No.4 わずかな差(1)

 そこから一気に会場内もざわめきが続いているのが見える。

 心臓の鼓動がどんどんと大きくなっていくのが感じているのに、そこから演技を続けることができるかが不安だ。


 わたしはトリプルフリップ+トリプルループ+トリプルトウループを降りてから、陽太ようたくんがスマホのメモを見て確かめているの。

 コーチ陣もそんな感じでノートを見ていたりしているけど、選手たちと話し合いながら構成をギリギリまで話している。


 ミーリツァちゃんが三連続ジャンプの成功を確かめていることが見えて、次はトリプルルッツ+トリプルループを成功させているのが見えた。

 彼女は四回転ジャンプを入れずに完成度を求め、すぐにトリプルアクセルの単独ジャンプを跳ぶことができたりする。


清華せいかちゃん」

「陽太くん。大丈夫かな、このままで」

「うん。四回転ループは入れない。構成で勝負した方が良い」

「はい」


 大技は何個も使っても、誰の心に響くかということは知らないと感じている。

 すでに公式練習で手札は取り出しているのが大きいけど、そのなかでどう構成に組み込んでいくのかがわからないと考えている。


「それじゃあ、アクセルの方が良いと思う」

「そうだね」


 六分間練習が終わってからはリンクで演技を始めようとしている選手の方を見つめていた。

 最後から二番目なので普通な練習をした方が良いと感じているところではあるんだよね。


 バックステージでは各自が振付の練習やジャンプを跳ぶタイミングなどを見ていくことが良いと感じる。


 そのなかでミーリツァちゃんよりも上手く跳べるかを考えている。

 試合のなかでもすぐに演技がスタートしている穂澄ほずみちゃんの様子を見たりしている余裕はなかった。


 呼吸ももとに戻りつつある中で加藤先生からメッセージが来た。


『焦らずに自分の思い描くように』


 メッセージを見てからは妙に落ち着いていることが大きいかもしれないと思っている。

 ただジャンプだけじゃないと言えるような選手になりたいと感じていた。


「清華ちゃん、そろそろ時間だよ」

「はい」


 長いようであっという間に五人目、わたしの番がスタートしようとしているのが見えた。

 穂澄ちゃんとアンナちゃんがトップ2を占めているのが見えてた。

 衣装を着てリンクに入ると、自分の方へと視線が厳しく見たりしている。


「焦らないでいいんだよ」

「え、うん」


 わたしはすぐにリンクの中央へと行こうとしているのが見えた。

 流れてきたのはバレエ『スケートをする人々』という珍しい演目だったんだよね。


 一気に滑っていることが見えたりしていることが大きいため、勢いに乗せてトリプルアクセルのコンビネーションジャンプへと向かう。

 勢いに乗せてトリプルアクセルを踏み切ってから、軽くダブルトウループを踏み切った。

 すっかり慣れたコンビネーションジャンプだからきれいに着氷させることができた。


 大歓声が聞こえてきてからは勢いに乗せたまま、トリプルアクセルの単独ジャンプを跳ぶ。

 次には簡単なトリプルサルコウを降りてからはスケートが楽しそうに見せるようにスパイラルをしてからのフライングキャメルスピン。


 ポジションを考えながら考えている間にも音楽が変化していく。

 ゆったりとしたスピードできれいに終わらせてからは構成を大幅に変化させている。


 ステップシークエンスは寒い真冬の空の下で氷を張った場所で、コンパルソリーをするようなイメージで滑っていく。

 何度も図形を描いていくなかで演技も楽しそうだったり、こけそうになった子を支えるような形にしたりといしているんだ。

 まるで子どもの頃に戻っていったような気持ちへと変化していく。


 そこからコレオシークエンスはスパイラルやイーグルを組み合わせているもので、難しいことをとても簡単に見えるような姿で滑れる。


 すぐに終わりを告げるようにツイズルからのダブルアクセルを降りてから降りる。

 そこから足換えのコンビネーションスピンを始めて、次のジャンプに向けて呼吸を整える。


 プログラムの構成を変更したのに、すぐに最大の得点源であるジャンプがずっと続く。


 最初はトリプルルッツ+トリプルループをきれいに降りることができた。

 次にトリプルフリップ+トリプルループ+トリプルトウループも、落ち着いて滑ることができたんだよね。


 そこからの大歓声はとても気持ちが良くて、残りのジャンプを油断せぅに滑ろうとしている。

 すぐにトリプルルッツの単独ジャンプを降りて、ホッとしたようにレイバックスピンへと入る。

 足を高く上げるビールマンスピンをしているときからガタガタと聞こえてくるのが見えた。


 プログラムを終えてからは聞いたのはすごい大歓声だったんだよね。

 ノーミスで滑りきることができてホッとしているところだ。


「清華ちゃん、お疲れ様」

「ありがとう」

「ノーミスじゃない? これでかなり出るよ」


 流れてきたのは「155.99」という数字と156点台に近づきそうな点数が出た。

 合計では232.34となって暫定一位になっているのが見えた。


 そこからミーリツァちゃんが演技を始めようとしている。

 フリーはラフマニノフの『ピアノ協奏曲第二番』でとてもきれいなスケーティングで滑っているのが見えた。


 最初のトリプルアクセル+シングルオイラー+トリプルサルコウを完璧に降り、次にトリプルアクセルの単独ジャンプだ。


「え、マジで? トリプルアクセルからのコンビネーション」

「男子みたいだ」

「あの演技、強い」


 モニターを見ながら彼女の演技を観客と一緒に見ていたんだ。

 得意のトリプルルッツ+トリプルループを降りてからも余裕をもって滑ってきている。

 壮大なオーケストラに乗せて次々と技を成功させているのが見えて、背筋がゾッと寒くなってしまう。


 彼女の演技はとても重厚感のある振付で、とてもきれいなスケーティングで表現していくのが見える。

 最後のジャンプを跳び終えてからの彼女は完璧な演技をしていた。

 圧巻の演技だったに違いないと考えていたときだった。


「負けたかもしれない」

「そんなことはないよ。演技は必ず点数が開くことがある」

「でも、陽太くんはどう思う?」

「かなりギリギリかもな。ショートプログラムの点差を考えると」


 その言葉を聞いて僅差で優勝するかはわからないということだった。

 アナウンスが聞こえてきて点数が表示されているのが見えた。

 ミーリツァちゃんの得点は155.51というハイスコアで、次に総合得点の発表された瞬間に会場内が驚きに包まれていた。


 わたしも少し驚いてしまって陽太くんと一緒に顔を見合わせていた。

 合計得点は232.34とわたしと全く同じだったことに驚いてしまったんだよね。


「え、この場合って」

「確か合計だったら、フリーの得点だったはず」


 そのことを聞いてフリー単独の順位だと自分がトップに立っているの。

 それは自分が優勝したことがわかる。


「おめでとう清華ちゃん。優勝だよ」


 それを聞いてから驚いてすぐに表彰式に向かうために急いで靴を脱いでリンクへと行く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る