第17話 S級ダンジョンの最奥部にて
「ハッ――!」
「ていっ!」
ゴーシュとミズリーは快調にS級ダンジョンを攻略していった。
破竹の勢い、とはまさにこのことだろう。
迫りくる魔物たちはもはや敵ではなく、二人の配信を演出する餌になっていた。
【これは伝説の配信ギルド誕生の予感】
【強くてカッコいい&可愛い。まさに最強】
【これは今日のまとめ記事が楽しみですね】
【ちょっと待って、今日の同接数ランキング2位まで来てるぞw】
【立ち上げたばっかのギルドがそれは凄い】
【この調子なら1位いくんじゃね?】
【今日はまだ歌姫のメルビスちゃんが配信してないからな】
【他のギルドも見習ってくれ】
【それな。最近はどこも炎上系とか、とにかく人目を浴びればいいと思ってやがる】
【《炎天の大蛇》とかその筆頭だよな】
【あそこ、この前C級のダンジョンでヒィヒィ言ってたぞw】
【他配信の話題は控えろよ。マナー違反だぞ】
リスナーたちが流すコメントも盛況で、このままいけばゴーシュとミズリーのダンジョン配信は大成功のもとに終わるだろう。
そうして快進撃を続けていった二人は、真っ直ぐと通路が伸びる空間に辿り着く。
「ふぅ……。この先が最奥部か」
「最後ですね。気合いを入れていきましょう」
ゴーシュたちが今攻略している《青水晶の洞窟》は、ついひと月ほど前にある魔術師が解析を行ったとして有名なダンジョンでもある。
その際、最奥部には何やら巨大な魔物がいるらしいことが判明していたのだが……。
「さて、どんな魔物が待っているやら」
ゴーシュが慎重に奥へと進むと、開けた空間に出る。
ひときわ強い輝きを放つ青水晶が辺りを埋め尽くすように並び、その様子を配信するだけでも人気が集まりそうな場所である。
そして、その場所には事前の情報通り、巨大な魔物が鎮座していた。
「あれは……」
「あっ――」
その魔物を見た瞬間、思わずゴーシュとミズリーは声を漏らす。
同時に、初見のリスナーたちが慌てふためくが、ゴーシュたちが声を漏らしたのはまったく別の理由からだった。
「フレイムドラゴン……」
「ですね……」
そう――。
そこにいたのは、先日までゴーシュが日課のように狩っていた魔物、フレイムドラゴンだった。
【勝ったな。風呂入ってくる】
【(竜にとっての)天敵現るw】
【これは勝利フラグ】
【初見さん、安心してください。大剣オジサンの敵じゃありません】
【巨大な魔物ってフレイムドラゴンのことかー】
【いや、フレイムドラゴンは強い。間違いなく強いんだが……】
【大剣オジサンが一撃で倒してた魔物じゃねえかw】
【そうは言ってもお前らフレイムドラゴン目の前にしたら逃げるだろ?】
【↑そりゃそうでしょ】
ゴーシュのフレイムドラゴン討伐配信(実際には配信を切り忘れていただけだが)を見たことのあるリスナーたちは余裕のコメントを流していく。
リスナーたちはゴーシュの勝利を確信して疑わず、そしてそれはすぐに現実のものとなった。
数分後にはゴーシュが一撃でフレイムドラゴンを討ち倒す様子が配信されたのである。
「はぁ。ビックリ仰天な魔物をゴーシュさんがカッコよく倒す! って感じのラストになると思っていたんですけどねぇ」
フレイムドラゴンを討伐した後で、ミズリーは少し残念そうな声を漏らす。
とはいえ、フレイムドラゴンは危険度A級の新種モンスターである。
それを一瞬で葬り去るゴーシュの方がどうかしているのだが。
「まあ、何はともあれ無事に終わりそうで良かったよ。今日の配信を企画してくれたミズリーのおかげだな。本当にありがとう」
「い、いえいえ! ゴーシュさんの強さがあってこそですよ!」
ゴーシュに感謝の言葉を呟かれ、ミズリーはブンブンと手を振った。
互いが相手を立てて謙遜し合う。
そんな二人の微笑ましいやり取りが配信画面にも映し出され、あとは締めの挨拶を行って本日の配信は終了だと。
そう誰もが思っていた――。
「む……」
《青水晶の洞窟》の最奥部にある水晶の壁面。
そこからゴーシュは微かな気配を感じ取る。
そして、そこにある青水晶の一つに亀裂が走るのを、ゴーシュは見逃さなかった。
「――っ。ミズリー!」
「きゃっ!」
ゴーシュが傍にいたミズリーを抱きかかえて飛ぶ。
それとほぼ同時。洞窟内に響き渡る轟音とともに、ミズリーがそれまで立っていた場所を水晶の塊が通過した。
「くっ、間一髪だったか」
「え? え? 一体何が……」
ゴーシュはミズリーを腕の中に収めたままで振り返る。
――ギ……ガァ……。
そこに姿を現したのは、先程屠ったフレイムドラゴンよりも更に大きな体躯。
体一面を水晶で覆った、巨大ゴーレムだった。
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