第41話 親の前でいちゃいちゃするな!
「そんなに私のことが好きなんだ~」
(
「うるさい!」
「恥ずかしがっちゃって」
(んふふ~、余裕がなさそうな
白雪の心の声が全力で俺のことをからかっている!
一階では、うちの親と白雪のおばさんで話し合いが行われている。
なんの話をしているのかな?
俺たちは二階の白雪の部屋で話しが終わるのを待つことになった。
「世界一カッコいい土下座だったよ♪」
(私、そんなに愛されているんだ~)
「土下座を褒められるのって世界で俺だけだと思う」
白雪の心の声がさっきからうるさい。
親の前で……! 親の前であんなことを言ってしまうとは!
今日の俺のメンタルはもうボロボロだよ!
「エロいことしたかったんだ」
(私もしたい)
よし、やっぱりこいつもアホだな。
私もしたい……! じゃねーよ。
そんな心の声にツッコめるかっ!
「それはもう忘れてくれ!」
「
「芸名みたいに言うのやめろ!」
遠藤輝明、むっつり輝を襲名。
くそぅ、なにも言い返すことができない。
俺がむっつり
「ツッコミの切れ味が弱いなぁ」
「今、メンタルに致命傷を負ってるの! またおばさんの気分を害したらどうしようかと……」
「大丈夫だと思うよ。だって、お母さんの笑っているところ久しぶりに見たもん」
「へ?」
「楽しそうだったよ。だから、ありがとね
白雪の心の深いところから感謝の気持ちを感じる。
……白雪がそう言うならあれで良かったのかな?
白雪の家の事情が益々よく分からなくなってくるなぁ。
「……ところでずっと気になってたんだけど、白雪のお父さんって今なにしてるの?」
「海外出張中」
「はぁ!? そんなすごい人だっけ?」
「海外出張ってだけですごいという考えが浅ましい」
「どんな仕事してるんだっけ?」
「外資系」
「やっぱりすごいじゃんか!」
外資系って聞くと、お金持ちの匂いがするのは俺だけ?
おばさんともそこで出会ったのかなぁとか色々と妄想が膨らんでしまう。
「私も聞きづらかったんだけどさ」
(
「ん?」
心の声にネタバレされた。
「
「東京に単身赴任中。五反田にいるよ」
「ぷっ……」
「あっ、笑ったな」
五反田に謝れ! 父さんに謝れ!
一回だけ行ったことあるけど五反田は良い所だぞ!
ビルがいっぱいあって、飲食店がいっぱいあって、人がいっぱいいて、活気があって!
……確かに海外と五反田とじゃ響きに差があるような気がするけど。
五反田の皆さま、本当にごめんなさい。
「良かった。じゃあ別になにもなかったんだね」
「どういうこと?」
「だって他の人の家のそういう話って聞きづらいじゃん」
確かになぁ。
白雪の言う通り、踏み込みづらい話題ではある。最悪、地雷を踏む可能性だってあるわけなので。
「私ね、
「学ぶ?」
「自分の考えていることを言うのって大切だなって!」
いやいやいや! 全部、お前のせいなんだけど!
お前の心の声が聞こえてくるから、やむを得ずそうなったわけで!
「てーる君!」
白雪が急にくっついてきた。
「な、なんだよ! 急に!」
「今、私が考えていること当ててみてよ!」
(私、学校でも
質問と答えを同時に言ってますよ白雪さん。
「わ、分かんない」
「ちゃんと考えてよ~」
白雪が更に俺に身を寄せてくる。
だからこんなのズルじゃん!
そのまま言ったらただの卑怯者だ。
「き、キスしたいとか?」
「え?」
「あっ」
白雪に密着されていたからか、自分の素直な欲求が出てしまった。
「
「そりゃあ……」
「いいよ、はいどうぞ」
白雪が目をつむって、こちらに顔を近づけてくる。
し、白雪が怖いくらい素直になった。
まぁ、これを拒む理由は俺にはどこにもないわけで――。
「
母さんの声が白雪の部屋に響き渡った。同時に、白雪の部屋の扉が開く。
「……」
「……」
この場にいる全員が一瞬フリーズした。
「し、白雪ぃいいいい!」
おばさんから変な声が出た。
「あ、あなたたち! 親の前でいちゃいちゃするってどうなってるの!?」
また、おばさんに怒られてしまった……。
※※※
「そういうことなんで、遠藤さん宜しくお願いします」
帰り際、おばさんがうちの母さんに深々と頭を下げた。
なんか変な光景だ。
「し・ら・ゆ・き! 遠藤さんちにご迷惑おかけしないように!」
「分かってますー」
(お母さん、うるさい)
白雪が子供みたいに拗ねた顔をしている。
普通に仲良さそうじゃん、この親子。
――白雪のおばさんはこれから三ヶ月ほど、海外にいる旦那さんのところに仕事の関係で行かないといけないらしい。
どうやらさっきはその話を母さんとしていたようだ。
短期間とはいえ、一人暮らしになる白雪のことを心配しているのだろう。そう思えば、おばさんが口うるさくなっちゃうのも分かるような気がする。
「こいつらのことは私が見張ってますので」
「ありがとうございます」
現代の最強タッグが結成されてしまった。
シンプルに怖い。
目の上のたんこぶ同盟と名付けよう。
この三ヶ月の間は、白雪の食事などはうちの母さんが面倒を見ることになったらしい。
つまり、白雪は親公認で毎日うちに来ることになった!
「
「はい! なんでしょうか!」
おばさんの声でビシッと背筋が伸びる。
威圧感がすごい……。
おばさんはどこか憑き物が落ちたみたいな顔をしている。
「人前であまりいちゃいちゃしないように」
「はい……」
おばさんになにか良いことでも言われるのかと思ったけど、全然そんなことなかったわ!
今回、思ったことを全部ぶちまけて、俺も、白雪も、そしてきっとおばさんも気持ちがスッキリしたのだと思う。
童話の白雪姫みたいに意地悪な義母なら勘弁したいが、おばさんとはこれからも長い付き合いになればいいなぁ。
……そんなことを白雪を見ながら思う俺であった。
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