#2 初めてづくしのシーズン《清華》
No.1 初めてのイタリア(1)
季節は夏合宿が終わって懸念していた大学の成績も出てホッとした頃だ。
同じ大学に通う
そのタイミングでわたしはイタリアで行われる国際大会へ出場しているんだ。
日本代表はうちと大阪の
特に茉莉ちゃんと湊くんとは全日本以来の再会だったと思う。
四大陸選手権から久しぶりの国際大会、それも特別強化選手としてのサポートを受けながらだ。
「清華ちゃんもついに特別強化選手か」
「うん。全日本で表彰台に上がったことが大きいのかもね」
「でも、負けられないよ」
スケート連盟の強化選手のなかで一番ランクが上、さらにサポートも手厚いの。
期待も背負っているから同時にプレッシャーがかかるけど、試合でいい成績を取りたいというモチベーションになっている。
そう言いながら
公式練習がスタートするときに韓国の選手とばったり会ったんだよね。
そこにはイ・アリンちゃんとキム・ユラちゃんがいて、手を振っているのがすぐにわかったんだ。
練習着のままリンクに入ると、最初にショートプログラムの曲かけが始まろうとしている。
英語で数分後に曲かけをするというアナウンスが聞こえてきている。
一人目はイタリアの若手の子だったのを見て、すぐに邪魔しないように得意のジャンプを跳ぶことにした。
最初に跳んだのは今シーズン久しぶりに跳ぶルッツ+ループを確かめるために跳ぶ。
トリプルルッツ+トリプルループをきれいに降りれているので、調子はとても良いかもしれないと考えてもいいと思う。
それからトリプルアクセルを跳んでみると、こっちも気持ちよく滑っていけるようになっていた。
赤い羽根のついた衣装を着て誰かが滑ってきているのが見えた。
バレエ『火の鳥』の曲が流れてきて、すごい勢いでトリプルアクセルを降りているのが見えた。
「アリンちゃんのアクセル高……」
「すごいよねぇ」
そんな会話をしている茉莉ちゃんは負けたくないという空気が漂っている。
わたしの滑走順は第一グループの四番目だったので、再び練習しようとしているときだった。
それからはトリプルフリップを降りてからショートプログラムの練習をするために待つにしていたのだ。
「清華ちゃん、頑張ろう。これからが楽しみだよ」
「うん」
その後に自分の練習の番になると、ポーズをしてから立ち止まった。
スピーカーから流れてきた『ラプソディー・イン・ブルー』に乗せて、最初のクラリネットのソロパートが流れてきた。
一本目のトリプルアクセルを跳ぶために滑り出す。
子どもの頃は憧れていたジャンプを武器にできるのはうれしいけど、気を抜いては行けないと思っている。
トリプルアクセルをちゃんと降りてから一度ニースライド、膝をつきながら滑ってからは立ち上がってターンをして滑る。
それからは確認のために全てを通してみてからは陽太くんと一緒に話すことにしたんだ。
「陽太くん、どうだった?」
「全体的にはハマってるけど、ステップはもう少し体のメリハリをつけて。ステップは大丈夫、自信をもって」
「うん」
「それと動揺しない方が良いよ。とにかく集中して」
うなずいてからは再び練習を始めることにしたんだ。
四回転ループについても確認してみようということで、くるくるとしたターンをしながら踏み切る。
選手の曲かけの合間にリンクの広い部分を使って着氷できている。
「よし、清華ちゃん。いい感じだな」
「はい」
公式練習が終わってから、明日からショートプログラムがスタートする子にした。
翌日、公式練習が始まろうとしている。
試合用に使っているキャリーケースのなかにある衣装ケースを確認しておくことにした。
筆記体で名前と『SP』が刺繍されている方の衣装を出してみることにしたんだ。
ハイネックでノースリーブの衣装が取り出して、それを身に着けていくことにした。
胸のあたりからネイビーの縁取りがついていて、ラインストーンがキラキラとしている。
衣装は青からネイビーのグラデーション、スカートはシフォン地を三重に重ねたドレスだ。
それとロンググローブも衣装と同じようにグラデーションだった。
髪は前髪を編み込んですぐにまとめてからは銀色と水色の布で作った花の飾りを付けた。
メイクも衣装に合うように青系統のものを使っている。
「うん、良いね」
「それじゃあ、行こう」
「うん」
会場では衣装の上からJapanジャージを着てからは陸上ジャンプとステップを踏む。
ウォームアップをしてから第一グループの六分間練習を始めていることがわかっていた。
最初に同じグループのアリンちゃんを警戒してしまうけれど、きちんとノーミスで終わらせることができればいいなと思っている。
わたしは落ち着いて滑っていくなかでトリプルアクセルを跳ぶ。
お客さんが少ないからか、歓声は少ないものの、良い感じに跳べているのがとても良かった。
そこから余裕を持って跳ぼうという意識をすればいいと思う。
「清華ちゃん、余裕があるね。ルッツ+ループをお願い」
「わかった」
それからトリプルアクセルをアリンちゃんが転倒したみたいで、立ち上がっているのが見えて難しそうにしているみたいだった。
ユラちゃんはトリプルルッツ+トリプルトウループのコンビネーションにチャレンジしていくみたいだ。
自分のタイミングでルッツ+ループを踏み切った。
トリプルルッツが降りた足のままポーンと踏み切ってから、きれいにトリプルループを降りてみることにしたの。
それを聞いてから歓声が聞こえてきてからは、次にスパイラルから入るステップシークエンスの確認をすることにした。
ジャンプ面は自信があれば問題ないと話してくれているから、ステップシークエンスなどの表現力をメインに確かめる。
スピードに乗って正しいエッジワークをこなしていくことができれば、ステップシークエンスのなかでレベルと呼ばれる評価が上がっていく。
わたしの心臓はせわしなく鼓動を続けているのが落ち着くことはない。
日本代表として選手派遣がまだ続くことで良く思わない人もいるとわかっている。
悪役になる、その覚悟はできているから。
誰に言われなくなるように、がんばるしかないと考えている。
そのときに会場内に六分間練習が終わって、それぞれがリンクから出て順番が来るのを待つ。
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