第32話 白雪姫のお泊り 第二夜 1
まぁ、そんなことは思っていてもすぐに目先の問題がやってくるわけで……。
「白雪ちゃん、欲しいもの買えた?」
「はい! ありがとうございます!」
「今日は白雪ちゃんの好きな唐揚げだからね」
「わーい! 楽しみです!」
白雪のうちへの馴染み方が半端ない。
さすが、昔よく遊びに来ていただけはある。
「私、手伝いますよ!」
「えっ、いいの? その前に着替えてきちゃったら?
母さんが息子の部屋をあっさり明け渡した。
グッバイ、マイルーム。
完全に白雪に乗っ取られた。
それにしても白雪がいるだけで家の雰囲気が全然違うなぁ。
家全体がとても華やかになった気がする。
「はぁ……」
「どうしたのよ、溜息なんかついて」
母さんに溜息を聞かれてしまった。
家出なんて理由でこうなってしまったわけだけど、ただ単純に白雪と一緒にいることが嬉しい。白雪と一緒にいれる時間が増えてとても嬉しい。
でも――。
(
二階から白雪の心の声が聞こえてきた。
……俺、今日寝れるかな。
白雪と良い雰囲気になればなるほど……その……なんというか……。
(夜は
こういうド直球の心の声も聞こえてしまうわけで……。
クラスのマドンナってどこか聖域にみたいに見られることが多いと思う。かくいう俺も白雪のことをそういう目で見ていた。
でも……その……。
(でもやっぱりこの部屋にいるとドキドキしちゃうなぁ。
そりゃ人間だから当たり前! 当たり前なんだけどさ!
学園のマドンナだって三大欲求はあるんだなって思うわけで!
食欲と睡眠ともう一つのやつ!
「
「あっ」
そんな考え事をしていたら白雪が着替えから戻ってきていた。
「どう? 私の部屋着似合ってる?」
白雪は制服からダボっとしたパーカーにショートパンツのラフな服装になっている。
うっ、さっき心の声が聞こえてきたせいで変に意識しちゃうよ。
「へ、部屋着に似合ってるとかあるの?」
「あっ、照れてる」
(ちゃんと言え、馬鹿野郎)
心の声(毒)が飛んできた。
同じ空間に母親がいるのに歯の浮くような台詞が言えるわけないじゃん。
「二人ともラブラブじゃん」
ほら見ろ、ついに母さんがそんなことを言い始めた。
「そ、そう見えますか!?」
「うん。白雪ちゃん、本当にうちの子になっちゃう?」
あぁああああ!
色々なところがムズ痒くなってくる会話をし始めた!
「えぇ~、おばさんったら冗談ばっかり言って!」
(やったー!
すごく下心しかない心の声が聞こえてきた。
今日の夜はどうしようか……。
勉強に集中して気を紛らわさないと。
※※※
(いいお湯~)
「……」
(
「……」
(あれ、ふとももに痣できてる。どこかにぶつけたかな)
「……」
全然、勉強に集中できないッ!
お風呂中の白雪の声が丸聞こえになっている。
何故か白雪のお風呂を覗いているような気分だ!
(……胸の成長は止まっちゃったかな。少し前は張ってて痛かったくらいだったのに)
聞いちゃいけない聞いちゃいけない!
目の前の勉強に集中だ!
微分が積分で藤原道長がチンダル現象を起こして産業革命だ!
「母さん! コーヒー飲みたい!」
「はいはい」
こういうときに母親は便利だ!
母さんのしわくちゃな声を聞くだけど全然そういう気分ではなくなるもんな!
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