第19話 心の声(大)

 少ししたら白雪がやってきた。


「おはよー! 白雪!」


「白雪さんおはよー!」


 教室に入ると同時にみんなに挨拶されている。


「おはようみんな!」


 気のせいかな? いつもの白雪より雰囲気がほわほわしているような気がする。


「おはよう、朝陽あさひ、遠藤」


「お、おはよう」


 えっ、俺も挨拶された!?


 いつもなら完全に無視されるのに!


「なんでびっくりした顔してるの?」


「い、いや別に……」


「朝から変なの」

(きゃー! 目を見て話せないよー!)


 やりづらいよぉ……。


 そんなこと思われていると、俺も白雪と話すのにかなり意識してしまう。


 なんかいつもよ白雪が可愛く見えるような気がするし……。


「え? 二人とも朝から勉強してるの?」


「うん、朝活中。中間近いから」


「そっか。もうすぐ中間テストだもんね」


 意外と白雪と朝陽あさひが普通に会話している。


 正直、二人の関係はよく分からないなぁ。


 仲良いには良いのだろうけど、どこか二人の間には壁があるような気がしている。


輝明てるあき、そこ間違ってるよ」


「えっ? どこ?」


「問1のところ。計算間違ってる」


 うわっ、マジだ。俺、数学苦手なんだよなぁ。


 朝陽に指摘されて、ノートに書き殴ってた文字を消しゴムで消していく。


てる……あき……?」


「あっ」


 しまった!


 俺が一番懸念していたところにあっさり触れてしまった。俺は触れてないけど!


「ふ、二人はいつの間に名前で呼ぶような関係に……?」


「え? ついさっきだけど」


「ついさっき!?」


「うん。ね? 輝明てるあき?」


 絶対に分かってやってるだろこいつ!


 誰か警察連れてきてくれ! ここに愉快犯がいるぞ!


「な、ななな……!」


 あぁああああああ! 白雪の顔が赤りんごみたいになっていく!


「し、白雪……?」


「ふ、ふんっだ! 私には関係ないし!」

(う、浮気されたよぉ……)


 う、浮気!?


 顔を真っ赤にしたまま白雪は自分の席に行ってしまった。


「なるほどな~」


「なに笑ってんねん」


「いや、案外白雪も分かりやすかったんだなぁと思って」


 朝陽あさひがその様子を見て楽しそうに笑っている。


 

(浮気された浮気された浮気された浮気された!)

 


 白雪の心の声(大)が俺の脳内に鳴り響く。


 ドウシテ浮気ニナルノ?


 俺たち付き合って――。


「完璧だと思っていた白雪もただの女の子だったんだね」


「ど、どこが完璧なんだか……」



(まーた朝陽と仲良さそうお話してるぅ……)



 すぐにまた声が聞こえてきた!


 話すでしょう!? 


 隣の席だから会話くらいはあってもいいでしょう!



てる君の彼女は私なのにっ!)



「へ?」


「どうしたの?」


「な、なんでもない!」


 つい心の声に反応してしまった。


 えっ? どういうこと!?


 いつの間にそういうことになってたの!?


 確かに気持ちは伝えたけど……。


 

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