をしているのを聞いてしまった。
……母さんはやたら遠慮していたけど。
そのことについては、子供らしく知らないふりしているのが一番なのかなぁと思っている。
「……ところで朝陽となに話してたの?」
白雪が咎めるような口調で詰め寄ってきた。
か、顔が怒っている。
「悩み事あるなら相談のるよってだけ」
「なんで
「だって友達だし」
白雪が分かりやすく拗ねた顔になってしまった。
「白雪の友達でもあるでしょう?」
「うーん、私って友達とそういう深い話をしたときがないんだよねぇ」
「隠れぼっちでしたか。ははっ、クラスカースト最上位がこれとは中々巧妙な隠れ
「うっさい! 馬鹿にしてるでしょう!」
やっぱり“白雪姫”の取り巻きはいても、鈴木白雪の友達はいないってことなのかな……。
そういえば最近、
俺と付き合ったことが原因なら、それはちょっと寂しいな……。
「よし! 白雪! 朝陽の悩みを聞いてやれよ!」
「えぇええ!? なんで私が!?」
「友達だろ! 俺たち友達少ないから大切にしないと!」
「勝手に仲間にされた」
「俺たちもう一心同体だろ!?」
「一心かもだけど同体にまだなってなくない?」
「えっ?」
「ん?」
「それってどういうこと?」
「あっ……、なんでもない!」
白雪がまたよく分からないことを言っている。
「と、ところで
あからさまに話を誤魔化された。
「うん」
今日は朝陽の件で分が悪いような気がするから、これ以上は言及をしないでおこう。
※※※
「そこのスペル間違っているよ」
「えっ? どこ?」
俺たちは学校が終わったら白雪の家で勉強するのが日課になっていた。
もちろん今回はおばさんの了承済み。くれぐれも変な気は起こさないようにと、ドでかい釘は刺されているけどね。
「そのページの一番最初のところ」
(
「……」
「聞いてる?」
(私の魅力が足りない……? でも、
普通に心の声が聞こえてきている。普通に毒を吐かれている。
随分早い再会になったな、おい!
この前の俺のしんみりを返してくれよ。
「あっ、ごめん」
「もー、ちゃんと集中してよ」
(まぁ、気長に待つか! そんなに焦る必要はないもんね!)
一体、どういうことだ!? しかも今度は朝陽も……?
この前ほど頻繁には聞こえてこない気はするけど……。
「
「あっ、ごめん」
「まさか朝陽のこと考えてた?」
「ぎくり」
ど、どうしよう。白雪に嘘はつけない。
白雪の顔が怒りではなく、眉を八の字にして悲しそうな顔になってしまっている。
「……ほんのちょっとだけ」
「
「分かってるよ! でも友達だからこそ心配だっていうか……」
「はぁ」
思いっきり溜息をつかれてしまった。
「仕方ないなぁ。明日、朝陽と話してみるよ」
「おっ」
「か・れ・しの不安は私が取り除いてあげないとね! ついでに私の不安も!」
やたら彼氏の部分を強調された。
結構どころか相当なヤキモチ焼きだよなぁ白雪。
そんな白雪でさえ可愛いと思ってしまっているのだから、俺も相当白雪に惚れ込んでしまっていると思う。
「はい、じゃあご褒美のぎゅーして」
「えぇえ、まだ勉強終わってないんだけど」
「……」
(早くしろ)
無言の圧やめろ。いや、無言じゃなかったけど。いや無言だけど!
「はいはい、じゃあこっちにおいで」
「うん」
白雪が俺の胸の中に飛び込んできた。
白雪がクラスでは絶対に見せない油断しきった顔をしている。
……俺は白雪が好きだ。それは間違いない。
要検証だけど、朝陽の心の声についてはどうしたらいいんだろう。
白雪のときみたいに思ったことを言ってしまっていいのだろうか。
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