第13話 お誘い?

「どうも」


 ゴールデンウィーク初日。


 朝から玄関の呼び鈴が鳴り響いた。


「……」


「何で怪訝な顔してんのよ」


「……もしかしてお前って暇なの?」


「そう見える?」


「とても見える」


 あまりにも……! あまりにも普通に白雪がうちにやってきた!


「うっさい、死ね、お邪魔しまーす」


「いやいや!」


 ついでに普通にうちにあがろうとしている。


「文句あるの?」


「文句はないけど、言いたいことはある」


「つべこべうるさいなぁ、普通の男子なら私がいるだけで喜ぶのに」


「その通りかもだけど本人からその言葉を聞くとムカつく」


「うっさい」


 白雪がいじけたように唇を尖らせている。


 いきなり距離感おかしくない?


 というか俺に対する警戒心なさすぎない?


 幼馴染とはいえ、年頃の男女が家に二人きりって色々まずい気がするんだけど……。


「……で、なにしに来たの?」


「ごろごろ」


「はぁ?」


「携帯で言ったじゃん。ゴロゴロするって」


「あれマジだったの?」


「私が嘘つくと思ってるの?」

(い、勢いで来ちゃったけど緊張するなぁ……)


「……」


「感謝しなさいよね! この私があんたなんかと遊んであげるって言ってるんだから! 別に私があんたと遊びたいと思っているわけじゃないんだからねっ!」

(輝君とゲームやりたいなぁ、ワクワク)


 平然と嘘ついてやがる。


 こうも口から出る言葉と、思っている言葉が違うと逆に関心してくる。


「まぁ、別にいいけど……」


「じ、じゃあこの前のゲームやろっ!」

(やったぁー!)


「白雪って意外にまだ子供なのな………」


「はぁ!?」


「気にしないで……。思ったことが口から出ただけだから」




※※※




(そわそわそわそわ)



「えっ? 今日の遠藤、普通に雑魚くない?」


「やかましい」


 何故かリビングで再び白雪とゲームをすることになったが全然落ち着かない。


 白雪がいるから落ち着かないのももちろんあるが――。



(そわそわそわそわ)



 ええーい!


 一体何を一人でそわそわしているんだ!


 落ち着かない気持ちが山ほど伝わってきてるんだよ!



(自然にぃー……自然に聞かないとー……)



 既に自然じゃない件。


 白雪は俺に何かを聞こうとしているようだ。



(つ、次の試合が終わってから自然にー……)



 まどろっこしいぃいいい!


 これだと俺から仕掛けるのもやりづらいじゃん!


「遠藤はさ~」


「なにッ!?」


「なんでキレてんの。きもっ」

(ひぃいいい! 何故か怒ってるよぉ……)


「キレてない! 言いたいことがあるなら早く言え!」


「はぁ~? あんたに言いたいことなんてない別にないし」


「本当に?」


「当たり前じゃん」

(またやっちゃったぁああああああ!)


 歯がゆい、もどかしい、じれったい!


 なんでこいつはいつもこうなんだ!


 言いたいことがあるならはっきり言えばいいのに!


「言いたいことがあるならはっきり言えばいいのに!」


 あっ、普通に言葉に出ちゃった。


「……」


 白雪がうつむいてしまった。



(うぅ……怒られちゃったよぉ……)


(別に怒らせたいわけじゃなかったのにぃ……)


(悲しい)


(で、でもここで聞かなかったら前までの私と一緒だよね……)



 白雪の気分が沈むのがこちらにまで伝わってきてしまった。


 うぅ……俺も言い方が良くなかった……。


 もっと優しく言えば良かった。


「え、遠藤はさ……」


「う、うん」


「遊園地、誰と回る予定なの?」


「誰と?」


「……遊園地まで行って一人でいるの寂しいでしょ? だったら一緒に回らない?」


「……」


 ん? 今、みんなとじゃなくてって言った?


「……確か近藤が一緒に回ろうって言ってくれてたような?」


「あ、朝陽が!?」


「う、うん。だから平気って言うか……」


「いつの間にそんな話してたのーー!?」


 白雪が持っていたコントローラーぶん投げるんじゃないかなってくらい大袈裟にリアクションを取っている。



(ムカムカムカムカムカ)



 い、忙しいやつだなぁ。今度はめちゃくちゃイライラしている。


「というか白雪と近藤って同じグループじゃないの?」


「そ、そうかもだけど……」


「じゃあ白雪とも一緒に回ることになるのかな?」


「そ、そうかもね……」

(全然分かってないよぉおおおお!)


 丸聞こえだし……。


 もしかして俺、こいつに二人きりで遊園地回るのに誘われた?


 いやいや、まさかそんなことは。



てる君とデートするチャンスだったのに!」

(私たちと一緒に回れることに感謝しなさいよね!)



「えっ?」


「あっ」


 白雪が自分の口を咄嗟に両手で塞いだのが見えてしまった。

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