No.2 重圧(2)《清華》

 もう何度も練習しているはずなのに全日本だと空気は別だなと感じている。


 公式練習のときから似たような雰囲気を感じていたのに、この場は違うと感じている。



 最初の演技は今季エンジン全開の紫苑しおんさんだ。

 曲が今シーズンはすごくかっこいいんだよね。


 最初にトリプルアクセルを跳んでから次のジャンプはトリプルフリップ+トリプルトウループを降りた。


 難しそうなステップを挟んでからのフライングキャメルスピンがとてもきれいだ。


 それを見てから余裕のあるスピンとステップシークエンスをしているのを見ると、意識を他のことに自然と考えようとしていた。

 イヤホンをつけて、無音の状態で紫苑さんの演技を見ていたときに気が付いた。

この振付はお父さんじゃないことは確実に言える。


「紫苑さん、すごいな」


 滑らかな動きの中に誰かの面影を感じ取れる人は何人かいるみたいだ。

 わたしはそれを見てからすぐにコーチの陽太ようたくんと一緒にリンクへと出ることにしたの。

 とんでもなく大きな声が聞こえてきて楽しくなりそうだ。


「陽太くん。もういいよね?」

「え?」

「リミッターを外すから。フリーで」

 それを聞いた陽太くんは少しだけ引いているような顔で見ていた。

「そう言うところあるよね。緊張していると思いきや」

「緊張はしているけど。それ以上に今年こそ世界選手権に行ってみせるよ」


 その言葉を言ってリンクに入って、ジャージを脱いで預けて氷の上に立つ。

 次にトリプルアクセルの部分とタイミングだけを考えてからすぐに練習を始めていた。


『一条さんの得点、80.33。現在の順位は第一位です』


 会場内からはすごい歓声が上がっているのが聞こえた。

 それから紫苑さんの得点が暫定一位を更新していたんだ。


 気持ちが静かに一人でふとした瞬間に落ち着いているのがわかる。

 でも、逆にアウェーの方が燃えるかもしれないと考えていた。


「行ってきます」

「行ってらっしゃい」


星宮ほしみや清華せいかさん。東海林しょうじ学館大学』


 アナウンスと共に起きる拍手の少なさにはもう慣れている。


 リンクのなかでポーズを取ると、会場内が静かになっているのがわかる。

 心臓の鼓動が大きく波打っているのがわかる。


 流れてきたのはクラリネットのソロが聞こえてきてから、ジャッジ席に笑顔で愛想を滑ろうとしているのがわかる。


 最初のトリプルアクセルは子どもの頃にきれいに跳ぼうという意識をしない方が上手く跳べる。

 思い切って跳ぶと、みんなが大きな歓声でこちらを見つめているの。


 そのときには笑顔でリンクを滑ろうとしているときに、めちゃくちゃ嬉しそうに滑っていくことができるんだ。

 ここでオーケストラの楽器が加わって、演技をしていくことがとても楽しくなっていくんだ。


 その後のトリプルフリップもしっかりと降りれていた。


 その勢いのまま、跳びあがってからスピンをする。


 余裕をもって滑れているようではあるけれど、スケーティングのスピードがとても上がってきている。

 ステップをしているときにもスカートのはためき方がすごい。

 加速していきやすいということは知っているんだ。


 ターンと細かいステップを滑っているときには楽しそうに踊ろうとしていることがとても楽しい。


 陽太くんの振付も体を大きく動かすことがあるのにステップが細かいところもあるんだ。

 難しいステップもスピードに乗って楽々とこなしていく。


 まるで踊っているかのようなステップの後に最後のコンビネーションジャンプが始まる。

 勢いに乗ったままで跳びあがったトリプルルッツ+トリプルループは一番点数が高くなる。


 高く跳ぶことを意識したループも丁寧に降りることができて、最後のレイバックスピンを始める。


 わたしは息がとてもつらくなってきたからラストのスピンが始まろうとしている。


 足がパンパンになっているはずなのに、それを我慢して靴のブレードを高く持ち上げる。

 そのなかで勢いに乗ってピタッと演技を終わるのが、とても気持ちがいいなと感じていた。


 拍手が聞こえてくるとお辞儀をしてリンクを後にすることにした。

 初めて全日本でノーミスをして、とてもうれしくてガッツポーズをしてしまった。

 リンクサイドには陽太くんが快くこちらに来てくれていたんだよね。


「お疲れ様、清華ちゃん」

「ありがとう。ノーミスできたよね」

「うん。とても良かった」


 そんなことを話しながらキス&クライに入って得点が出るのがわかる。


 リプレイの動画を見ている間にジャージを羽織って、椅子に座ってブランケットを膝に掛けて点数を待つ。

 そのときに場内の音楽が変わってアナウンスが始まっていた。


『星宮さんの得点。82.01、現在の順位は第一位です』


 そのアナウンスが聞こえてきて大台に乗った得点を聞こえてきて、拍手が聞こえてくるけどその音の大きさは異なるような気がする。


 何かしらの視線を感じてしまうけど、それは別に気にしない方が良いと感じている。


「うん。気持ちが楽になったかな?」

「いや……逆に、友香ちゃんたちの演技が気になるな」


 わたしはすぐに取材に受け答えをしないといけないから、リンクから離れてインタビューなどをしているときだった。

 友香ゆかちゃんが次に滑っていて、そのなかで上手く跳べていないみたいだ。


「そろそろお時間ですね」

「ありがとうございます」

「それではこちらに」


 そのときに友香ちゃんのショートプログラムが終わっていて得点は十位になっているんだ。

 もともとジャンプの難易度が低いし、何かのミスがあったみたいだった。


「清華ちゃん。お疲れ様」

「友香ちゃんもお疲れ様だよ。伶菜ちゃんのところに行こう」

「そうだね」

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