No.4 勝つのは誰か(3)
女子フリーは伶菜ちゃんの家で見ることにした。
「良いの? 夕飯時にお邪魔しても」
「良いよ、今日は父ちゃんたちライブで帰ってこないから」
「そうなんだ。それじゃあ、お邪魔します」
夕飯時だけれど両親は推しのライブで帰ってこないらしいという。
六分間練習がスタートが終わってから、公式練習のときの様子も放送されている。
成功率は北京に入ってもずっと安定しているので入れるかもしれないと伝えている。
「うわぁ、四回転ループ。すごいなぁ」
「えげつないよね。清華ちゃんも」
「うん。とにかく遠い存在になった気がする」
「
「え、ああ。全日本には出れると思う。でも、跳ぶのは怖いけれどね」
わたしはそのときに
そのときに彩羽ちゃんについての話題が上がっていた。
「そういえばさ。彩羽ちゃんって受験生だよね」
「うん。愛知名城大学に行くみたいだよ。父ちゃんの東京勤務が二年後で終わるみたいで」
「寂しくなるね」
「インカレで会えるよ」
そんなことを話している間に女子フリーが始まろうとしている。
そのなかで清華ちゃんが日本代表トップバッターだ。
「最近さ、ネットでなんて言われるかわかる?」
「ああ、『氷上の怪物』でしょ?」
「思い出した」
清華ちゃんは試合に出るごとに怪物のような怖さがある。
ときどき練習しているときに見るあの眼光が鋭くなると、彼女のリミッターが外れる瞬間だ。
氷上に対する執念がすごいというか……いままでの経験をぶつけに来ているような気がする。
衣装も少し変化して、長袖のベロア地の衣装を身に着けているのが見える。
冬の装いをイメージした衣装はよく似合っていて、軽やかなスケーティングになっているのが見えるんだ。
最初から三番目の清華ちゃんはいつものように滑っていくことができている。
「あ、清華ちゃん。がんばれ!」
いつも通りの点数を出せば優勝はできるかもしれないというギリギリな状態。
流れてきた曲に合わせて楽しそうなパントマイムをしたりしているのが見える。
最初に予定しているのが四回転ループを跳ぶために勢いに乗って滑ろうとしている。
「え、めちゃくちゃ速くない?」
「清華ちゃん、もうヤバくない」
そのときのスケーティングは男子顔負けのスピードでターンをして四回転ループを踏み切った。
あっという間に四回転して着氷すると、勢いに乗ったままトリプルアクセル+ダブルトウループとトリプルアクセルを楽々と降りる。
でも、足がパンパンになる高難度のジャンプを跳んでいる。
それを耐える清華ちゃんもすごいんだよね。
「清華ちゃん、えぐい」
「うん。サルコウの加点がすごいもん」
前半最後のジャンプを跳んでからは余裕をもってきれいにスピンを始めている。
足換えのコンビネーションスピンを含めてから勢いに乗せて楽しそうな姿をしている。
後半のジャンプになるまでにステップとコレオシークエンスが始まっている。
スピードに乗せてエッジコントロールがすごく上手くなっているのが見えたんだ。
そのときの清華ちゃんの表情が辛いのに楽しそうな笑顔だ。
その目はギラギラと飢えた獣のようでゾクッとしてしまうことがあるんだ。
トリプルルッツ+トリプルループを降りているのが見えて、足を上げて勢いに乗せて次のトリプルフリップ+トリプルループ+トリプルトウループも難なくと成功させる。
ラストのジャンプのダブルアクセルを完璧に降りて、ガッツポーズをして最後のレイバックスピンを始めているのが見えた。
わたしと伶菜ちゃんはテレビにくぎ付けで信じられない顔をしてしまっている。
「えぐいってぇぇぇぇ!」
伶菜ちゃんがフリーを終えた清華ちゃんを見て叫んでいた。
「すごい。これは大台行くんじゃない? 160点」
「うん。行けそうよ」
その後に拍手が鳴りやまない会場に笑顔でお辞儀をしているのが見えた。
キス&クライに入ると清華ちゃんは笑顔で得点を待っている。
コーチの
流れてきたアモニターに映し出された得点を見て信じられない得点が出ていた。
それは世界新じゃないかっていう点数が話しているような気がしている。
その得点は160点以上をマークして総合得点は230点台になってる。
普通に高得点で信じられないと思うけど、まだ気にしているのしれない。
今年の全日本は荒れそうだなと感じた。
そこから異様な雰囲気のままフリーがつづいている。
ミーリツァちゃんは難しい構成ではなく確実に行ったけど総合得点は抜けない。
清華ちゃんのグランプリファイナル初優勝で幕を下ろすことになった。
全日本まで残り二週間。
本格的に練習を再開することができた。
足首のケガもよくなっていて、ルッツとフリップは跳ぶことはしないことを条件にプログラムを組むことにした。
手を加えたところ以外は普通に滑ることになる。
ケガで休んだ分の試合感覚がないけど、それでも頑張れるようにしたい。
清華ちゃんはあの後、一度体のメンテナンスをしていまもバンバン高難易度のジャンプ構成をしている。
伶菜ちゃんは東日本選手権で優勝したことで、自信がついたのかプログラムの振付を難しくしている。
リンクを出て電車に乗ると、街はクリスマスイルミネーションなどで彩られる。
ジングルベルが鳴る頃、わたしたちは氷の上で戦う。
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