夏夜

〜恋の池〜

夏という季節はいろいろな感情が渦巻く季節だ。

嬉しみ、楽しみ、悲しみ、怒り、恋しさ、寂しさ。

今回は、考え深さのある話をしよう。


とある町では、毎年近くの山の神社で夏祭りが行われていた。

屋台の出店数や出店範囲も広く、夜には花火が打ち上がるので、地元の人はもちろん全国各地からお客さんが来る。

しかし、前からこんなに賑わっていたわけではないらしい。お祭りに人が来たとしても、ほとんどが地元の人だった。

お祭りが賑わい始めたのは一昨年のある出来事がきっかけだったという。

とあるSNSに、こんな“噂”が書き込まれた。

『〇〇県××町の△△神社の外れに池がひとつある。夏祭りの花火打ち上げの時、その池に映る花火を見た者は恋愛縁に恵まれる。』

しかし、その神社には縁結びの神様は祀られていないという。すなわちこれは、どこかの誰かが作り出した嘘の話なのだ。

しかし、その書き込みを境に、夏祭りは一気にお客で賑わっていった。

SNSにりんご飴や綿菓子、射的やくじ引きの写真の投稿がある中、ダントツで多かったのはあの池のことだった。

いつしかネットの人々はその池のことを「恋の池」と呼ぶようになっていた。

『恋の池に行ってきた!いい彼氏ができますように! ♯恋の池』

『恋の池なう。てか人多くね?笑』

『恋の池目当てで来たんだけど普通にお祭り楽しい!楽しみすぎて本命忘れないようにしないと』

『なんだよお前ら恋の池恋の池ってなんなんだよ笑…俺も今いるけどね⭐︎ ♯恋の池』

全国各地から人々を呼び、夏祭りを活発にした恋の池の噂。

その内容は嘘であるが、その地域の人が助かっているのは事実である。

その噂がなければ、夏祭りはずっと活性化しないまま、地元の人に見守られながら、いつかは文化が途切れて廃れていくことになっていったかもしれない。

内容は嘘だとしても、その噂は夏祭りを救ったのだ。

そして、その噂を広めたのはインターネット。

インターネットはどこでも誰でも見れる場所であり、とても強力性があるものだ。

例えば「いいね」があるものでは、自分の友達の投稿を「いいね」すれば、自分の友達もその投稿が見れる。

その投稿を見た友達が「いいね」すれば、自分の友達の友達が投稿を見れるようになる。

そのような繰り広がりで、どんどんネットの世の中に情報が出ていく。

だからこそネットに個人情報などをあげるのは怖い。

人を呼ぶ噂話と、インターネットの強力性を、あなたはどう考える?

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夏夜 @nago_2992

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