No.3 バンクーバーでの再会(2)

 女子シングルの前にペアが行われて、ペア日本代表の文花あやかちゃんとしゅんさんたちが演技をしていくのが見えた。

 バレエ『海賊』のメロディーに乗せて、バレエ風の衣装を着て滑っていたんだよね。


「すごい。きれいだな」


 ショートは安定した演技とはいかなかったみたいだけど、ショート七位からの逆転を狙うみたいだ。

 シングルの第一グループには穂澄ほずみちゃんが緊張した表情でリンクを滑っているのが見えた。

 わたしもそれは一緒だと思っている。


「あ、清華せいかちゃん。準備していてね」

「うん」


 第二グループの二番目までは時間があるので衣装を着てジャージを羽織ってから、ステップと振付を確認、ヨガマットの上でストレッチをしたりすることが大きいかもしれない。


 大きく息を吸いながら笑顔でリンクに立てるようにしたいと考えているけど、怖いことも多いし批判されることを覚悟している。


 東京選手権の後にもそれはあって、コメント欄に露骨なものはいくつかあった。

 頭にはグルグルと感じてしまうことがあったけれど、陽太ようたくんやお父さんたちにも相談しているのである程度の耐性はついてきたかもしれない。


『明日は失敗することを祈ります』


 わたしはそれを無視して、自分らしい演技をしていきたいと考えている。


 第二グループの六分間練習がスタートしたとき、今までの得点が出ていた。

 穂澄ちゃんの得点が二位の得点になっていて、その上にアメリカのレイラ・スカーレットちゃんが一位になっている。


 わたしはそれを見てから一度暗くなったリンクで一列に滑っていく。

 中央で選手紹介が行われてからの六分間練習がスタートするんだ。


『No.2 Seika Hoshimiya.』


 そのアナウンスが聞こえてお辞儀を観客席に向けてすると、少し空席の目立つ場所を見ながら六分間練習がスタートした。


 同じグループのアンナちゃんと地元選手のシャーロット・ポワラーヌさんと汐見しおみ恵茉えまさんたちはすごい歓声を浴びている。


 すぐにトリプルアクセルを降りてからは余裕をもって降りれて、次に確認するのはトリプルルッツ+トリプルループの難しいコンビネーションだ。


 いままでは使っていたスパイラルから上体を斜め前に回転させるウィンドミルを挟んで、さっきのコンビネーションをジャンプを跳ぶことになっている。

 スパイラルは左足のアウトサイド、インサイド、またアウトサイドに重心を置いてから風車のように前にウィンドミルからのトリプルルッツ+トリプルループを跳べる。


 かなり難しい跳び方だけど、こっちにした方がトリプルフリップよりもいいタイミングで跳べる。


「良い流れだよ。あとはトリプルフリップだな」

「行ってくるよ」

「お願い」


 陽太くんからの話を聞いてからはすぐにトリプルフリップを跳ぶことにした。

 次にトリプルフリップは丁寧に決めてから、きれいに降りてからは余裕をもって滑っている。


 そこからフライングキャメルスピンなどを確認してから、あとはステップの気になっている箇所を考えている。


 残りあと少しになってきたので体力を温存しながら滑っていくことにしたんだ。

 そのときにトリプルルッツ、トリプルトウループ+トリプルトウループを降りているのが見えた。


 ジャージを脱いで衣装のまままたトリプルアクセルを跳んでみた。

 ステップアウトしてしまったけど、さっきのイメージで滑ることができたらいい。

 その後に練習時間の終了を知らせるアナウンスが聞こえてきて、わたしはドキッとしてしまったんだよね。


「清華ちゃん、靴は脱がない方が良いよ。すぐに出番がくるから」

「はい」


 そこから最初の滑走である汐見恵茉さんがリンクに残っていた。

 何となく緊張した姿になってリンクに出ることにしていて、難しいかもしれないと感じている。

 通路裏に入ると意識せずに大きく深呼吸をしてから、エッジケースをつけた状態の靴でとんとんと軽く跳んでいく。


「あ、清華ちゃん」

「うん。わかった。行こう」


 ジャージを羽織ってから緊張しながら恵茉さんの演技が終わるのを待つことにした。

 その後の得点は暫定三位と本人も満足した表情を浮かべているのが見えた。

 続いてリンクに入ってからトリプルアクセルの軌道を確かめてみる。


「清華ちゃん」

「うん」

「トリプルアクセルもいいし、他のジャンプも申し分ない。思い切ろう」

「はい」


 それからアナウンスが聞こえてきてリンクの中央に立ち止まってポーズをとる。


 流れてくるのは『ラプソディー・イン・ブルー』のクラリネットのソロだ。


 スケーティングでトリプルアクセルへと踏み切って、余裕をもって着氷をしてから片膝のニースライドをしていく。

 そこからはバックスケーティングをしてからイーグルをしてから左のインサイドエッジに傾けてから踏み切る。


 トリプルフリップをきれいに降りてからはフライングキャメルスピンを始める。


 高く跳びあがってからはきれいな姿勢のまま、グルグルと回ってからブレードを持ってドーナツみたいな形に見えるようにする。


 ステップシークエンスはとても軽やかに滑っていくときに、笑顔でジャッジや観客へとアピールをしていく。

 そこからツイズル、カウンター、ターンから右回りへと変化していく。


 手をパンパンを打つパントマイムをしていくのができてからはニースライドをしてから滑っていく。

 きれいな姿勢でエッジを傾けながら滑っていくとができればいいかもしれないと思っている。


 足換えのコンビネーションスピンを始めて、ポジションを三つ入れている物を見たりしている。

 最後のジャンプはスパイラルを入れてかウィンドミル、トリプルルッツ+トリプルループを踏み切った。


 完璧に降りてからはうれしくなってからツイズルを加えた振付で、足を上げてY字スパイラルを滑っていく。


 残りのエレメンツはレイバックスピンがスタートしたんだ。

 レイバックスピンをしてからはノーミスの演技で終わることができたのがうれしかった。

 陽太くんと一緒に得点をキス&クライで見ようとしたときに楽しそうな姿をしている。


「すごい‼ 76.35だ」

「一位になったな。良かったね」

「でも、怖い……」


 それを見て陽太くんがこちらに来ているのが見えたんだ。

 恐らくわたしの周りで起きていることを把握しているかもしれないと感じている。


「それじゃあ、取材の場所に行こう」

「わかった」


 それから取材が始まれば、笑顔で質問に受け答えに時間がかかりそうだった。

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