No.1 初めての部活(3)
「
「元気だよ。大学慣れてきた?」
「慣れてきたよ。月曜一限はキツイわ、マジで眠い」
あとから
そう言いながら更衣室であくびしている
「一夜漬けで英語のテスト受けてたの? もしかして」
「マジ? 大丈夫なの」
「まだ期末じゃないしって考えちゃうんだよな」
「でも、場合によって先生に呼び出されたら、怖いよね」
わたしは衣装カバーの中から衣装を取り出してみることにしたんだ。
そのなかにはオレンジと赤、黒を基調にグラデーションになっているもので、スカート部分は斜めに切り返しがついていてアシンメトリーでフリンジがついたものになっている。
暗い色のラインストーンとかがつけられているので、とても派手で「Theラテン‼」って感じだ。
自分の髪は一つに結って、衣装と同じデザインの髪飾りをつけることになっている。
それもつけてメイクもちょっと派手にしてみることにしたんだ。
「伶菜ちゃんの衣装。おしゃれだ! お母さんに縫ってもらったの?」
「違うよ。『マンボイタリアーノ』をショートに使うから……母ちゃんが働いてる会社に作ってもらったんだよ。初めて会社に注文して作った」
恥ずかしいとは思わないんだよね、肌の色とかも合っているし。
「うちだったら、絶対に似合わない色だなぁ」
清華ちゃんはうちとは正反対の色が似合う子、今シーズン使っていた衣装はとても似合っていたかもしれない。
リンクに入ると、ジャージを上から羽織って先に練習を始めてから、それぞれの曲をかけていくので順番を待つことにした。
いまは清華ちゃんが新しいフリーの曲を通しているのが見えて、まだ衣装は見たことがないけれど楽しみにしているところだ。
ショートはコーチの
どうりでゴールデンウィークの間は友香ちゃんと一緒にカナダに行っていたのに納得した。
流れてきている曲は聞いたことがないものだけど、友香ちゃんが演目を教えてくれた。
「この曲って『スケートをする人々』ってやつ。バレエのやつ」
「清華ちゃん、めちゃくちゃきれいね」
「来シーズンは四回転って」
「入れるつもりみたいだよ。マジできれいにハマってるからなぁ」
そんな会話をした後にわたしは練習はプログラムのジャンプ抜きから、ジャンプを入れての本番を想定して練習を始めた。
「それじゃあ、伶菜ちゃん。ショートの曲流そうか」
「はい。わかりました!」
曲が流れてきてステップからのトリプルルッツがかなりハマって気持ちがいいまま、陽気なリズムと歌声に乗せて踊っていく。
この曲はとても楽しくてオリンピックのときに使っていた選手がいて、楽しそうだなと思っていたことが候補にあげた理由だ。
後半のステップのところでは掛け声が入るシーンからステップシークエンスだけど、リズミカルに踊ることはできそうだったけど大変だ。
全部ジャンプを降りて足がパンパンなところで足を上げたり、ツイズルとか難しいステップだらけということで気が抜けないんだよね。
何度も通してからジャンプを入れたプログラムにしていったけど、かなり形になってきているかもしれないと考えている。
わたしの体がプログラムに近づいてきているという形になっているのが見えたりしているんだ。
シニアデビューする日が決まったこともあって、完璧の演技を見せていきたいと考えている。
七月一日にある
時間が合えばミーティングルームで寝ようかと考えていたけど、防犯を考えたらこっちで寝ていた方が良いと思ったらしい。
ジャージも着替えてからソファの方で一時間の仮眠する。
「伶菜ちゃん、そろそろ時間じゃない?」
「ん、ほんとだ」
時刻は午後八時半から始まって一時間半の練習になるのでかなりハードだけど我慢して滑ることにしたんだ。
「それじゃあ、先に練習をしようか」
「はい」
わたしはそれからスピーカーから『くるみ割り人形』が流されているのがわかる。
「平川さん、きれいだったよ」
「ありがとう。
「幸田さん。次の曲、かけるよ」
「はい!」
わたしも衣装を着てフリーの曲を流す合図が聞こえてきた。
衣装は白いシャツに白のドット柄の紺のフレアスカートで首元には赤いスカーフだ。
流れてきたのはビートルズのなかでも人気な曲だ。
最初は手拍子が入るのがとてもリズミカルになっていて、ジャンプを跳ぶときもとても楽しいんだよね。
わたしはトリプルフリップ+トリプルトウループを楽しく跳べるのがわかる。
そこから二曲目に入るとさらにテンポが速くなってからは、テンポに合わせてジャンプとスピンを映えるように工夫されている。
ジャンプを入れてからはスピードと笑顔で滑っていくことができるんだ。
一気に静寂になってからピアノのイントロから始まるコレオシークエンスがとても印象的になる。
イーグルとターン、スパイラルを入れてから、最後のジャンプを跳ぶために助走をする。
トリプルルッツ+シングルオイラー+トリプルフリップを降りてから、プログラムのクライマックスへ。
レイバックスピンが始まってからは軸足じゃないフリーレッグのブレードを掴んで、頭に引き寄せてから上へと持ち上げていく。
ギリギリ形を保っているビールマンスピンを維持してから、ターンしてから手を交差させてからは手を胸の前で組む。
そのときに
一度整氷時間に休憩するときに話していることがあったけど、眠そうに待っている人もちらほらいるんだよね。
「さらちゃんは余裕? 新しいプログラム」
「全然だよ。そういえば、次の大会っていつ?」
「千葉のアクアカップだよ。その後に結城ひまわり杯」
「そうなんだ! うちも出る予定だから、楽しみにしてる」
アクアカップまで残り二週間、どこまで詰めれるかがカギになってきそうだ。
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