No.2 追われる立場(2)
一つ前の競技であるジュニア女子のフリーが終わってから、表彰式が行われていた。
シード選手の二人を除いた上位十二人が東日本選手権へ進出することになる。
拍手をしながらそちらの方を向いているのが見えた。
一位になったのは
それも国際大会で優勝するレベルの子がほとんどだから、四位以下の子たちも頑張っているのも知っている。
「すごかった……ジュニアもレベルが高いな」
「うん」
「いやあ、
「そうだね。急成長してる」
去年の全日本ノービスでの悔しさがあったみたいで、かなりジャンプとかの完成度を高くなっていたんだ。
それと
「みんな、お疲れ様!」
「すごかったよ」
「ありがとう。
「がんばってね。二人も」
それからシニア男子のショートプログラムも応援していた。
今年のお客さんの入り方が尋常じゃない。
「うわ……ヤバない? こんなに人来るん」
「そうだね、エントリーが豪華すぎるんだもん。男子ぃ……」
理由としては北京銀メダリストの
それと新進気鋭の若手のメンツもかなり来てることもあり、注目されているみたいだ。
盛り上がりは最初から徐々に大きくなってきて、豪華メンバーが揃う最終グループへと最高潮になってきていた。
ショートの結果は蒼生くんと佑李くんが四回転のパンクのミスがあり、トップになったのはシニアデビューしたばかりの
「マジか。蒼生くんたちもミスするんだね」
「そりゃそうだよ」
わたしはそんなことを離しながら席を立って、準備を始めたんだ。
シニア男子が終わってシニア女子のショートプログラムが始まろうとしているんだ。
最初に伶菜ちゃんが先に六分間練習を始めて、夕暮れの中で一度待つことにした。
わたしは時間があるのでウォーミングアップをしていくことにしたんだ。
体が温まってから万全の状態で氷の上にいたいのと、体の動きが柔らかくなるのでケガの予防にもつながる。
現在一位になっているのは伶菜ちゃんで、まだ本調子じゃないけれど安定した得点だと思う。
そこから伶菜ちゃんを抜いたのは圧倒的な強さを見せた
歓声がかなりヤバくて、会場の天井を揺らすことができるかもしれないと思っている。
紫苑さんの踊りがとても新鮮なもので、ダンサーみたいな振付が多いの要因の一つだ。
そして、第三グループの最終滑走者の得点が発表されて、第四グループの六分間練習がスタートするというアナウンスが聞こえてきた。
『滑走順に選手をご紹介します。十七番――』
そのアナウンスが聞こえてきて、各方向から歓声と声援が聞こえてくる。
緊張しながら滑っていく、安定したジャンプを跳ぶことにした。
色とりどりな衣装を着ているなかで、青と紺色のグラデーションの子はあまりいないので目立っている気がする。
『十九番、
栞奈ちゃんは薄緑色の衣装がとてもきれいで軽やかに跳んでいるのが見える。
実はシニア女子にエントリーしているのが紗耶香ちゃん以外、全てが大学生以上と年齢層が上がっているように思える。
シニアに上がる年齢制限があるせいか、ほとんど大学生になったのは驚きだったけど。
『二十一番、
呼ばれた瞬間に心臓の鼓動が大きく波打ってしまうけれど、勢いに乗せて最初にトリプルアクセルを跳ぶ。
きれいに降りてからは余裕を持って着氷することができている。
「清華ちゃん。トリプルアクセルはハマっているね」
「はい。ルッツ+ループですね」
「そうだね。あと残り半分だから、跳び終わったらスピンとかしてね」
「はい」
親しみ慣れた場所なのに、お客さんがいるとまるで違うような気持ちになる。
手足が震えてくることを感じながら、一気に滑り出してルッツのコンビネーションを確認していく。
「清華ちゃん、がんばれ!」
「栞奈ちゃーーーーん‼」
「市ノ瀬さん、ガンバー‼」
「星宮、ガンバ!」
歓声が聞こえてくるのがとても怖く感じてしまう。
トリプルフリップを跳んだときは着氷が乱れてしまったのが動揺してしまった。
心臓がとてもドキドキしているのを聞いてから、余計に体が固まりそうになってしまう。
落ち着けと言い聞かせたいと思っている。
わたしは大きく深呼吸をして最後にトリプルアクセルを跳ぶ。
きれいに決まっていたけれど、すぐに降りることができたんだ。
『練習終了です、選手の方はリンクにお上がりください』
そのアナウンスが聞こえてからはすぐに怖いことだと考えている。
リンクサイドに上がると、
「大丈夫? 清華ちゃん」
「大丈夫、です」
ついついそう言ってしまう。
ショートプログラムは一度靴を脱いでいる暇もないので、イヤホンで音楽を聞いて行こうとしたときだった。
思わず音楽アプリじゃなくて、隣のSNSのアカウントに入ってしまった。
関係ないけれど、わたしはコメントを見てしまったんだよね。
『正直、星宮選手にはケガしてほしいwww』
『全日本で世界選手権の代表しなかったのは英断だと思ったのに。
そのコメントをリプにあって、それは仕方ないと思っている。
動揺せずにスマホの電源を落としてからプレイヤーを取り出して、ショートを流していくことにした。
『ラプソディー・イン・ブルー』が流れてくるなかでステップを踏みながら踊っていく。
実は去年の全日本からあんな感じでコメントを見かけるようになったかもしれない。
その言葉を鵜呑みにしないように、見ないようにしていたのを引きこまれそうになる。
引きこまれたら最後、どす黒くて暗い感情しか出てこないかもしれない。
それを我慢しながら次の滑走に向けて順番を待つことにした。
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