第32話 エピローグ②
「ミツキ・カフェノワールです。よろしくお願いいたします」
王立学園の入学初日。ミツキが席を立ち腰を折って丁寧なお辞儀をする。
流れるような黒髪と漆黒の瞳が印象的。まるで吸い込まれそうな深さを感じる。形良い鼻筋と桜色の唇も美麗。スラリとした白く綺麗な手足と合わさって、深淵に咲くクロユリの様な美少女を創り上げていた――って前にも紹介したけど、ミツキ、美しさに磨きがかかってないか?
綺麗な宝石を磨き上げて、さらにその周囲にまで装飾を施して眩い宝玉にしたかのように見える。
気のせいじゃないと思う。その黒髪も瞳も肌も、キラキラと輝いて見える。
自分の恋人ながら、見惚れてしまう。
息もできないという教室の中、隣のシャルがほえ~と声をかけてきた。
「すごいですね~。ものすごいですね、あの人」
今度はシャルの向こう側の席のユーヴェが入ってきた。
「確かに……凄い……な。あれほどの令嬢が……この異世界に存在するのか……」
「ユーヴェは他の女の子に色目使っちゃダメですと言いたいけど……。ちょっと……言えない……かもしれません……」
「いや……。確かに物凄いんだが……。俺にはシャルがいるから」
「ユーヴェ!」
シャルがユーヴェに抱き付いた。
この二人は相変わらず。何百回目だろうと変わりない。変わりないが、変わらなくてよいと思うし、微笑ましい。
――と、ミツキが綺麗な立ち振る舞いで身体を回し俺を見てきた。
「よろしくね、ハルト」
ふふっと相貌を緩めて微笑を俺に送ってきた。
俺も微笑み返す。
「これからよろしく、ミツキ」
「これから三年間。球技大会に舞踏会……。休んでる暇はないわよ」
「それはこっちのセリフ。ミツキ、実は剣技の腕前の割に球技が苦手な事を俺は知っている」
「え? ホント……なの、それ!?」
「うん。知っている」
「……ガーン!」
二人で合わせたように可笑しくて嬉しいと笑う。
「え? え?」
こちらを見ていたシャルが、阿吽の会話を交わしている俺たちに驚いている。
窓から外を見る。春の花が満開で、空は青く澄み渡っている。
これから三年間。授業に昼食に夜の勉強――はしなくてもいいけど。演武会に舞踏会、学芸会もある。
俺とミツキの『やり直し』は始まったばかりなのであった。
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お読みいただき、ありがとうざいましたm(_ _)m。
感謝いたします。
美少女魔王なんだけど愛する勇者を殺せないので死のうと思います。 月白由紀人 @yukito_tukishiro
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